2022年12月14日、タイ・バンコクで開催された「タイトヨタ設立60周年記念式典」にて突如世界初公開されたトヨタの新型ハイラックスREVO(レボ)BEV(現時点ではコンセプトモデル。会場で豊田章男社長自ら「発売は1年以上先」と明言された)。世界中が注目するこの新型電気自動車に、なんと「チャン・インターナショナル・サーキット」の特設コースにて試乗できたので、その様子をお届けしよう。なおタイ政府は2030年までに国内EV生産台数を(国内総自動車生産の30%にあたる)75万台にする、という大きな目標を掲げており、電動化はタイでも待ったなしの課題となっている。
文/ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、トヨタ
■ハイラックスはタイの国民車
ハイラックスはタイ国内のベストセラーカーとなっている。この国ではピックアップトラックが大人気で、ハイラックスは2021年の1年間で13万829台販売され、いすゞのD-MAXは14万9113台も売れている。3位はホンダのコンパクトカー「シティ」4万2485台となっていて、これがタイの販売台数のトップ3となっている。
タイでなぜトヨタのハイラックスやいすゞのD-MAXが人気なのか?
もともとタイでは、自家用車を所有することが夢となっていて、ひとつのステイタスになっている。しかし、現在販売されるハイラックスREVOのベース価格は350万円からと決して安くない。それでもみんな、ピックアップに乗りたいのだ。
なぜか? 都市部以外、農村部や工業地帯にすむ人々にとって、仕事にも使える自家用車としてピックアップは、とても便利なクルマであり、乗用車に比べると大きく見えることも高級意欲を煽るのだという。
そんなタイでも先に述べたように電動化は待ったなしとなっている。タイ政府は「2030年の国内EV生産台数を(国内自動車生産の30%にあたる)75万台にする」という大きな目標を掲げており、全国に急速充電器を1万3000基、EV急速ステーションを1400カ所整備するとする計画を立てている。トヨタもそのような事情に鑑み、EVの開発を進めてきたというわけだ。
今回試乗したハイラックREVO BEVはbz4xのフロントに搭載される80kWのモーターをリアに搭載し、リチウムイオン電池を荷台下に搭載する。電池搭載のため、リアはリーフからド・ディオン式に変更されている。リアデフをボディ側に固定することでバッテリーとモーターのスペースを生み出しているのだ。
この方式を取ることでフレームなどボディ骨格を変更することなく、バッテリーを搭載できる。トヨタでは「カセット式」と呼んでいて、量産化が比較的簡単でコストダウンを可能にしている。インテリアは電動パーキングブレーキを採用し、ドライブセレクターレバーは、センターコンソールにありダイヤル式だ。
ピックアップトラックの高い視界から感じるスムーズな加速は新鮮。その加速はBEVそのもので、あっという間に100㎞/hに達する。
ステアリングはEPSが採用され、レスポンスがいいためガソリンのハイラックスに比べると、洗練された印象だ。乗り心地も265/50R16のグラントレックが装着されており、(荒々しい印象を持つ内燃機関搭載のいわゆる)ハイラックスとは別物で、不思議な感覚だ。ちなみに今回試乗したプロトタイプは回生ブレーキが入っておらず、航続距離は250㎞ほどだという。
現在はFR(後輪駆動)シングルキャブ仕様だが、ツインモーターによる4WDも考えられ、ダブルキャブやキングキャブなどのボディタイプの追加も当然あるはずだ。
ハイラックスREVOの新しい仲間になるBEVは、タイはもちろん日本にも影響を与えるはず。カーボンニュートラルに取り組む企業にとって輸送面でのCO2削減は大きな課題。ハイラックスREVO BEVは、バッテリーが調達できれば量産化が可能で、日本への導入も容易(なにしろ右ハンドルだし日本の衝突安全基準も問題なくクリアできる見込みとのこと)。
さらに「カセット式」のBEVの考え方はほかのトラックにも応用が効くはずで、日本での商用車のBEV化に拍車がかかる可能性もある。
ハイラックスREVO BEVはタイでの実証実験を終えたあと、2023年後半にも発売予定だ。
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