2022年1月13日、新型ヴォクシー/ノアが正式発表発売となった。ミニバン最量販車種だけに、パワーユニットも使い勝手も大きく進化しているが、このクラスで最大の関心事は「顔」。フロントマスクの造形だ。その第一印象は? 評価は?? 先般公開された不倶戴天のライバル、ホンダ新型ステップワゴンと比べてどうなのか??
加えて、先代では特別仕様車である「煌III」のみになっていたヴォクシーが、新型でも存続したことが注目されている。いったいナゼ?
ちなみに、先代型より押し出し感を強めて迫力を増した新型ヴォクシー/ノア、フロントマスクのデザインについてはSNSで「怖い」、「どこまで派手になるんだ…」との声が多いのですが、すでに受注は3万台を超えているそうです。すごい売れっぷり。やはり「こういう顔」が好きなユーザーが多いということなのでしょうか…??
文/清水草一
写真/中里慎一郎
■「怖い顔」に耐性が生まれている
新型ヴォクシー/ノアのチーフエンジニアである水澗英紀氏は、このクルマの事前説明会でこのように述べた。
「このクラスは【顔】で選ぶユーザーが非常に多いんです。先代ヴォクシー/ノア/エスクァイアでは、計5種類の顔(ヴォクシーとノアはそれぞれ「標準仕様」と「エアロ仕様」があった)が選べましたが、もし兄弟車システムを完全に廃止してしまうと、ノーマル仕様とエアロ仕様の2種類だけになってしまいます。それではユーザーの皆さんの選択肢が減ることになる。そこであえて兄弟車仕様を残し、そのぶんヴォクシーは挑戦的なデザインとしました」
なるほど! と思わず膝を打った。
エスクァイアが消え、ヴォクシーまで消えたら、顔のバリエーションが激減して、一部の客が他社に流れる可能性がある。そこであえてヴォクシーを残したわけだ(2017年の段階で「国内販売車種数を半減する」と発表して、兄弟車を削減していく方針を掲げたはずなのに)。さすがトヨタ!
で、新型ヴォクシーはどんな挑戦的な顔にリボーンしたのか。
見た瞬間、「うげぇ!」と思った。これはすごい……。
現行アルファードの顔を初めて見たときも、「うげぇ」とは思ったが、アルファードのグリルには大いなる斬新さがあった。一見鎧にふさがれて空気が入れないみたいで、グリルというより「盾」のように見えたからだ。
一方の新型ヴォクシーは、形状は明らかに従来型のグリル(人でいえば「口」)だ。その口の中が、刀やスリコギで埋め尽くされているかのようで、従来的なグリルの延長線上で最も攻撃的なデザインとでも言おうか。
しかもヘッドライトは、初代ジューク同様の上下錯覚型で、「目」に見える上の細目は、LEDデイライト兼クリアランスランプ、そしてLEDウインカーだ。口(グリル)の中にある6ツ目側が、メインのLEDヘッドランプになっている。
実は巨大な口の中に、凶悪な野獣が潜んでいるわけですよ! しかもグリル下部の左右のスリコギの一部が6つ点灯する。
この顔、確かに猛烈に凶悪だ。しかし凶悪すぎてつい笑ってしまう。もはやマンガである。新型ヴォクシーに比べたら「電気シェーバー」と呼ばれて恐れられたデリカD:5(後期型)が、ものすごく健康的に見える! これはもう、「世界で最も凶悪な顔の自動車」として、ニューヨーク近代美術館に展示してほしい。近年のトヨタは、真に恐れを知らない挑戦者である。
ただこの顔、慣れるのにそう時間はかからないだろう。もはや我々の脳には、コワイ顔のクルマへの耐性ができている。そして、心のどこかで、もっとコワイ顔への待望がある。怖いもの見たさである。新型ヴォクシーは、その潜在的な願いをかなえている。
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