路線バスの後ろに「乗降中」と光る縦長の電飾パーツが結構な割合で取り付けられている。この乗降中ランプ、現在では当たり前のように見られるが、いつ頃から何のために導入されたのだろうか?
文・写真:中山修一
それはある日突然に始まったのだった!!
「乗降中表示器」や「乗降中表示灯」とも表現する乗降中ランプ。どの事業者が西暦何年に路線車に取り付けるアイディアを初採用したのかはハッキリしない。
つい最近できたものではなく、1990年代の初め頃には同等の装置を付けた路線車が活躍していた。デビューから既に30年以上経っていることになる。
現在はLEDを点灯させて文字を描く構造になっている。LEDが普及する以前の乗降中ランプといえば、非常口看板のような透過性のある樹脂に「乗降中」の文字を載せ、バックライトで照らすものが主流であった。
モノよりもヒトに対しての注意喚起?
乗降中ランプは大抵の場合ドアと連動している。ドアのどこか1つでも開くとスイッチがONになり点灯、全部閉まればOFFになり消灯する。
ウインカーで事足りるのでは? と思ってしまうが、ウインカーはあくまで自動車の挙動を示すものだ。
乗降中ランプは車両本体よりも、乗客などバスに関係している人たちの動きに対して、後続車などに注意を促す役割を強く担っている。
点灯時「追い越してよい」という意味はもちろん一切持たない。2輪車に向けては全く逆で「絶対すり抜けるな」のニュアンスになる。
また、法律で細かく決められている自動車用電飾の種類の中で、乗降中ランプについては特例で認められている。
今や標準装備……とうわけでもなかった!?
各地の路線バスの後ろを観察すれば、怒涛の普及率と言えるほど定番になっている乗降中ランプ。あれほど数が多いのだから標準装備だろうと考えたくなる。
ところがメーカーの車両カタログを開くと、公式写真の車両後部には乗降中ランプが一部を除き付いていないのだ。積極的に乗降中ランプをアピールする項目も見当たらない。
浸透している割に、なんとオプションなのである。
大型路線車では車両を後ろから見て左側、エンジンパネルの部分に外付けするのが一般的なようだ。必ず左側でないとダメということはなく、ランプが右側にある車両もたまに見かける。
小型バスの日野ポンチョは、メーカー純正オプションとしてカタログ上で紹介されている。
エンジンパネル左側に表示器が埋め込まれ、車体のデザインに溶け込ませた形となるのが、外付け基本の大型路線車と少し異なる。