ベストカー本誌でもおなじみの連載「水野和敏が斬る」。現役エンジニアとしてクルマの作りこみを評価する企画だが、今回はレクサスUXとBMW X1を比較します。
一見すると価格差もありそうな2台。しかし実際はUXの上級グレードは535万円、X1はグレードによっては安くなる。
今回はUXの上級グレード250hバージョンL(オプション込み約600万円)、そしてX1のベースグレードxDrive18dM(オプション込み587万円)を比較。
当記事では静的質感、つまりクルマを運転しない状態でいかに差があるか水野さんに見てもらいました。
文:水野和敏/写真:池之平昌信
ベストカー2019年5月26日号
■価格帯でも競合車!! UXとX1の違いはどこに?
こんにちは、水野和敏です。今回は日本国内でも人気が高まっているカテゴリーのコンパクトSUVを取り上げましょう。レクサスUXとBMWX1の2台です。
レクサスUXはトヨタC-HRとプラットフォームを共用して開発されたコンパクトSUVですが、だとすればBMW X1と比較するのはちょっとクラスが違うようにも感じます。
とはいえ今回の試乗車は最上級の250hバージョンLのAWDで価格は535万円。試乗車はオプションが装着されているため600万円近い価格となります。
対するBMW X1はxDrive18dMスポーツでこちらは車両本体が517万円。本体価格同士で比較すればX1のほうが安い。
試乗車はハイラインパッケージなどのオプションが装着されて587万円程度なので、両車ほぼ同価格で、真っ向比較対象となるのです。
正直言って、C-HRがベースのクルマで600万円というのはちょっと高いのでは? と感じます。X1もオプション込みで600万円となればこれもちょっと高すぎ。
両車ともに400万円台が普通ではと思ってしまいます。600万円といえば、ベンツCやBMW3シリーズ級の性能や機能や質感があって当たり前です。ちなみにC-HRの価格は1.8Lハイブリッドで261万4000円から。
C-HRのハイブリッドはFFしかありませんので、2LハイブリッドFFのレクサスUXの価格と比較すると、こちらは425万円からとなっており、164万円程度レクサスは高く設定されています。
UXのテールゲート開閉時の作動音は”ギュィ〜ン”とギアが唸る音質で、これはちょっと安っぽい。X1は”シュイーン”とスムーズで静かです。
X1はテールゲートを支えるショックアブソーバーの動作音しかしない。UXはテールゲート取り付け部分の車体やヒンジの剛性が低いために、ギアの作動音がそのままパネルに共振して増幅され雑音になっていると思えます。
リア周りのパネル合わせ部分のパーティング隙間も広すぎます。X1は一般的な6mm幅ですが、UXは10mm程度あります。こうした部分に質感が現われます。
テールゲートの下端、バンパーとの合わせ部分は開閉時のオーバーストロークがあるぶん、ほかの部分より少し余計に隙間を空けるのは当然なのですが、X1ではこの部分に前後差を作って、パーション隙間が目立たないようなデザイン処理をしています。
しかしUXはテールゲートとパンパー面をツライチ(同一面状)にしているため、商業車のバックゲートのようにいっそうパーティングの隙間が目立ってしまっているのです。こういうところこそ、高級車の質感を作りだすノウハウなのです。
前後ドアパネルのパーティングの隙間はピシッと6mm幅で仕上げられており、このへんはよいのですが、フロントフェンダーのパーティングの隙間はまた広い。
場所によってパーティングの隙間が、まちまちでバラツキがあるのは、仕上げの粗さを感じさせてしまいます。
左右のドアでもパーテーション幅にバラツキがあります。こうしてみると500万円を超えるクルマの質感としては少し寂しい。
以前試乗したレクサスESはとても質感高く仕上げられていたのに、同じレクサスでもこちらは粗さが目立ちます。
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