日野自動車は2026年7月1日、同社の古河(こが)工場が環境省の「自然共生サイト」に認定されたと発表した。
自然を回復軌道に乗せ、生物多様性の損失を止め反転させる「ネイチャーポジティブ」実現に向けて、「30by30」(2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する)が国際目標になっている。自然共生サイトはこの目標達成に貢献する区域という位置づけだ。
日野自動車は「生物多様性の損失は社会のみならず企業活動にも大きな影響を及ぼす」として工場敷地内にビオトープを造成し、自然環境の維持・再生に取り組んでいるほか、地域の児童たちの環境学習にも活用している。こうした継続的な取り組みが評価され自然共生サイトに認定された。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/日野自動車株式会社
日野自動車の古河工場が環境省「自然共生サイト」に
日野自動車の古河工場(所在地:茨城県古河市)が、このたび環境省の「自然共生サイト」に認定された。自然共生サイトは、民間企業や自治体、団体などの取り組みによって生物多様性の保全が図られている区域を環境省が認定する制度だ。
2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」における国際目標「30by30」では、2030年までに陸域・海域の30%以上を健全な生態系として保全することが掲げられており、日本においても環境省が2023年度から自然共生サイトの認定取り組みを開始した。認定区域は、この目標の達成に貢献する区域として位置付けられる。
日野自動車は古河工場について「自然と地域と共生する工場」をテーマに掲げ、工場敷地内のビオトープを活用し、生物多様性の保全や自然環境の維持・再生、地域への環境学習の機会の提供に継続的に取り組んできたという。
その目標は「外来種を増やさずに在来の生き物を保全し、生息場所を広げ、生物多様性をより豊かにすること」、「ビオトープを地域へと還元し、自然とのふれあいや環境学習のできる場所として提供することにより、地域との繋がりを強め、未来へ繋がる活動にしていくこと」だといい、具体的には、次のような活動を実施・推進している。
多様な生き物が生育・生息できる環境づくり
工場の北側緑地では、「Plant planters planting plants for the planet」(工場で働く人々による地球のための植樹)を合言葉に、2017年度より現在に至るまで、地域に自生する樹種を中心とした本物の森づくりを継続して行なってきた。
2024年には、湿地帯の無かった北側緑地に105平方メートルの池を造成。「緑と水の融合するビオトープ空間」が誕生した。このビオトープが誕生して以降、ギンヤンマなどのトンボの飛来や、放流されたミナミメダカが多数繁殖するようになり、トウキョウダルマガエルの鳴き声も池の至る所から聞こえてくるなど、生物多様性がより豊かになった。
環境学習のフィールドづく
当初より当地に自生していた木々や植物も大切に保全しながら、環境学習の際はフィールドとしても有効に活用している。
クヌギやコナラなどの木々から落ちたどんぐりを拾う体験や、木々と鳥や昆虫などとの生態系の関わりについて学びを得るなど、敷地内のあらゆる自然環境を利用、2026年には直射日光や風雨を凌ぐための東屋をビオトープエリアに設置するなど、子どもたちが安心して、安全に学びや気づきを得ることのできるフィールドづくりを進めてきた。
環境学習イベントの開催
生物多様性の森を次世代へと還元し、地域と共に学び、成長する工場であり続けるために、地域の小学生児童たちと行なう「卒業記念植樹」や「生物放流式」、「夜の昆虫観察会」など、季節の特性に応じた学習イベントを企画、開催することにより、地域の子どもたちへ‟生き物について学ぶ”貴重な機会を提供している。
こうした取り組みや継続的な管理活動が評価され、このたび自然共生サイトとして認定された。
なお、環境省レッドリストに記載があり、古河工場でみられる主な生物・植生としては次のようなものがある。
・ギンイチモンジセセリ(茨城県:絶滅危惧Ⅱ類 環境省:準絶滅危惧種)
・オオムラサキ(茨城県:絶滅危惧Ⅱ類 環境省:準絶滅危惧種)
・ミゾコウジュ(茨城県:準絶滅危惧種 環境省:準絶滅危惧種)
・ミナミメダカ(茨城県:準絶滅危惧種 環境省:絶滅危惧Ⅱ類)
・カワアナゴ(茨城県:情報不足*注目種)
・ヨシゴイ(茨城県:絶滅危惧Ⅱ類 環境省:準絶滅危惧種)
・トウキョウダルマガエル(茨城県:情報不足*注目種 環境省:準絶滅危惧種)
日野自動車は、「環境チャレンジ2050」においてグループとして「生物多様性インパクト最小化チャレンジ」をテーマの一つとして掲げている。事業は自然資本の恩恵の上に成り立つもので、生物多様性の損失は社会のみならず企業活動にも大きな影響を及ぼす。
生態系への影響低減に取り組むとともに、自然環境の保全・再生活動を推進することは、自然と社会、事業活動の調和を目指すことでもある。今回の自然共生サイト認定は、その取り組みが評価されたものであり、同社は今後も地域社会や関係者との連携を深めながら、生物多様性保全活動を継続することにしている。
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