長引くコロナ禍の影響で、高速バスが大きく利用を減らし、バス事業の収益にマイナスをもたらしている。ただ、ひとくくりに高速バスといっても、県内高速バスなど中・近距離の高速バスは一般路線バスと同様、70~80%程度まで戻ってきている。
これは通勤通学をはじめとする日常生活のニーズを担っているからにほかならない。だからこそ、大切な地域の足として、中・近距離高速バスを意識する機会ともいえるのではないだろうか。
(記事の内容は、2022年1月現在のものです)
執筆・写真/鈴木文彦
※2022年1月発売《バスマガジンvol.111》『鈴木文彦が斬る! バスのいま』より
■厳しさ増す“生活路線”の高速バス
夜行高速バスや長距離都市間バス、観光地や空港などにアクセスする目的の高速バスなど、どちらかというと非日常の移動ニーズに応える高速バスが、コロナ禍の影響によってコロナ前の40~60%程度までしか戻っていない。
対照的に、県内や隣県あたりを結ぶ100km未満の距離の高速バスは、通勤通学など日常の移動に利用されているため、70~80%あたりで推移している状況だ。
より利用が戻ってきていてよかった、という話をしようとしているのではない。
なぜなら、ワンマンで1人の乗務員が1往復半とか2往復でき、“ドル箱”とさえ呼ばれてきたこれら中・近距離高速バスも、必ずしもすごく収益率が高いということではなく、20~30%減少すると採算ラインを下回るケースも少なくないからである。
もともと高速バスの場合、特殊な事例(行政からの依頼で運行している路線など)を除くと、国や地方公共団体からの補助は設定されていない。
それだけに、コロナ禍で収益率が悪化した今、乗務員不足も背景に、今後減便や廃止といった選択肢も視野に入ってくる中、地域としてそのあり方に関わっていく必要がある。
■全国数ある“生活路線”の高速バス
では、どんな高速バスがそうした“生活路線”の役割を担っているのか、とりあえず全国を眺めてみよう。
ひとつはしばしば「県内高速バス」などと呼ばれる県庁所在都市を起点に1都道府県内で完結する路線である。都市部の一般路線並に運行便数が多い路線も少なくない。
北海道(札幌~小樽・岩見沢など)、宮城(仙台~古川・石巻など)、新潟(新潟~長岡・東三条など)、静岡(静岡~相良など)、愛知(名古屋~桃花台など)、兵庫(三宮~恵比須・加東・淡路島など)、広島(広島~呉・三次など)、福岡(福岡~小倉・直方など)、沖縄(那覇~名護など)などに見られる。
呼称は高速バスではなく特急バスなどとしている事業者もある。
もうひとつは都道府県境はまたぐが、生活圏として直結している隣接または近県を結ぶ路線で、仙台から山形、福島など、東京からつくば、鹿島神宮、アクアライン経由千葉県中部など、金沢から富山など、名古屋から三重県北部(大山田団地など)や岐阜県東部(多治見・可児・美濃など)など、大阪から兵庫県西脇・加西など、福岡から佐賀、日田、唐津などを結ぶ路線がこれに該当する。
仙台~山形間など、定期券を設定している路線もある。