北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。
第47回は、北海道の川に産卵のために遡上する鮭たちの珍しい画像をお送りします。
この時期、河口付近の海で寄せ来る波を眺めていると、そこで驚愕の光景を目にすることになります。
写真・文/佐藤圭
動物を育み、森を豊かにする鮭の存在
僕が住む留萌の周辺の川には、毎年、秋になると鮭の大群が産卵のために押し寄せます。
川で生まれた鮭は、海に下り、数年、海を回遊し、栄養を蓄え成長すると、子孫を残すために、生まれ故郷の川に戻って来るのです。
川の河口付近の海は、朝のラッシュアワーの駅のような大混雑状態になり、寄せ来る波の中でサーフィンしている鮭たちが群れをなしているが透けて見えます。
川に入った鮭たちは、途中の段差を大ジャンプで乗り越え、岩に削られて体がボロボロになっても、懸命に上って行きます。中には途中で力つきる鮭もいます。その姿は何度見ても胸が熱くなります。
川を遡り、産卵を終えると鮭は命を尽きてしまいます。まさに命がけの鮭の遡上です。
命が尽きた鮭は、鳥や、ヒグマ、キツネなどにより、山に運ばれて、動物たちの血肉となり、食べ残された体は土に還り、豊かな森を作ります。命の循環がそこにあります。
年々、数が減っている鮭。懸命に稚魚の養殖もおこなわれていますが、なかなか数が増えないのが現状です。
留萌の川では、それほど減っているとは感じないのですが、全国規模ではここ数年記録的な不漁が続き、鮭やイクラの値段も上がり続けています。サンマも不漁で、高級魚になってしまいました。
環境を整え、いつまでも、この命のドラマを後世に残していきたいです。それをずっと記録し続けることが、僕の使命だと思っています。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。アウトドアブランドMILLETアドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
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