世界各国のトラックをメーカーごとに紹介する「世界のトラック」。今回は日本を含む世界各国でトラックを販売するスウェーデンの「ボルボ」をピックアップ。世界中の長距離ドライバーが憧れる旗艦「FH」や構内専用車として日本に導入されている「FMX」など、同社の欧州市場向け最新ラインナップを多賀まりお氏が解説する!!
文/多賀まりお
写真/ボルボ
※2020年3月発行「フルロード」第36号より
先進的なコンポーネントを意欲的に開発
ボルボはスカンジナビア半島の南西岸、スウェーデン第2の都市ヨーテボリ発祥の商用車メーカー。乗用車部門は1999年にフォードに売却され、現在はボルボ・カーズとして中国のジーリーホールディンググループが所有する。
傘下にルノートラックス、マック、そしてUDトラックス(掲載時。現在はいすゞ自動車傘下)を擁するボルボ・グループは、2019年12月にいすゞ自動車と戦略提携に関する覚書を締結。完全子会社であるUDトラックスをいすゞに譲渡することを発表した。
旗艦FHの現行モデルは2012年に19年ぶりの全面変更を実施。汎用のFM/FMXは従来のキャブ骨格を引き継いでいたが、近くモデルチェンジを行ない、再びFHとの共用化を高めることになりそうだ(掲載時。2020年にFH、FM、FMX、FH16の4モデル同時モデルチェンジを実施。FMとFMXのキャブはFHベースの新開発キャブに一新された)。
FHはステアリングギアボックスに電動モーターを組み合わせて修正舵や操舵力軽減に用いる「ボルボ・ダイナミック・ステアリング」のほか、前輪独立懸架、AMT「Iシフト」のデュアルクラッチ仕様など先進的なコンポーネントを意欲的に開発。
軽油を呼び火として天然ガスをディーゼルサイクルで燃焼させる12.7Lの天然ガスエンジンG13型搭載のLNGトラクタも発売した。
●FH
日本を含む世界各国で販売されている長距離輸送用のフラッグシップモデル。主力のトラクタ系車型のほか、単車系車型も展開しており、エンジンは12.8LのD13K型と16.1LのD16K型の2機種を設定する。すべてスリーパー仕様のキャブで、標準ルーフとハイルーフ「グローブトロッター」をラインナップ。日本市場には右ハンドル仕様が導入されており、2018年の平成28年排ガス規制対応を機にダイナミックステアリングやIシフト・デュアルクラッチなど欧州仕様と同じ最先端装備が導入された。
●FM
中・長距離輸送〜特装系まで幅広くカバーする大型の汎用モデル。キャブは先代のFHとモジュラー設計されFHよりもフロア高が高い(2020年のモデルチェンジで現行FHベースの新開発キャブに変更された)が、上質な内外装が自慢。エンジンは10.8LのD11K型と12.8LのD13K型のほかCNG仕様のG13型も用意。
●FMX
FMベースのオフロード特装用モデル。デイキャブの単車系をメインに4×4〜10×6までさまざまなシャシーを用意するほか、トラクタやクルーキャブも設定。エンジンはFMと共通で10.8L/12.8Lの2種類をラインナップする。登録はできないが構内専用車として18年より日本市場にも導入されている。
●FE
GVW18〜26tをカバーする中・大型汎用モデル。ルノー製の2.3m幅キャブはデイキャブのほか2種類のスリーパーキャブや特装用のローエントリーキャブも設定する。エンジンは中型用のG8K型7.7L。EV仕様の「FEエレクトリック」も19年にデビューした。
●FL
GVW12〜18tをカバーする中型汎用モデル。キャブはFEの2.1m幅版で、デイキャブ、スリーパーキャブ、クルーキャブが選べる。エンジンは4気筒5.1LのD5K型、6気筒7.7LのD8K型を搭載。地上高を高めた4×4モデルも存在する。FE同様、EVトラックの「FEエレクトリック」が19年にデビューしている。