日野自動車が2022年6月に発売した小型EVトラック「日野デュトロZ EV」が、待望の公道試乗に登場!! 世界中のさまざまなトラックを試乗してきた多賀まりお氏は、世界的にもかなり珍しい「前輪駆動式BEV小型トラック」である同車両をどう評価するのでしょうか?
文/多賀まりお、写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2023年12月発売「フルロード」第51号より
都市部でも取り回しやすいサイズ感
東京都八王子市にある日野自動車21世紀センターで対面した日野デュトロZ EVは、見慣れたデュトロのキャブながら、車体は一回りコンパクト、かつ低く構えた印象を受ける。
試乗車はウォークスルー構造を備えたバン型だが、荷箱の幅をキャブと同等の1695mmに抑え、4690mmの全長とともに小型車枠内に収めている。
全高2m超(2290mm)のため4ナンバー登録にはならないが、2.3mを制限値とする多くの地下駐車場に出入り可能。都市部でも取り回しのしやすいサイズとした。
また、積載容積を求めるユーザーの向けてキャブ付きシャシーに別体式のドライバンを架装した完成車も設定され、こちらは全幅1925mm(サイド扉無し使用は1755mm)、全高2480mm(同2490mm)と一回り大きな荷箱を提案している。
運転席は小型トラックよりもミニバン的!?
運転席のドアを開けるとシートのヒップポイントはイメージを超えた低さ。
キャブの搭載位置はエンジン車の中でも最も低い1トン積み系よりもさらに約100mm下げられ、身長170cmの筆者でもフロントピラーのグリップを掴めたステップを使わなくても無理なく乗り込める。感覚としては小型トラックよりミニバンに近い。
グレートネイビーのトリムカラーでまとめられた内装は基本的にエンジン車と共通だが、樹脂製のハイルーフにより天井は高く、専用のフロアパネルにはエンジンコンパートメントの張り出しがないのでキャブ内は広々している。
シフトレバーやサイドブレーキレバーといった障害物も存在せず、運転席からステアリングをかわしながら体を左に回して立ち上がる動作や、荷室への移動にストレスを感じさせない。
耐久性に優れた合成皮革張りのシートはシートヒーターが標準装備。電熱線で加熱する温水ヒーターも備わるが、消費電力が大きく、航続距離にも影響するので寒冷期はシートヒーターの優先的な利用を推奨する。
また、冷房はディーゼル車と同等の性能を持つエアコンが備わり、冷風はバッテリーの冷却にも使われる。
フル液晶式のメータークラスターは専用のデザインが与えられ、中央にデジタル/アナログ表示の速度計を、左右に充放電計(電流計)と電池の残量計をシンプルに配置。航続距離、エネルギーフローや瞬間/平均燃費などの表示もステアリングスイッチの操作で選択できる。