高速道路の料金所などに黄色の大きな円筒形の物体がよく置かれている。赤と白の市松模様でよく目立つのだが、その正体をご存じだろうか?
実はもしもの時に守ってくれる縁の下の力持ち「クッションドラム」なのだ!
文/藤田竜太、写真/Adobe Stock(トップ画像=Paylessimages@Adobe Stock)
■カーアクションでもお馴染みの「黄色い樽」
高速道路の料金所や分岐点、駐車禁止区域などに、黄色地に赤と白のチェック柄=市松模様の反射シートを貼った大きな樽を見たことがあるだろう。あれは「クッションドラム」と呼ばれる衝突衝撃緩衝具のひとつで、事故多発地点に設置されたり、簡易閉鎖具として使われている。
材質は主にポリエチレン製で空洞の内部にいくつかの水袋が入っている。クルマが衝突したときは、その巨大な運動エネルギーを、ドラムの変形と内部の液体により流動するエネルギーに変換し、衝撃を緩和減衰、吸収する仕組みで、ボクシングのサンドバッグならぬ大きなウォーターバッグだと思えば間違いない。
参考までに、NEXCO東日本のHP「交通安全施設の技術と設備の用語集」には、下記の表記がある。
・クッションドラム
「道路の分流端や路側の橋脚、標識柱などのように、路外に逸脱した車両が衝突する恐れのある固定構造物等の前に、車両衝突時の衝撃を緩和し、車両乗員の被害を低減するために設置される施設です。通常黄色のプラスチック容器の中に水の入った袋がつまっています」
衝突時の衝撃緩衝効果は見た目以上に大きく、日本自動車研究所(JARI)で行なわれた衝突テストでは、固定壁の前にクッションドラムを設置した場合、同条件で直接固定壁に衝突させたときに比べ、下記の効果が確認されている。
・フロントフェンダーの最大変形量は約1/3t
・衝撃時のダミー頭部の加速度(G)は1/2以下
そして60km/hで乗用車がクッションドラムを介してコンクリート製の固定壁に衝突したときの最大加速度は、3点式シートベルト装着時の乗員安全の加速度限界値(25G)を大幅に下まわることも実証されている。
このようにクッションドラムは、ドライバーのミスや不注意、車輌のトラブルなどにより、クルマが道路上の施設に衝突や接触をしたときに衝撃を緩和吸収し、乗員や施設の被害を小さくするのに非常に役立つアイテムとして普及している。
また中身の水は、いくつかのパックに分かれて入っていて、出し入れが可能。例えば200Lの容量がある丸型のクッションドラムでも、水を抜いてしまえば本体の重量は10kgもない。移動や設置も簡単で、あとから水を注入すればすぐに使える。
さらに移動に便利なタイヤ(コロ)付きのクッションドラムもあり、サイズも一種類ではない。
デザインも汎用性の高い丸型クッションドラムの他、道路分流部などに設置しやすい角型クッションドラムもあり、設置される場所や用途に合わせて、数や形をいろいろと組み合わせることも可能だ。
ちなみに価格は、標準的ともいえる直径580mm、高さ830mmの丸型クッションドラムで、一本1万8000円前後。同サイズでタイヤ付きだと2万円前後。角型の300Lタイプだとかなり高価で10万円弱。
分離帯のところに置かれている体積の大きいA型(400L)と、角型(300L)2個の組み合わせだと30万円以上。
万が一、事故でクッションドラムに衝突し、潰してしまった場合は、道路管理者から請求が来るので、クッションドラムのお世話にならないよう気をつけよう。
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