2019年11月に発表された、トヨタのフルサイズワゴン「グランエース」。国外向けハイエース(H300系)をベースにした高級ミニバンは、大きな話題となった。
しかし、話題の大きさとは裏腹に、販売状況は芳しくない。グランエースは、送迎車のハイエースワゴンや、高級ミニバンのアルファード・ヴェルファイアと何が違い、どう棲み分けをしているのだろうか。グランエースの存在価値と現状を考えていく。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA
■グランエースの今の売れ行きは?
2019年の東京モーターショーで、本会場のトヨタブースには市販予定車の展示が無かった。市販予定のヤリスは近隣施設のヴィーナスフォートに展示され、その他コンセプトカーは、MEGA WEBに並べられたのだ。
この東京モーターショー本会場で、唯一トヨタの市販予定車として展示されたのが、トヨタ車体ブースにあったグランエースである。全長5.3m、2mに迫る全幅・全高のボディに、最大定員8名(6名もあり)というエグゼクティブ向けの仕様は、新しい高級車の提案だったのだろう。
話題性は高かったが、その勢いは販売に繋がらなかった。直近数カ月の販売台数は月販で30台以下、最も売れた2020年3月でも230台だ。発表時の年間販売目標は600台(月販50台の計算)であるから、順当といえばそれまでだが、他車種と比べると苦戦が目立つ。
アルファードは月に1万台弱、ハイエースワゴンも月に1,000台弱は売れている。グランエースの売れ行きは、物足りないどころではないだろう。
■「高級+多人数乗車=グランエース」だったはずだが
グレード体系はトヨタの上級グレードにつけられる「G」と「Premium」、8人乗りと6人乗りが設定されており、高級(上質)ミニバン+多人数乗車=グランエースという図式だった。
しかし、グランエースは、これまでのトヨタにあった、高級ミニバン=アルファード、多人数乗車=ハイエースワゴンを変える力はなかったのだ。
販売店で話を聞くと、単に質感の高いミニバンが欲しければアルファードの指名買いになるし、人数を多く乗せる法人ユースになるとハイエースワゴンの人気が圧倒的だという。
発売当初に見込んでいた、VIPのためのアルファードよりも快適なクルマ、そしてホテルなどでの送迎に便利な質の高いワゴンというイメージがグランエースにはつかなかった。
法人ユースを販売の原動力にしたかったが、デビュー後にはコロナの流行で経済活動が一変し、VIPの移動が必要なイベントの中止、旅館やホテルも営業中止を余儀なくされ、グランエースが活躍できる場所は、限定されてしまう。
頼みの法人ユースで苦戦したグランエース、個人向けでは、さらに厳しい戦いが待っている。
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