「トヨタ帝国」にどう挑む? ライバルメーカーたちのSUV戦略

 2020年1~7月に登録された小型/普通車のうち、トヨタ車が48%を占めた。トヨタは車種数が多い。最近はセダンとミニバンを減らすいっぽう、日本と海外の両方で好調に売れるSUVを充実させた。

 トヨタのSUVはグラフに示したとおり、車種構成が綿密だ。170万円以下のライズから1000万円を軽く超えるレクサスLXまで幅広い。SUVのタイプも豊富で、売れ筋のFF、ランドクルーザーのようなFRベースのオフロードモデル、上級のレクサスも選べる。

 各車種の価格帯は重複するが、売れ筋グレードは重ならない。最も安価なライズから、C-HR、RAV4、ハリアーと予算に応じて選べる。

 この盤石なトヨタ帝国のSUV軍団に挑むのが、小型/普通車販売比率の合計が52%になる「その他のメーカー」だ。日産とホンダのSUVは2車種で、マツダは4車種だが価格帯の重複が多い。スズキは低価格車が中心だ。

 少数精鋭でトヨタを攻める戦略が重要になるが、その戦略は上手くいってるか。トヨタのライバル車に対する有利、不利を検証しながら、対・トヨタ「健闘度」を出していきたい。

【画像ギャラリー】まさに最激戦カテゴリー…!!! 国内SUVのラインナップを相関図とともに見る

※本稿は2020年8月のものです
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2020年9月26日号


■各メーカーのトヨタへの“健闘ぶり”を検証

価格を軸に比較したSUVモデルの相関図(画像ギャラリーで大きい画像が見られます)。手持ちの戦力で強力トヨタに勝負を挑まざるを得ない他メーカー。その勝負に勝算はどれほどあるかを検証

 ここからはメーカー別に、具体的なモデル名を挙げていきながら、トヨタの強力モデル群に対する有利&不利、およびメーカーとしての対・トヨタ「健闘度」を紹介する。

 トヨタほど多くのモデルを用意できるわけではないので、狙いを絞って勝負をしかけていることがわかるはずだ。

キャラクター違いで多くのモデルを用意できてしまうところが、トヨタ帝国の強みだ

■新星キックスの戦闘力は? 日産編

●価格帯で見るトヨタのライバル車
・キックス vs C-HR G-T&ハイブリッドS
・エクストレイル vs RAV4全モデル(PHV除く)

 日産はかつて豊富にSUVを用意したが、今はエクストレイルとキックスのみになる。

 キックスの価格帯は275万~290万円で、同等のトヨタ車はC-HRハイブリッドだ。動力性能、後席の居住性、荷室の広さはキックスが勝る。C-HRは外観が個性的で走行安定性も優れ、内装は上質だが、それでもキックスが買い得になる。

全車e-POWERで登場したため価格帯はやや上がったキックス

 エクストレイルはガソリンエンジン車が売れ筋で、売れ筋価格帯は300万~330万円だ。C-HRの上級グレードとも重なるが、エクストレイルは全長が4600mm以上で後席と荷室も広い。荷室は水洗いが可能でRAV4と共通点が多い。

 RAV4を相手とすると居住性や積載性は互角だが、走行安定性はRAV4。エクストレイルは2020年中に登場予定の次期型に期待だ。

HVもあるが売れ筋はガソリンというエクストレイル

●2021年デビュー 日産アリアが戦う相手は?

 2021年中盤に発売されるアリアは、SUVの電気自動車だ。4WDは前後にモーターを搭載して、綿密な4輪駆動制御を行う。トヨタに純粋な電気自動車はないが、RAV4 PHVは性格が似ている。充電された電気で走る時は、アリアと同様の状態になる。

 またアリアの500万~800万円の価格帯(予想)は、レクサスRXとも合致する。ハイブリッドのRX450hはV型6気筒3.5Lエンジンがベースで、4WDでは後輪をモーターで駆動する。

 トヨタ帝国を代表する最強のハイブリッドSUVと、日産の象徴となる最先端SUV電気自動車の同価格帯対決となるが、勝負はアリアの勝ちとなるだろう。パワフルなモーターを使った新しい4輪制御により、未体験の走りを満喫できるのは、やはり魅力だ。

