2018年6月26日、第15代目となる新型クラウンが発表・発売されます。
1955年に初代が登場して以来、日本の高級車市場をリードし続けてきたクラウン。しかし近年はミニバンやSUVに市場を奪われ、オーナー層の高齢化が進んできました。今回の新型はそうした状況を打ち破るべく、大胆な若返り策を講じてきたようです。
日本専用車として、日本人のために開発されたクラウン、この伝統の名車が打った起死回生の一手とはどんな戦略なのでしょうか? デビューのひと足先に実施された事前試乗会にてじっくりチェックした渡辺陽一郎氏が、特別試乗動画付きで分析します。
文:渡辺陽一郎 写真:池之平昌信
動画:Amada Photo Studio
■さまざまな対策を打ってきたが止まらない高齢化
「クラウンってオジサンが乗るクルマだよね」と思っている読者諸兄も多いと思う。その認識はもはや古い。今では「お爺さんの乗るクルマ」だ。ユーザーの平均年齢は、65歳から70歳に達する。
そうなると今後需要が急速に減る可能性も高く、40歳から50歳に若返りを図る必要が生じた。
ただしクラウンユーザーの高齢化に向けた対策は、今に始まった話ではない。11代目(発売は1999年)では、スポーティシリーズのアスリートを設け、12代目(2003年)では「ゼロクラウン」の名称でプラットフォームやメカニズムを刷新した。
先代型の14代目(2012年)は、ゼロクラウンからのプラットフォームを受け継ぎながら、フロントグリルを大きく見せる斬新なデザインを採用した。さまざまな対策を施したが、高齢化に歯止めがかからないのだ。
観点の違う話として、上級セダン市場の変化もある。メルセデスベンツC/Eクラス、BMW3/5シリーズなどが、シェアを少しずつ拡大してきた。クラウンには悩みが多い。
そこで新型クラウンは、クルマ造りそのものを改めて見直した。以前のフルモデルチェンジは、従来型のユーザーが乗り替えやすいように共通性を相応に持たせたが、新型は変化の度合いが大きい。
外観では、フロントマスクを大きく見せる手法は先代型と同じだが、グリルの下側を立体的にして存在感と新鮮味を強めた。
■欧州車のようなデザインとフォルムを採用
ボディサイドは変化度がさらに大きい。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が先代ロイヤル&アスリートから70mm拡大されて2920mmになった。これにより前輪を前側へせり出させている。前席のドアやペダルと、前輪との間隔が70mm広がり、外観は従来よりもボンネットが長く見えるようになった。
いっぽうボディの後部は、リヤウインドーを寝かせてトランクフードが短く、欧州車の5ドアクーペに似ている。ボディ側面のウインドーが3分割された「6ライト」のデザインも、欧州車に多いパターンだ。
それでも全幅は1800mmに収まり、全長も4910mmだから、15mm伸びた程度になる。取りまわし性はあまり変えずに外観を変化させた。
内装は先代型のイメージも残し、メーターは大径でエアコンのスイッチは高めに配置したから操作性が良い。インパネ中央のモニターは上下に装着され、通信機能も充実させた。
前席の中央に装着されたアームレストは、先代型に比べて高さが抑えられ、駐車時にハンドルを忙しく動かした時でも左肘が干渉しにくい。従来型は、大きなアームレストに寄り掛かってルーズな姿勢で運転するユーザーにも配慮していたが、新型はそれをやめた。
前後席ともに、先代型に比べて体のサポート性が向上した。ホイールベースの拡大は、前輪を前側へ押し出すことに費やしたから後席の足元空間は先代型と同じだが、大人4名が快適に乗車できる居住性は備えている。
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