世界ラリー選手権(WRC)2022第9戦「イープル・ラリー・ベルギー」を、水素エンジン搭載のGRヤリスでデモ走行したモリゾウさん。デモ走行とはいえ、初めてのWRCのSS(競技区間)を走った印象はどんなものだろうか。走行を終えたモリゾウさんに、ぶしつけながら「自己採点は何点くらいでしょう?」と直撃してみた。
TEXT/ベストカー 写真/ベストカー、トヨタ
■「GOOD! VERY GOOD!!」
「欧州でもカーボンニュートラに向けた選択肢を広げよう」という想いのもと、さる2022年8月21日WRC第9戦「イープル・ラリー・ベルギー」のSS11 (15㎞)を、水素エンジン搭載のGRヤリスで走ったモリゾウさん。
クルマを降りてインタビューに答え、「とにかく滑る、道は狭いし、こんなに難しいとは思わなかった」と本場のWRCのコースの難しさを語った。
「疲れましたか?」の質問には「全然疲れません! あっという間に終わりました」と若干物足りなさそうだった。日本で走る「ラリーチャレンジ」のSSはせいぜい3~4kmだから、その約5倍の長さを走ったことになるが、今回モリゾウさんがいかに集中した時間を楽しんだのかが想像できる。
また4度のWRCチャンピオンに輝き、今回コ・ドライバーを務めたユハ・カンクネンさんの印象について聞かれると、「ぼくの技術に合わせてペースノート(コーナーのキツさや距離、道幅などが書かれたメモ)を読んでくれ、とても走りやすかったです。アクセルとブレーキについてのアドバイスももらいました」とモリゾウさんにとっても勉強になった様子。
いっぽうそのカンクネン氏にモリゾウさんのドライビングを聞くと「GOOD! VERY GOOD!!」とモリゾウさんのスムーズでメリハリの利いたドライビングを褒めていた。
そもそもモリゾウさんが、わざわざベルギーに渡って水素エンジンGRヤリスをドライビングした理由は何なのか。
ひとつはWRCという欧州における晴れ舞台を水素エンジンGRヤリスで走ることで、カーボンニュートラルに向けてEV以外の選択肢を広げていこうという狙いがある。サービスパークと呼ばれるラリー車を整備する拠点ではMIRAIから取り出した電気が使われ、その可能性をアピールした。
また、水素エンジン車は危険ではないことをトヨタ自動車の社長みずからが、ステアリングを握ることでアピールする狙いもあった。
実際、初めて見る水素エンジン車の走りと、ガソリンエンジンよりも少し乾いたエンジンサウンドに、ギャラリーたちは興味津々のようで、ある若い男性が周囲の日本人に「日本で水素エンジン車は売っているのか? どうやって水素を入れるのか? 危なくないのか?」と矢継ぎ早に聞くシーンがあったほどだった。
もうひとつの狙いは、モリゾウさんには、モータースポーツを「普通のスポーツ」にしたい、持続可能で若い人が憧れる業界にしたいという想いがある。そのことは「トヨタができること、やらねばならないことは世界への道を開くこと、人材を育成していくこと」というモリゾウさんの言葉からもうかがえる。
今回はWRCラリーチャレンジプログラムの2期生(1期生は勝田貴元選手)としてフィンランドに渡り、フィンランド国内選手権を戦っている山本雄紀選手、小暮ひかる選手、大竹直生選手の3名が「現場」へ招かれ、モリゾウさんから激励されていたが、勝田選手に続く彼らの活躍が期待される。
モリゾウさんがWRCの舞台を走ることで、可能性を持つ若者がWRCドライバーへの道を夢見てくれるかもしれない。
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