観光バス(貸切車)や長距離高速バスには、路線バスとは異なるタイプのバスが主に使われる。出入口は前方にあり、すべてのシートが同じ高さに並んだ「ハイデッカー」と呼ばれるタイプだ。
それでは、このハイデッカーとはどんなバスを表しているのか。さらにスーパーハイデッカーというタイプもあるが、スーパーでないハイデッカーとの違いも探ってみた。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
【画像ギャラリー】スーパーハイデッカーって何が“スーパー”なのか(5枚)画像ギャラリーデッキがハイなバスがハイデッカー
そもそもスーパーでない「ハイデッカー」とは何なのだろうか。工業規格的な定義はないのだが、デッキがハイということで床が高いことを表す極めて日本的な発想の和製英語である。
バスはタイヤが大きいため、最近のノンステップ路線バスでは顕著に出っ張っているタイヤハウスは、客室には邪魔者である。このタイヤハウスよりも上に客室の床を設ければ、眺望は良くなり邪魔な突起がなくなってよい。ということで出来上がったのがハイデッカー車で、貸切車や高速車に多用された。
つまりタイヤハウスの上に床がある「高床車」がハイデッカー車であると言える。ただし、ノンステップ路線車とは市街、乗降時には数段のステップがあるため、バリアフリーの仕様ではない。よって、クルマ椅子利用者のためのリフトやエレベーター付きの車両もある。
ハイデッカーよりさらに高く!
今度はもっと眺望を良くするために床を上げると、荷室が広く取れるという発想から、ハイデッカー車よりもさらに床が高いバスが考え出された。これがスーパーハイデッカー車だ。 これにより床下に乗務員の仮眠スペースやトイレを設置することができ、バスの運用自由度が増した。 ここがスーパーハイデッカーの“スーパー”なところだ。
現在では全高が3. 6m以上のバスをスーパーハイデッカーと呼ぶようだ。ちなみに二階建てのダブルデッカー車でも日本では全高の制限が3.8mなので並ぶとスーパーハイデッカー車と高さはあまり変わらない。
いい事だらけのスーパーハイデッカー車だが、開発の過程ではいろいろと問題が多かった。 日本では1軸あたりにかかる重量(軸重)が10トンまでと決められている。車高を高くして荷室が広くなった分だけ材料も多く使用することになり、車重も増し、リアエンジンなので後輪への負担が10トンを超える事態になった。
仕方がないので大型トラックのように後輪2軸(全3軸)にして対応した車両もあるが、それでは車両価格のみならず、その後の維持費も高くなるという問題が起きた。 最初は少し車高を下げたり定員を減らすなどの対策を取ったが、それは目的とは逆行する消極的な解決方法だった。