車としての商品力維持や性能アップに欠かせないのが、マイナーチェンジなどの改良や特別仕様車などの設定だ。
こうしたテコ入れは、販売回復やライバルへの対策という意味でも大きな意味を持つ。
そこで、直近でテコ入れを実施した注目モデルと、その評価を解説。とかく販売がいま一歩に留まる車は、優先度や費用対効果の関係でなかなかテコ入れできないもの。そうしたなかで、この5台はひたむきに進化を遂げているモデルともいえる。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、HONDA、TOYOTA
ベストカー 2019年6月10日号
86は「走りと乗り心地を確実に向上」
86は2012年の発売だから、すでに7年を経過しており、数回の改良を受けた。2014年には足回りの伸縮性を強め、2016年にはリアピラーのスポット溶接箇所を増やしてボディ剛性を高めた。2Lエンジンの動力性能も向上させている。
2017年にはステアリングを操舵した時の反応を正確にした。2018年にはGRスポーツが用意され、直近では2019年2月にも特別仕様車を追加した。
◆テコ入れの評価は?
86はスポーツカーだから今は販売が低調だ。1カ月の登録台数は300台前後だが、改良の効果は大きい。発売当初の運転感覚が粗削りだったこともあり、走行安定性と乗り心地を数回の改良で着実に向上させている。エンジンの実用トルクも向上した。
86を何台も乗り継ぐ熱心なユーザーが86を育てたといえるだろう。スポーツカーのあるべき姿だ。
アテンザは「モデルチェンジ級の進化」
現行アテンザの発売は2012年だ。この年には先代CX-5も発売され、2016年末にフルモデルチェンジされて2代目の現行型になった。
つまり、アテンザは古い状態で据え置かれたが、2018年に規模の大きなマイナーチェンジを行っている。改良は多岐にわたり、ボディの底面に位置する骨格と足回りの設定を見直しタイヤは新開発された。クリーンディーゼルターボもCX-8と同じタイプになった。
◆テコ入れの評価は?
フルモデルチェンジでも、タイヤは先代型から流用するケースがある。
しかし、アテンザの大幅改良ではメカニズムからタイヤまで刷新したから、安定性と乗り心地はフルモデルチェンジと同等に進化している。ディーゼルも実用回転域の走りが力強くなって吹け上がりも鋭くなり、ノイズと振動も抑えた。
インパネのデザインまで変える渾身の改良であった。
S660は「スポーツカーならではの姿勢が光る着実な改良」
追加された特別仕様車のトラッドレザーエディションは、落ち着いた雰囲気が魅力だ。外装色のメインカラーはブリティッシュグリーンで、ブラウンのソフトトップとブラックのアルミホイールが装着される。
車内にはスポーツレザーシートが備わり、専用色のライトタン&ブラックに仕上げた。
◆テコ入れの評価は?
ブリティッシュグリーンのボディとブラウンのソフトトップ、タンの内装という組み合わせは、スポーツカーの定番だ。「お決まりのコース」ではあるが、普遍的な魅力も感じさせる。やはり欲しくなってしまうのだ。
S660の2018年(暦年)の販売台数は3003台だから、月販平均なら250台程度。N-BOXの1%という販売台数だが、特別仕様車も設定して大切に売っている。
スポーツカーにはこういう姿勢が不可欠だ。
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