コンパクトカーといえば、ほとんどが5ナンバーサイズが基本となっている。海外市場をにらみ、安全性と快適性の両立をねらった3ナンバーサイズモデルもあるが、国内では目立ったヒットとなっていない。
しかしここにきて、売り上げを伸ばしている3ナンバーのコンパクトカーがある。日産ノートオーラだ。その魅力はどこにあるのだろうか?
文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部
■ノート全体の売れ行きのほぼ半数を占めるノートオーラ
安全性や環境性能の向上により、新車の価格は15年ほど前に比べると1.2~1.3倍に高まった。かつて200万円で売られていた車種は、今は240~260万円だ。安全装備、運転支援機能、環境性能は価格差以上に向上しており、クルマはむしろ割安になったといえるが、値上げされると購入は難しくなる。
特に今の平均所得は、1990年代の中盤から後半に比べると下がっている。そのためにクルマが値上げされると、小さな車種に乗り替える必要も生じる。
そこでコンパクトカーが人気を高めた。特に2020年から2021年には、ヤリス、フィット、ソリオ、ノート、ノートオーラ、アクアなどのコンパクトカーが次々と発売されて売れ行きも好調だ。今では国内で新車として売られるクルマの約40%をコンパクトカーが占める。
この中でも特に注目されるのが、2021年8月に発表されたノートオーラだ。ノートの上級シリーズで、日本自動車販売協会連合会が公表するデータによると、登録台数はノートに含まれる。
日産でもノートオーラのみの台数は公表してはいないが、2021年11月におけるノート全体(ノートオーラを含む)の登録台数は9412台であった。販売店では「ノートオーラの売れ行きは好調で、ノート全体の50~60%を占める」としているから、2021年11月のノートオーラの売れ行きは5000台前後だろう。
■3ナンバーサイズでも売れ行き好調のヒミツ
それにしても、なぜノートオーラが好調に購入されるのか。ノートオーラは全幅が1735mmの3ナンバー車で、価格も一番安いGが261万300円だ。今はノート、ノートオーラともにハイブリッド専用車になって価格を高めたが、コンパクトカーが260万円以上では、高価格の印象が強い。
過去を振り返ると、イストのような3ナンバーサイズのコンパクトカーは、販売を低迷させた。インプレッサスポーツやマツダ3のような3ナンバーサイズのハッチバックも、海外では主力商品になるが、国内の売れ行きは伸び悩む。
そこでノートオーラの販売状況を販売店に尋ねると「ノートオーラを最初から指名するお客様に加えて、ノートを目当てに来店しながら、検討を行ってノートオーラに上級移行する場合もある」という話が聞かれた。
この事情はノートとノートオーラを比べると分かりやすい。ノートで売れ筋になるXの価格は218万6800円だが、プロパイロット(車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどの運転支援機能)と、LEDヘッドランプはオプション設定になる。
運転支援機能は、ヤリス、アクア、フィットといったライバル車では大半のグレードに標準装着されるが、ノートのプロパイロットは、ほかの複数の装備と併せて別途装着せねばならない。しかもこのセットオプション価格は44万2200円と高い。
LEDヘッドランプも、フィットなどライバル車の売れ筋グレードには標準装着されるが、ノートでは9万9000円のオプションだ。
これらをノートXの車両価格に加えると、合計272万8000円に達する。今は運転支援機能とLEDヘッドランプは装着されて当然の装備になりつつあるから、見積書を取って218万6800円のXが272万8000円に高まると、驚くユーザーも多いだろう。
この時に示される選択肢は2つある。ひとつは運転支援機能などを諦めて装備をシンプルに抑えることだ。価格が最も安い202万9500円のSを選び、9万9000円のLEDヘッドランプ、約25万円のディーラーオプションナビ(オリジナルナビ取付パッケージを含む)を装着する買い方なら、総額は約240万円に収まる。
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