日々目にする信号機は、どのような「基準」で設置されているかご存じだろうか。オーソドックスな赤・黄・青信号だけのものに加えて、赤信号表示の際に、点灯する右左折や直進などの矢印が示す方向にのみ進める「矢印式」の信号もある。バリエーション豊かな信号機は、どのような基準で設置されるのか? 都内の信号機を管理する警視庁に聞いた。
文・取材:大音安弘
写真:shutterstock.com
交通量など信号設置のマスト要件は5つ
警視庁によれば、信号機を新たに設置する場合、警察庁から通達された「信号機設置の指針」にある条件に合致しているかが、判断材料になるとのこと。
指針は全国共通のもので、道路交通法第4条第1項の規定に基づいて作成され、警視庁のHPで閲覧できる。
さて、この指針によると、信号機の新設には、すべてに該当しなくてはならない「必要条件」が5つ。どれかひとつが該当しなくてはならない「択一条件」が4つ定められている。
要約すると、マストとなる「必要条件」は以下のとおり。
・赤信号で停車している自動車等の側方を、別の自動車等が安全なすれ違いに必要な車幅が確保できること(一方通行を除く)
・歩行者が横断待ちに必要なスペースが確保されていること(歩行者の横断がない場所は対象外)
・主道路の自動車等往復交通量(以下、交通量)が、最大となる1時間に原則300台以上
・隣接する信号機との距離が原則として150m以上(信号灯器を誤認するおそれがなく、円滑な交通の流れが可能なら対象外)
・交通の安全と円滑に支障がない上で、自動車等の運転者と歩行者が、信号灯器を良好に視認できる信号柱の設置が可能(例外あり)
一部状況に合わせた対応が可能となっているが、基本的には、これらの条件を満たしている必要がある。
事故によって信号設置が認められる場合も
一方、どれかがひとつでも当てはまれば良い「択一条件」は以下のもの。
・信号機の設置で抑止できたと考えられる人身事故が、信号機設置を検討する前年の1年間に2件以上発生し、事故原因を調査・分析した結果、交通の安全の確保が他の対策で代替できないと認められる場合
・学校、児童公園、病院、養護老人ホ-ム等の付近で、生徒・児童、幼児、身体障害者、高齢者等の交通の安全を特に確保する必要がある場合
・ピーク1時間の主道路の交通量及び従道路(複数ある場合、最も自動車等流入交通量の多い道路)の交通量が、規定条件よりも多い場合
・歩行者横断の需要が多く、道路の交通量も多いため、歩行者が容易に横断できず、さらに直近に立体横断施設がない場合
このように定められている。これらに合致するかが信号機設置の判断材料となり、さらに安全と円滑に配慮した交通の流し方となるのかを検討する。
意外だったのが、条件に該当しなくなった既存の信号機には廃止の検討が必要とされていること。
警視庁管轄内の最近の例を調べてみると、平成28年2月に「西が丘交番南」交差点(東京都北区)の信号が撤去がされている。
撤去理由は、近隣に都道が開通したことで交通量が減少し、信号無視が増えたこと。現実に即していない信号機は、逆に交通事故の原因になるという判断なのだ。
右左折など「矢印信号」設置の理由と条件は?
では、歩車分離式や右左折などの矢印信号は、どのような判断で設置されているのか。
右左折信号の設置には、交差点で右左折の交通量が多く、青信号表示だけで流すことが出来ない場合や直進車と対向車の衝突事故の危険性が高い場合に設置されるとのこと。
さらに、専用車線が確保できる道路であることも必要となる。歩車分離式も同様の考え方で歩行者の交通が多く、車両との事故を防ぐ狙いがある。
つまり、交通の円滑化のための工夫というわけだ。矢印信号は、対向車のある右折用が多数みられるが、対向車がない左折でも交通量が多い場合には、左折矢印信号が設けられるケースがある。
◆ ◆ ◆
このように信号機のパターンには、その地域の道路状況が色濃く反映されている。
信号機の動きと道路の交通量に注視してみると、普段の印象とはまた違った道路の一面を垣間見ることができるかもしれない。
コメント
コメントの使い方