充電時間に関する不安はあるが、魅力的な走りは約束されているアリア

●健闘度 68/100

■CR-Vの戦闘力に疑問が…… ホンダ編

価格帯で見るトヨタのライバル車
・ヴェゼル vs ライズ Z、C-HR全モデル
・CR-V vs RAV4(4WD&ハイブリッド)、ハリアー

 ホンダのSUVはヴェゼルとCR-Vのみで、前者は販売が好調だ。ヴェゼルの売れ筋価格帯は、ガソリンエンジンが220万~250万円、ハイブリッドは260万~290万円になる。この価格帯と、全長が4330mmのサイズを考えればライバル車はC-HRだ。

 両車を比べるとヴェゼルは後席と荷室が広く、後方視界も優れている。C-HRは外観が個性的で、走行安定性も高い。動力性能も少し上だ。

1.5L NA、1.5Lターボ、そして1.5Lベースのハイブリッドが用意されるヴェゼル

 一方、CR-Vは価格帯が330万~440万円と高い。価格帯が釣り合うのはハリアーだ。ただしCR-Vは、価格のわりに内外装の質が低い。インパネのステッチも、ハリアーは本物の糸を使うのに、CR-Vは模造になる。

いっぽうこちら影が薄いと噂のCR-V

●健闘度 54/100

■実は意外なSUV大国 マツダ編

価格帯で見るトヨタのライバル車
・CX-3 vs ライズG以上、C-HR、RAV4(ガソリン)
・CX-30 vs C-HR、RAV4全モデル(PHV除く)
・CX-5 vs RAV4(PHV除く)、ハリアー(ガソリン)
・CX-8 vs RAV4(PHV除く)、ハリアー

 CX-3の1.5L車はライズが同価格帯の競争相手。安定性と質感はCX-3で、後席と荷室はライズが広い。

1.5L車の追加で価格競争力を増したCX-3

 CX-30の売れ筋価格帯は260万~300万円で、ボディサイズも含めてC-HRがライバル車だ。後席の居住性は同等で、荷室はCX-30が少し広い。走りはCX-30が比較的よく曲がり、C-HRは後輪の接地性を高めた。

CX-30。SKYACTIV-X車は、上位モデルのCX-5の価格にカブってしまうのが、ややキツい

 CX-5は280万~340万円が売れ筋でRAV4と重なる。居住性と積載性は同等で、CX-5は動力性能、RAV4は安定性が魅力だ。

 CX-8は380万~490万円が売れ筋で、広い室内を備える。上級グレードの価格は、レクサスNXと合致するするが、機能と価格のバランスではCX-8のほうが買い得だ。

●健闘度 87/100

■ライバル不在のデリカ強し 三菱編

価格帯で見るトヨタのライバル車
・RVR vs ライズ Z、C-HR(ガソリン)
・エクリプスクロス vs C-HR、RAV4(ガソリン)
・アウトランダー vs RAV4、ハリアー(ガソリン Gまで)
・アウトランダーPHEV vs ハリアーHV、RAV4 PHV
・デリカD:5 vs ハリアー、ランクルプラド(TXまで)

 最も販売台数の多いSUVはデリカD:5。ミニバンでも走破力が高く、SUVに含められる。

 売れ筋価格帯は430万円前後で、3列シートを備えるからランドクルーザープラドが近いが、機能はかなり異なる。ライバル車が不在で人気を高めた。

唯一無二の存在といっていいデリカD:5

 エクリプスクロスの売れ筋価格帯は280万~330万円で、ライバル車はC-HRだ。車内はエクリプスクロスが広く、操舵感も機敏でスポーティだ。対するC-HRは安定性が優れ内装の質も高い。

 アウトランダーPHEVは、売れ筋価格帯が460万円前後で、RAV4 PHVと重なる。

 RAV4は設計が新しくさまざまな機能で有利だが、アウトランダーはモーター駆動が基本となるため、滑らかな加速など、RAV4とは異なる魅力がある。

2012年末デビューながら、いまだ一線級の実力を持つアウトランダーPHEV

●健闘度 80/100

■まさに少数精鋭の品揃え  スバル編

価格帯で見るトヨタのライバル車
・XV vs C-HR、RAV4(ガソリン 標準車)
・フォレスター vs C-HR(HV)、RAV4(ガソリン)
・アウトバック vs RAV4(HV)、ハリアー(ガソリン)

