エクストレイルが売れ続けている。
現行型にあたる3代目(T32型)のデビューは2013年12月で、すでに6年半が経過。それでも2018年度(2018年4月~2019年3月)の累計販売台数は46487台を記録し(月販平均3873台)、2019年3月は単月で6225台を売り上げた。これは日産の登録車のなかでノート、セレナに次ぐ数字となる。
激戦が続くSUV市場において、なぜエクストレイルは存在感を示し続けていられるのか? どこがいいのか? 元日産エンジニアの吉川賢一氏に、その魅力の秘訣を聞いてみた。
文:吉川賢一
■なぜ売れ続けているのか?
2018年は「国産SUV大豊作の年」とも言われており、新型CR-Vや新型フォレスターといった優秀なSUVが次々とデビューした。
そんなSUV業界の中で、日産エクストレイルは2018年SUV4WD販売台数でNO.1(自販連区分オフロード4WD国産車)という、輝かしい成績を収めている。
現行エクストレイルが登場したのは2013年、ハイブリッドが追加されたのは2016年、すでにモデル末期に近づいているのに、だ。その理由は、日本人顧客の趣向の動向と、メーカーも考えていなかったラッキーが重なった結果だと、元メーカーのシャシーエンジニアだった筆者は考察する。
■エクストレイルの魅力とは?
T32型エクストレイルは2013年の登場から、毎年のように細かなチェンジを繰り返してきた。
大きな変更内容としては、2015年にハイブリッド車の追加設定、全車へエマージェンシーブレーキを標準装備化、2017年のマイナーチェンジではフロントグリルやランプ変更、合わせて「プロパイロット」をセレナに続く第2弾として採用、2019年にはオーテックジャパンのカスタムカー「AUTECH」グレードを販売開始など。エクストレイルは、商品魅力を常に磨き続けてきた。
日産によると、エクストレイルのウリは、「インテリジェント4×4が実現する圧倒的な走破性」、「プロパイロットをはじめとする未体験の先進技術」、「先進のシャシー制御が実現する、意のままの走り」である。確かに、エクストレイルに乗ってみれば、どれも訴求力のある魅力的なアイテムであり、その価値は体感できるものが多い。
ただ、こうした性能を求めて購入を決める顧客がどれだけいるだろうか。
筆者は、一番の決め手はもっと分かりやすい理由だと考えている。
■エクストレイルが売れ続ける「2つの仮説」
ひとつめは「ボディサイズと価格」である。
エクストレイルは全長4690mm×全幅1820mm×全高1730-1740mm(20S 4WD 243.7万円~)。
ライバルであるスバルフォレスターは4625mm×1815mm×1715-1730mm(AWD 280.8万円〜)、ホンダCR-Vは4605mm×1855mm×1680-1690mm(4WD 323万円~)、マツダCX-5は4545mm×1840mm×1690mm(25S 4WD 279.7万円〜)となっている。
実はエクストレイルは同クラスの他車に比べて「長くて、幅が狭くて、全高が高く、最も安い」。
つまり、SUVの大切な積載性を、リーズナブルに提供している、という特徴を持っているのだ。
もちろん、カタログや公式サイトで事前に車体寸法や価格を詳細に調べ、ライバルと比較していく方は(最近は増えたとはいえまだまだ)少ないであろうが、車種選択の中で販売店を訪れて、エクストレイルを見た時に、多くの荷物を載せられて、しかもベース価格が「安い」となれば、必然的に顧客の頭には残るであろう。
ふたつめは「クセの少ないボディスタイル」である。
デザインが「主張しすぎていない」ことも要因だったのではないだろうか。トヨタC-HRやホンダCR-VのようなカッコいいSUV、フォレスターやRAV4のような無骨なSUV、こうした特徴が無かったことが「特徴」となっていて、クセが少なく「普通のボディスタイル」をしていたことも、よい影響を及ぼしているのではないだろうか。
好き嫌いを生じにくい「ユニバーサルデザイン」なところが、日本人には知らぬうちに刺さっていたと考えられる。
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