今日販売されているクルマには、安全装備や運転支援機能が充実しているため、価格も高くなっている。そのいっぽうで、所得は伸び悩んでいる状況では、クルマ選びは難しくなる。そのなかでもスポーティモデルが例に挙げられるだろう。そこで今回は、350万円以下で買える走りの良いクルマを紹介。
文/渡辺陽一郎、写真/SUBARU、NISSAN、HONDA、TOYOTA
■クルマの価格は上がる! そのいっぽうで所得は…
今の新型車は、安全装備や運転支援機能が充実して、安全かつ快適になった。喜ばしいことだが、価格も高まっている。
例えば15年前の2008年頃は、ミドルサイズミニバンの買い得グレードとされるノア2.0X・Lセレクション、ステップワゴン2.0G・Lパッケージなどが220万円前後で販売されていた。
それが今は、ノアに2Lのノーマルエンジンを積んだGが297万円、ステップワゴンに1.5Lターボを搭載するエアーは305万3600円だ。
つまりミドルサイズミニバンの買い得グレードは、この15年ほどの間に、価格を1.3~1.4倍に高めた。
そのいっぽうで所得は伸び悩むから、小さなクルマに乗り替えるユーザーが増えた。今では国内で新車として販売されるクルマの40%近くを軽自動車が占めるが、その背景にもクルマの価格高騰と所得の低迷がある。
言い換えれば、今はクルマ選びが難しくなった。特にそれを感じさせるのが走りの楽しいスポーツモデルだ。もともとスポーツモデルは性能が優れているために価格も高く、今は安全装備の充実などにより、一層値上げされている。
またクルマが生活のツールになったことで、軽自動車が増えた代わりにスポーツモデルの車種数は減っている。そこで価格の上限を350万円まで引き上げて、走りの楽しいクルマを選んでみたい。
■スバルBRZ 低重心のスポーツカーで運転しやすさや走行性能も抜群なMTモデル
●スポーツカー:スバルBRZ・S(326万7000円/6速MT)
価格の上限が350万円になると、1.5Lエンジンのロードスターでは物足りない。ロードスターRFは2Lエンジンを搭載するが、電動開閉式ハードトップの装着もあって価格が高く、350万円を超えてしまう。
そこでスポーツカーではBRZ・Sを選んだ。6速MTの価格は326万7000円だから、350万円以下に収まる。
姉妹車のGR86・RZも6速MTなら334万9000円だが、足まわりの設定が少し異なり、走行安定性を含めた走りのバランスはBRZが優れている。
峠道を機敏に曲がるセッティングが好みならGR86が適するが、高速道路を含めた幅広い使い方をするなら安定性の優れたBRZを推奨する。
BRZは低重心のスポーツカーで、ボディ剛性も高めたから、ドライバーの操作に対して車両が忠実に反応する。
峠道では旋回軌跡を拡大させにくく、ステアリングホイールの操舵角に応じて、車両が内側へ確実に回り込む。
そのいっぽうで、下り坂のカーブや危険を避けるときでも後輪がしっかりと接地して挙動を乱しにくい。ドライバーが車両と一体になる運転の楽しさと、万一のときでも操作が難しい状態に陥らない安定性をバランス良く高めた。
価格は350万円以下だが、上質なスポーツカーとなっている。
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