ホンダの狭山工場が閉鎖され、レジェンドやクラリティも2021年内に国内販売を終える。そうなると国内で売られるホンダのセダンは、アコードとインサイトに限られる。アコードはホンダの最上級セダンになるわけだ。
また狭山工場の閉鎖に伴い、オデッセイも国内販売を終える可能性が高い(ホンダの基幹車種だから社内には存続すべきとする意見も根強いが)。仮にそうなれば、アコードはホンダの最上級車種にもなる。アコードの役割は、従来以上に重くなる。
文/渡辺陽一郎
写真/奥隅圭之、HONDA
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スカイラインなどセダン不況のなか名門アコードも苦戦
それなのに今のアコードは存在感が乏しい。現行アコードは2020年2月に発売され、設計は比較的新しいが、2021年の登録台数を月平均で見ると200台を少し超える程度だ。直近では100台以下の月もある。
N-BOXは月平均で1万8000台以上を販売しているから、これに比べるとアコードの比率は約1%だ。またライバル車のカムリは、2021年1~6月の1か月平均が約1000台になる。これも多くはないが、アコードに比べると約5倍だ。
アコードが発売された時の販売計画は、月/300台であった。この計画も消極的だが、実際の登録台数は200台少々だからそこにも達しない。販売計画は一種のコミットメント、つまり公約で、生産を終えるまでの平均値を意味する。
発売から時間を経過すれば売れ行きは下がるので、発売から1年半くらいは計画台数を上まわる必要があるが、実際は早々に下まわった。
アコードの販売状況について、販売店に尋ねると以下のように返答された。
「今はどこのメーカーでもセダンが売れていない。特にアコードのようなLサイズの車種は、価格も高く売りにくい。しかも今のアコードは、タイで生産される輸入車だから、グレードは1種類のみ。納期が不規則になる時もある」
5代目アコードが売れ行きの分岐点になった
初代アコードは、シビックの上級に位置するミドルサイズカーとして1976年に発売され、その後もホンダの主力車種として好調に売れ続けた。
ところが1993年発売の5代目は、売れ行きを下げてしまう。1989年の消費税導入に伴って3ナンバー車の税制不利が撤廃され、5代目アコードは、国内仕様と北米仕様のボディを共通化したからだ。
ボディが共通になれば開発が合理化され、立派な3ナンバー車になると日本のユーザーも喜ぶと考えたが、実際は売れ行きが急降下した。
その原因は3ナンバーボディの採用というより、アコードのクルマ造りが日本のユーザーから離れたことだ。外観には丸みがあって引き締まり感は乏しく、ステアリングの操作感も、当時のホンダ車では鈍めだった。北米仕様と共通化したことで、日本のユーザーが求めるアコードではなくなり、売れ行きを下げた。
そこで1997年発売の6代目では、セダンのボディを5ナンバーサイズに戻したが、すでに、1994年に登場した初代オデッセイ、1996年デビューの初代ステップワゴンが好調に売れ始めていた。2001年には初代フィットも発売されて、大ヒットしている。
これらの影響を受けて日本のアコードは、1993年登場の5代目以降、販売が伸び悩んでいる。2002年に登場した7代目アコードは、海外では上級ブランドとされるアキュラTSXと共通化され、海外のアコードは日本ではインスパイアとして売られた。
ややこしく、車両のコンセプトも定まらず、そのまま今に至る。近年のアコードでは海外戦略が優先され、日本仕様はその邪魔をしないよう、成りゆき任せで漠然と造られている印象があった。
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