「人を乗せて運ぶ」本来の役割を終えたバス車両。廃車になったらそのまま解体・リサイクルされるのが定番かもしれないが、原型を留めた状態での“転職”も可能らしい。どんな用途が考えられるだろうか。
文・写真:中山修一
■(1)静態保存車として展示される
本来の役割の部分=移動手段の所だけ除かれた以外は、現役時代から姿形をほぼ変えずに残されているものが「保存車」にあたる。
保存車には、外観のみ元のままで置き物として眺めて楽しむ静態保存車と、外観のほかエンジンをかけて動かす又は走らせることもできる動態保存車の2種類がある。
さらに、新車当時から整備を重ねて状態を維持してきたものと、廃車になり長い年月が経ってからレストアしたものとに分けられる。
個人、企業、バス事業者に至るまで、保存車のオーナーは多岐にわたり、非公開、博物館展示、公園常設など保存方法も様々だ。
■(2)アート作品・遊具・学習教材として活躍
保存車が「○○年式△△社製□□型です」のような説明を添えて、バス車両自体を見せることが目的になっているのに対し、「バス」という存在感は必要ながら、他の用途に主眼を置いている元・バス車両もある。
廃車になったバスを素材にしたアート作品をはじめ、運転席に座って操作体験ができるようにした主に子供向けの学習教材、車体をシミュレーターに接続した遊具などが、この項目に当てはまる。
アート作品を除けば限りなく保存車に近いが、見せて楽しませる他に学びと遊びの要素を加えるための改造が施されている点で、ちょっと方向性が異なっている。
■(3)倉庫や物置として不動産的役割に従事
廃車になったバス車両を自宅や私有地に置いて、倉庫や物置の代わりにする活用法も考えられる。
各地を歩くと、タイヤが潰れて車体のあちこちに錆が浮いたバスがひっそり佇んでいる光景を結構目にする。そういった廃バスは倉庫または物置だった可能性が高い。
ちゃんと手続きを踏めば、法律的にバスを倉庫代わりにして問題ない。ただし、最近はあまりポピュラーな手段とは言えなくなったようだ。
だいぶ前に使われなくなり放置の末に“野生化”してしまった、元・倉庫と思われる廃バスもあちこちに残されている。
廃バスの倉庫などへの転用が流行したのは何十年も昔で、今や貴重な旧年式の廃バスが非常に多い。
朽ち果て具合に侘び寂びや郷愁を感じる向きも居て、廃バス車体観察はバス趣味の一ジャンルになるほどだ。