 インプレッサスポーツをベースに効率よく開発されたXVだが、販売は好調だ。

 260万~290万円が売れ筋となり、C-HRと重なる。後席と荷室はXVが広く、走行安定性は同等。動力性能ではXVが勝り、内外装はC-HRが洗練されている。

XV

 アウトバックもワゴンベースのSUV。価格は300万円を上まわり、ハリアーがライバル車。アウトバックは、海外では新型が発売されたのに、日本では旧型を売る。したがって選ぶ価値は下がった。

アウトバック。スバルのSUVはいずれも最低地上高が高いのが特徴

 フォレスターは背の高い純粋なSUVだ。300万円前後が売れ筋で、ライバル車はRAV4。

 フォレスターは運転しやすく、ガソリンエンジンの動力性能も勝る。RAV4は走行安定性が優れ、積極的に操る楽しさが魅力だ。

●健闘度 75/100

■小さなSUVで差別化を スズキ編

価格帯で見るトヨタのライバル車
・イグニス vs ライズ全モデル
・クロスビー vs ライズ全モデル
・SX4 S−クロス vs ライズ 4WD
・ジムニーシエラ vs ライズ全モデル 
・エスクード vs C-HR、RAV4(FF、Xグレード)

 スズキはSUVを豊富に用意する。その代表がエスクードだ。今は1.4Lターボのみを搭載して、価格は270万円少々だからC-HRと同等になる。前輪駆動ベースの4WDを備えるが、悪路走破力に余裕があって視界もいい。

販売的には影が薄いが、独特の存在感を放つ現行エスクード

 クロスビーは180万~200万円が売れ筋で、トヨタのライバル車はライズになる。クロスビーは後席と荷室が広く、ライズは外観がSUVの典型でカッコイイ。

 このほかジムニーの小型車版になるジムニーシエラ、SUVとコンパクトカーの中間で全長を3700mmに抑えたイグニス、基本部分をエスクードと共通化したSX4 S-クロスなど、スズキにはライズに相当する小さなSUVが多い。

SX4 S-クロス

●健闘度 83/100

■ライズと完全一致じゃない! ダイハツ編

 ダイハツのSUVは軽自動車のタフトを除くとロッキーのみ。基本的な機能はライズと同じだが、ダイハツでは上質になった軽自動車からの上級移行もある。そこでロッキーは独自のレザー調シートを備えるプレミアムを設定した。

 装備と価格を見ると、ロッキーはライズよりも1万~2万円割安だ。ダイハツは営業関連費用が安く価格を抑えた。

トヨタの完全子会社で、ライズとは姉妹車であるため、健闘というものでもないが、地味にライズより割安だということが判明したロッキー

【閑話休題】500万円以上なら、輸入SUVだって狙えるけど……

(TEXT/編集部)

 500万円以上のSUVとなると、さすがにトヨタといえどやや手薄になり、レクサスブランドの出番。国産ではほぼライバル不在だが、今度は輸入車勢が立ちはだかる。

 アウディではQ3、BMWではX2、ベンツではGLB、ボルボではXC40。そのほかVWのティグアンやフランス勢も、もちろん狙える。

 いずれも性能や上質感だけでは比較できない個性や、乗った時の面白さがあり、それゆえにレクサスは、日々それらの輸入車たちと熱闘を繰り広げているのだ。

BMW X2

■まとめ

 トヨタ以外のメーカーが、ライバルと想定するクルマとして多く名が挙がったC-HR&RAV4。ヤリスクロスが発売された後は、この図式にも変化があるだろう。SUV戦国時代、動乱は続いていく。


【番外コラム】相関図から読み解くヤリスクロスの価格は正解か?

 販売店では2020年7月下旬から、価格を示してヤリスクロスの予約受注を行っている。上級グレードになる2WD・Zの価格は、ガソリンエンジンが221万円、ハイブリッドは258万4000円だ。

 ガソリンエンジンはライズ2WD・Zの206万円よりも15万円高く、C-HR 1.2Lターボの2WD・S-Tの241万5000円に比べると約20万円安い。また、基本部分が共通のヤリスに比べても、SUV化による価格上昇が少ない。

 その結果、キックスなどのライバル車と比べても割安で、トヨタSUV軍団の価格分布にも重複しない。実に考えられた価格設定だ。

ライズ、C-HRの中間を補う価格のヤリスクロス

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