東京・神田須田町にある「ケンクラフト」は、建機専門のミニカーショップとしてよく知られた存在です。
その店主・高石賢一さん(通称ケンさん)は国内外の建機やトラックに精通していますが、もちろんカッコいい車両が大好き。
今回そのケンさんが惚れてしまったのがオリジナルパーツ/アクセサリーで知られるMOONEYES(ムーンアイズ)のボルボ。早速、モデル化に取り組みました。
文/高石賢一(ケンさん) 写真/高石賢一(ケンさん)・フルロード編集部
*2022年9月発行トラックマガジン「フルロード」第46号より
アメリカンなボルボに一目惚れ
SO COOL! こんなカッコいいボルボがあるのか! 見た瞬間にモデル化したいと直感。ボルボなのにどっから見てもアメリカン、このまま南カリフォルニアを走らせてみたい。MOONEYESマジックだ。
MOONEYES代表のSHIGE SUGANUMA氏とは親交があったので早速コンタクト。実車は同社のものではなく、ヨシノ自動車のカスタム部門、FAST ELEFANT(以下FE)が手掛けたもの。
綿密にデザインされた上、グラフィックはピンストライパーである石井さんの手描き! 実は筆者のクルマにも彼にピンストを入れもらっているので彼の仕事ぶり、仕上がりの素晴らしさは知っているつもりだ。
しかし、乗用車より遥かに大きいトラック、大きなキャンバスに、実車を目の当たりにしたら果して素晴らしいの一言。カッテイングシートやマスキング塗装をしたものとは別格の仕上がりだ。
ピンストライプの職人のこだわりが随所に
彼が使う塗料はピンストライプ専用でエナメル系。筆をおいてから塗料のノビが非常に良くラッカーや水性とは違った独特の色合い、発色が魅力だ。また専用の筆も穂先が長く特殊な形で自在に描くには相当熟練が必要。
意外なのは簡単には剥がれないことだ。うちのクルマは描いてもらって12年くらいは経っているがぜんぜん風化していない。
さて、通常モデル化するにあたってはカラーリング仕様書やロゴマークのデータを用意していただく。ところが今回はデータなるものがないとのこと。そこで実車のグラフィックをひとつひとつ図面のように撮影。かなり面倒な作業なのだがこれが正解であった。そのデータを元にデカールを作り試作品を作成した。
ベースとなるモデルはオランダの模型メーカーWSIがFH4をラインナップ。模型のホイールベースは長いタイプだったのでサイドパネルのグラフィックはうまくアレンジ。
同車の特徴でもあるフロントバンパー下とサイドパネル下のクロームメッキされたバーを追加。フロントバンパーにはクラシカルなデザインの補助ライトも追加。試作品は左ハンドルだが量産品では右ハンドルになる。
トラクタだけでもカッコいいのだが、トレーラを引いている姿は迫力が違う。というわけで実車はないのだが、模型はボックス型トレーラをセット。スムージングしたようなデザインのサイドスカート付きをチョイス。MOONEYESイエローを基調にFEらしい大胆なデザインだ。
ボルボもすっかり日本に定着し、導入した会社はカラーリングまでこだわっているところが多い。いろいろな会社のドライバーさんとお話する機会があるが、カッコいいトラックのドライバーは仕事の質も高く、仕事ぶりもスマートだ。
俺はこれを運転しているんだというプライドを持っている。それは気持ちよく働く環境のひとつとなり、その会社にとっても、大事な取引先にとっても、良い結果となるのは間違いない。ここにカッコいいトラックの存在意義があるのだ。
運搬を頼んだ会社も物を取りに来たトラックがカッコよければそれだけで安心感が生まれるし仕事のテンションも上がるであろう。