2019年11月に発表されたライズは、2020年の乗用車ブランド通称名別順位(自販連)で、年間126,038台を販売し、堂々の2位にランクインした。2021年も販売は好調で、81,880台を販売し、年間6位にランクインしている。
兄弟車であるダイハツ・ロッキーを置き去りにし、大人気車の仲間入りをしたライズ。SUV戦国時代とも言える今、ライズがここまで躍進した理由はどこにあるのだろうか。ハード・ソフトの両面から、ライズ躍進のキーポイントを考えていこう。
文:佐々木 亘
【画像ギャラリー】小さくてもしっかりSUV!! 市場のニーズを捉えたデザインを目撃せよ(11枚)画像ギャラリー■ライズは共同開発車!トヨタらしさも十分感じるパッケージング
トヨタが販売するダイハツOEMモデルは大人気だ。代表格のルーミーは、2021年に13万台以上を販売した。トールというダイハツの本家本元を忘れてしまいそうな勢いだ。
ダイハツ色が強いルーミーに対して、ライズからは共同開発車としての味を感じる。小型SUVだからこそ、ダイハツのコンパクト車に対する良い技術を多く取り入れながら、駆動系にはトヨタのダイナミックトルクコントロール4WDを採用するなど、トヨタの風味をいい具合に残した。
エクステリアデザインもライズとロッキーでは大きく違う。ライズには他のトヨタ車と同様にフロントマスクにキーンルックを採用し、ダイハツ色を薄めている。トヨタ販売店で話を聞くと、ロッキーと兄弟車であることを知らずに、ライズを購入していくユーザーが多いという。
これまで、トヨタとダイハツの共同開発車やOEMといえば、開発の主導を握ったメーカーの色が強いクルマばかりだった。パッソとブーン、ラッシュとビーゴなどは、ダイハツの毛色が強くトヨタラインナップでは浮いていた過去もある。逆に現在もダイハツで販売されているアルティス(カムリOEM)は、ダイハツ車種と並ぶと違和感が強い。
こうした違和感は購入するユーザーにも伝わるものだ。しかし、ライズに関しては、この違和感が非常に少ない。ライズは、トヨタラインナップに溶け込んだ、トヨタらしさを存分に感じられるクルマなのである。
■ヤリスクロスとの差別化もされ、販売現場もウェルカムモード
ライズを追うように2020年8月30日、ヤリスクロスがデビューする。当時は、コンパクトSUVとして、カテゴリーが近しい両車を、販売店は取扱いにくそうにしていた。
ユーザーからは「ライズとヤリスクロスは何が違うのか」という疑問が多く寄せられたという。
例えば、予防安全パッケージ。ヤリスクロスは「トヨタセーフティセンス」を採用するが、ライズはダイハツ名の「スマートアシスト」となる。これらはどう違うのか、なぜ名前が違うのかといった問い合わせが多く、現場では対応に苦慮していた印象だ。
トヨタ販売店の一部では、ライズがダイハツとの共同開発車であるとユーザーに知られてしまうと、売れなくなってしまうのではという思考まで働いたという。ライズの素性を隠しながら、ヤリスクロスと比較になった場合は、自然とヤリスクロスをプッシュするように、営業マンのトークが変わった時期も一時あったようだ。
しかし、価格の安さや5ナンバー枠に収まるパッケージングの良さがあり、ライズの人気は衰えなかった。ヤリスクロスとライズの想定ユーザー層も確実に違い、両車の差別化は難しくなかっただろう。
結果として、2021年以降はライズを積極的に販売する動きが戻ってきた。ダイハツの血が入っていることは隠さずに説明を行い、その上で「これはトヨタが自信をもって販売するトヨタのクルマです」と言い切る営業マンが増えたように筆者は感じる。
OEMには抵抗感が強かったトヨタの販売現場が、ルーミーとライズの躍進によって、一皮むけたようだ。
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