昨今高齢者が運転するクルマの事故が多く報道されている。その際に流される動画にトヨタプリウスが映っていることが多く、感覚的にプリウスは事故率が高いクルマ、という認識が世間一般に広がっている。
プリウスに乗っているドライバーは運転が下手、無謀な運転をするドライバーが多い、と運転するほうにまで言及している。
それから、プリウスは事故率が高いから任意保険も高い、という認識を持っている人も多いと思う。プリウスは事故率が高く保険料が高いクルマなのか、ということを考察していく。
文:ベストカーWeb編集部/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA
プリウスの保険料率クラス
任意保険の料率クラスは、対人賠償、対物賠償、搭乗者傷害、車両の4項目があり、車両型式ごとの事故実績によってきめられていて、保険料の算出に適用される。
区分は1~9の9段階で、保険金支払の実績が少ない型式ほど数字は小さくなり、逆に保険金支払の実績が多い型式ほど数字は大きくなるという特徴がある。正確に言えば、保険金支払い額をその車に乗っている加入者数で割ったものが重要になってくる。
例えば同じ1億円が保険金として支払われたとしても、加入者が1万台のクルマなら1台あたり10万円平均だが、100台のクルマでは1台あたり1000万円にも膨れ上がり、100台のクルマのほうがリスクが高いということになる。
この保険料率は損害保険料率算出機構が決めていて、毎年見直しにより変動する。保険を1回も使ってなくて自身の等級も上がっているのに保険が値上がりした、というケースも出てくるのはそのクルマの料率クラスが上がったのが要因だ。
任意保険に加入していないクルマもあるし、仮に事故をしても保険を使わずすませるケースなどもあるため、料率クラスが高い=事故率が高いという判断を下すのは危険だが、事故率の目安にはなる。
表1は初代プリウスから現行の4代目まで派生車を含め歴代プリウスシリーズの料率クラスを示したもの。区分けの目安としては、5が中間で6~9が高値ゾーン、4~1が安値ゾーンということを考えると、それほど突出しているわけではない。
では、クラスに関係なくほかのハイブリッドセダンと比較してみたい。表2は料率を比較したものだが、どの車も似たり寄ったりで突出した傾向は見当たらない。トータルで見ると、全体責任としての事故、保険金支払い実績など大きな差がないことがわかる。
料率ではピンとこないから、実際に保険料金をシミュレートしてみた。保険会社によってもいろいろ変わるので、目安として考えてほしい。
【シミュレートするうえでの条件】
・35歳以上・運転者限定なし
・割引なし
・対人、対物無制限、搭乗者傷害3000万円
・日常・レジャー使用、通勤通学使用、業務使用の内で日常・レジャー使用
・免許証の色はブルー
・支払方法は一時払い
・新車で新車特約なし
【ハイブリッドセダンの保険料(右側の金額は車両保険なし)】
■プリウス(ZVW50)260万7120円(Sセーフティプラス)
17万4950円/7万970円
■プリウス(ZVW51)273万2400円(Sツーリングセレクション)
15万3900円/6万6220円
■プリウス(ZVW55)292万6800円(Sツーリングセレクション4WD)
14万1140円/5万1970円
■クラウン(GWS224)623万7000円(S)
21万1080円/7万9380円
■カムリ(AXVH70)329万8320円(X)
17万3490円/6万3800円
■カローラアクシオハイブリッド(NKE165)207万3600円(ハイブリッド)
16万1550円/7万8420円
■インサイト(ZE4)326万1600円(LX)
15万5290円/6万3880円
■アコード(CR7)385万円(LX)
19万8000円/6万1630円
※この金額に加入者の等級による割引率、割増率をかけたものが実際の保険料となる
ひとクラス下のカローラアクシオハイブリッドよりも保険料が安いモデルもあるくらいだから、プリウスが不当に高く、ひいては事故率が高いということではないのがわかる。
ただし、前述のとおりトータルで支払われた保険金を加入者で割るということで、加入者が多いプリウスは、事故件数が多いというのは事実だ。
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