前回はレクサスUXとBMW X1という人気コンパクトSUVの静的評価をした水野さん。
全体的な評価としてはレクサスUXのトヨタらしいまとめ方、BMWらしい緻密なパネルの合わせ目など多くの違いを見つけていました。
今回は試乗をしての動的評価を実施。現役エンジニアの眼にはこの2台のコンパクトSUVはどう映るのだろうか?
文:水野和敏/写真:池之平昌信
ベストカー2019年5月10日号
■UXはC-HRとの差別化は完璧。ただ450万円程度が妥当か?
いつものように歩くほどの速度でゆっくりと大きく左右にステアリングを切ってみると……、とてもスムーズな操舵感で左右の反応にも差異がありません。
車体の剛性が高いことに加え、ブッシュやバネの反力、ショックアブの減衰力など徹底的に合わせ込まれています。足の動きはとてもスムーズでしなやかです。
ブッシュのアソビがなく、操舵に対する遅れを感じません。ただ、リアフロアの剛性はちょっと不足していてブルブルと震えるような動きがあとに残ります。
操舵に対しフロントはスッと反応するのですが、リアがよれるように遅れて反応する。これはもったいない。
試乗後に確認すると、フロントタイヤはトレッド面が均一に熱を帯びているのに対し、リアタイヤは、トレッド内側は熱を帯びているのに対し外側は冷えたまま。
つまり接地変化が起こってしまい、タイヤの接地面を生かし切れていないということです。リアフロアのサスペンション取り付け部付近の剛性です。
ハイブリッドのバッテリーを搭載する関係で、この部分のフロア補強が充分にできていないのでしょう。
ただC-HRよりも上質で重厚な乗り味に仕上げています。ロードノイズはフロントからはほとんど入らず、リアからCピラーを伝わってルーフから入ってきます。
上り坂でアクセルを大きく開けると、エアコン吹き出し口からエンジンルームからの吸気騒音が大きくが入り込んできます。
試しに吹き出し口を閉じると高周波の音がカットされて低周波になることからもわかります。
パワートレーンの駆動力はC-HRの1.8Lハイブリッドと比べてずいぶんと余裕があります。
スポーティなフィーリングではありませんが、SUVとしての余裕にはなっています。
急制動をかけると、リアの配分が少なくフロント頼りなのは予測どおりです。リアフロアの剛性不足を含め、リアにブレーキ配分を大きくかけられそうにありません。
全体的に450万円程度のクルマだとすればとてもいいクルマに仕上がっていると思いますが、600万円が妥当か? はお客様の判断にお任せします。
■やや古さを見せるX1だがボディ剛性に一日の長あり
UX同様、まずは歩くほどの速度でゆっくりと走り出しながらステアリングを左右に大きく切ります。
この場所は路面が荒れていますが、このような場所でのいなしはUXのほうが優れています。ショックアブの極低速領域での「逃がし」がX1のほうがちょっと硬い。そのぶん操舵に対するレスポンスはよくなるはずです。
が、実際車速を上げて操舵してみると、車体の反応に若干の遅れを感じます。これは車体パネル接合部のアソビです。
ただこの遅れは、スポーティなシャープさを求めると遅れ感がありますが、アウトバーンを超高速で長距離移動するSUVということを考えれば、ある程度の遅れは操作の余裕になるため必要なのです。
切り込んでいけばしっかりと反応はするので違和感はありません。
ボディ剛性は前後ともにしっかりしていて操舵に対する車体の動きは前後共に上手くバランスされています。
この点では圧倒的にUXよりもいい。急制動を試しても、後輪ブレーキをしっかりと使っていて安定しています。このあたりはBMWに一日の長を感じます。
上り坂でアクセルを大きく踏み込むと、この2Lディーゼルターボはトルクがもっと欲しい。アクセル操作に対するレスポンスも若干遅れを感じます。
このサイズで2Lならディーゼルターボ特有の、グググと押し出すような加速トルクを期待しますが、感じられません。
ロードノイズは後方から出ています。エンジンルームからのノイズはしっかりと遮音されていて、エアコン吹き出し口からの騒音侵入はありません。これはBMWが採用するエンジンルームの二重隔壁が効いています。
X1については、インテリアの仕上げや足回りのチューニングなど、レクサスUXと乗り比べると全体的に少し古さを感じてしまいました。
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