2014年に登場したN-BOXの派生車「N-BOXスラッシュ」。斬新なデザインで登場し、軽自動車のあらゆる面で“型破り”をしたクルマだ。生産終了から3年経った今の中古車情報を見ていこう。
文/萩原文博、写真/HONDA
■N-BOXは軽の概念を大きく変えたのか
「“NEW NEXT NIPPON NORIMONO”。Hondaの軽、日本ののりものを変えてゆく」
このような想いから生まれたのがホンダの軽自動車「Nシリーズ」。第1弾となったN-BOXは2011年12月に登場し、2023年10月に3代目となる現行モデルが登場した。
軽スーパーハイトワゴンのN-BOXは、軽自動車だけで登録車を含んだ新車販売台数No.1に輝くなど幅広いユーザーから支持されたベストセラーカーとなっている。
そんなベストセラーカーの軽スーパーハイトワゴンのN-BOXには2014年~2020年の6年間販売された派生モデルのN-BOXスラッシュがあった。
今回はベストセラーモデル、N-BOXの派生モデルながら、わずか6年間ひと世代で幕を閉じたN-BOXの解説と最新の中古車事情について紹介する。
N-BOXスラッシュは、ホンダの軽自動車“Nシリーズ”の第5弾モデルとして2014年12月に登場した。このN-BOXスラッシュはあらゆる面で“型破り”であることにこだわったモデルだ。
何が型破りだったのかというと、N-BOXスラッシュはエクステリアデザイナーが遊び半分で描いた一枚のスケッチが誕生のきっかけとなったからだ。
このような出発点だったのだから、とことん型破りを貫き開発の合い言葉は“ファンキー”となったのだ。
現在、改めてN-BOXスラッシュを見ると、実用性を重視したN-BOXやN-BOXプラスとは異なり、外観だけでなくインテリアにも作り手の遊び心がふんだんに盛り込まれている。
■N-BOXスラッシュは遊び心盛りたくさんなクルマだった
N-BOXスラッシュの外観デザインは、N-BOXのルーフを100mmカット。
これをベースにリアに向かってルーフラインを絞り、ウィンドウラインを逆にせり上げることでクーペスタイルを演出している。
また、リアドアはスライドドアからスイング式へと変更されている。2ドアクーペにように見せる演出は、ルーフ形状だけではない。
リアアウタードアハンドルをウィンドウガーニッシュと一体化したり、リアホイールアーチを貫くようにリアドアの見切りラインを真っ直ぐ降ろすことのでリアドアの存在を感じさせないようにしたりするなど、さまざまな工夫が施されているのだ。
そしてN-BOX譲りの広いインテリアは、クルマと過ごす時間をゆっくりと楽しめる“プライベートブースインテリア”を目指し、室内の長さやワイド感を強調するデザインを採用している。
またインパネとフロントドアのパネルに同じ色や加飾を採用。
また、ソフトパッドをあしらったドアライニングはシートと同素材にすることで、シートに包まれたような心地よいプライベート空間に仕上げている。
さらにダイナースタイル、グライトスタイル、セッションスタイルというインテリアカラーパッケージを設定。ステアリングにはインテリアカラーとコーディネイトした本革を使用。
またそれぞれのパッケージのアクセントカラーの同色リングガーニッシュを装着している。
インテリアカラーパッケージでは、シート表皮には合成皮革を採用。デザイン性を高めると同時にホールド性や手触りの良い、ソファ感覚の快適な座り心地を実現している。
音を吸収しにくい合成皮革をN-BOXスラッシュがシート表皮に採用したのは、車内をライブ会場に変えるサウンドマッピングシステムを採用しているからだ。
プライベートブースを目指したN-BOXスラッシュにとって音楽は切り離せない要素。スペースの限られた軽自動車ながらパワフルな重低音。それに伴う全域でバランスの取れたサウンドを追求。
同時に静粛性の向上も実現させた新開発の8スピーカー+1サブウーファーのサウンドマッピングシステムを採用している。
そのほか、ボタンひとつで確実にパーキングブレーキをかけられ、さまざまなシーンで運転負荷の軽減を支援する、新開発の電子制御パーキングブレーキを全タイプに標準装備している。
そのほかにワイヤレス給電規格「Qi(チー)」に対応したスマートフォンや、Qi対応ワイヤレス充電カバーを装着したスマートフォンをトレイに置くことで充電ができるワイヤレス充電器をサウンドマッピングシステム搭載車に採用。
また、車外からのノイズやスピーカーの音によるドアパネルやライニングなどの不要な微振動を低減するデッドニングキット「ピュアサウンドブース」を新開発し、ディーラーオプションとして設定するなど従来の軽自動車には設定されていない装備が満載だ。
これほど、こだわりが詰まったN-BOXスラッシュだが、2016年に一部改良、2018年にマイナーチェンジを実施したものの、残念ながら販売期間は6年で後継モデルが登場することなくひと世代で幕を閉じた。
なぜ、ひと世代しか販売されなかったのか。それはスーパーハイトワゴン系のモデルは利便性の高いリアスライドドアがユーザーに求められているからだ。
N-BOXスラッシュの前にもタントの派生モデルとしてダイハツタントエグゼがリアドアをスイング式に変更して登場した。
子育て層をターゲットにしたタントに対して、大人のタントとして開発されたが、こちらも短命に終わっている。
そのいっぽうで、ダイハツムーヴキャンバスやスズキワゴンRスマイルが支持されていることを見ると、やはりスーパーハイトワゴンの派生モデルでもリアスライドドアがマストアイテムとなっていることがわかる。
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