そもそも営利目的で運行している路線バスに運賃を払わず乗る、などという発想からして筋が通らない。しかしながら、各事業者が公式に認めた、実質的に「タダ乗り」する方法というのも無くはないようだ。
文・写真:中山修一
■現代社会を支えるアレでタダを実現!?
どうにかしてバスにフリー乗車したいと思うなら、現代社会の原動力である、投資の世界に目を向けると先が見える可能性が高い。
企業の中には、その会社の株を購入すると、経営を応援してくれるお礼として、自社商品などを贈る制度を設けている。
いわゆる株主優待というものだが、優待制度を取る企業の業種は多岐にわたる。バスを運行している一部の事業者にも当てはまり、優待品目に乗車券類を用意していることが多い。
優待乗車券類は企業から株主に贈呈されるものなので、乗車券本体の部分はあくまで無料だと考えて良い寸法だ。
ここでは全国にあるバス事業者のうち、株主優待制度を実施している民営会社を3社選び、優待でバスのタダ乗りを実現するための各種条件をチェックしてみた。
■神奈川中央交通の優待
まずは神奈川県・東京都・山梨県の一部にバスネットワークを広げる神奈川中央交通から見てみよう。同社では、一般路線バスのみ全線有効で、回数券タイプと定期券タイプ2種類の優待乗車券・乗車証を用意している。
これらを獲得するには、まとまった数の株を購入(保有)するのが条件だ。何株あれば良いのかと言えば、最低ラインが100〜200株未満で、回数券タイプが半年に5枚ずつ贈られる。
200〜400株未満が10枚、400〜600未満が15枚のように段階的に枚数が増えていき、5,000株を超えると回数券タイプ100枚か、定期券タイプ1枚のどちらかを選べるようになる。定期券タイプの有効期限は6ヶ月で、こちらも年2回の発行だ。
20万株以上が一応の上限となっており、この場合は回数券50枚と定期券5枚が贈呈されるとある。
ここで肝心なのが、神奈中の株は1株いくらするのか、という点である。株価チャートを確認してみると、2023年現在のここ1年間では3,200〜3,700円くらいを上下している。
仮に3,500円に均したとして、回数券5枚を目指そうと思ったら、最低でも35万円分の株を持っておく、ということだ。同様に単純計算していくと、定期券1枚で1,750万円、MAXまで優待を受けようとするなら7億円の投資になる。