盗難の多さと事業用が多いのも保険料に影響
プリウスの保険の料率クラス、保険料を見ていくうえで無視できない要素が2点ある。
まず1点目が盗難の多さだ。
毎年3月に日本損害保険協会が「自動車盗難事故実態調査」を発表。毎年11月の1カ月間、損害保険会社各社が全国で発生したクルマの本体盗難事故と車上狙い(部品盗難も含む)事故で、その期間内に車両保険金を支払った件数が対象となっている。
プリウスは2009年は圏外だったもののその後順位を上げ、2014~2017年は4年連続で最も盗難被害の多いクルマとなっている。2019年はレクサスがトップでプリウスは2位となったが、レクサスはブランド全体の数字なので実質1位はプリウスと言える。
つまり車両保険の料率を挙げる要素としてこの盗難の多さは無視できない。
もう1点は、燃費がよくて室内も広いく使い勝手がいいため事業用のクルマとして使われるケースが多いことだ。見た目は自家用に見えても営業車というプリウスはいっぱい。
事業用のプリウスの何が問題か? 実は保有1万台あたりの事故件数は、事業用乗用車が群を抜いて多く、自家用乗用車の約8倍にもなるというデータもある。
このデータは事業用乗用車の事故の多さがプリウスの事故件数の多さとリンクしていることは明らかだ。
プリウスの保険が高いか安いか、の判断は所有する人によって感じ方は違うだろうが、同じクラスのクルマと比べて異常に高いわけではないし、事故件数が多いのは事実だが、事故率が高いとは言えないだろう。
ただ、保険の料率についていえば、安全技術の進化、安全装備の充実などにより死亡事故は激減している。しかし、死亡事故が発生して保証金額が膨らめば、『全体責任』として翌年の保険料率に影響が出る可能性が高い。これはプリウスに限らず全車について言える。
スポーツカーの保険は高いのか?
プリウスに続いては、スポーツカー&高性能車について見ていく。スポーツカーの保険は高い、というのはクルマ界で半ば常識的に語られていることだが、実際はどうなのだろうか。
スポーツカーといえ、前述のとおり型式ごとに料率クラスが決められていて、1年ごとに事故、保険料の支払い実績をもとに上下するのは同じ。
一般的にスポーツカー、高性能車というのはパワーもあってスピードも出るから事故が起きやすい、というイメージで語られることが多い。実際に1990年代に若者がスポーツカーに乗るものの保険が高くて任意保険に入らずに乗っていたというケースもあった。
実は保険料を高くしている要因は、加入するサイドにあり、その最大の要因が等級(1~20)で等級により割引率(4~20等級)、割増率(1~3等級)が変動する。
表3は現行モデルの国産スポーツカー&高性能車の保険料率をまとめたものだが、車両保険は確かに高いが、そのほかの3要素についていばそれほど驚くような料率の高さではないのがわかるはず。
面白いのは実質同じクルマでありながら86とBRZでは搭乗者傷害保険、車両保険でBRZのほうが上のクラスとなっていることで、これも事故、保険料の支払い実績が加味された結果だ。
では、実際の保険料はどうなるのか、前出のハイブリッドセダンと同じ条件でシミュレートしてみた。
■トヨタ86(ZN6)318万3840円(リミテッド6MT)
17万6810円/6万4510円
■日産GT-R(R35)1063万1520円(ピュアエディション)
28万7410円/4万4110円
■マツダロードスター(ND5RC)275万9400円(Sスペシャルパッケージ6MT)
15万4260円/6万3490円
■ホンダNSX(NC1)2370万円
52万9700円/7万9380円
車両価格が高額なGT-R、NSXは車両保険を含めると高額になるのは当然だが、対人、対物、搭乗者の保険のみだと意外なほど安い。特にGT-Rは86やロードスターよりも安いのだ。
一般に保険料率が上がる、すなわち保険料が高くなる要因として中古車の存在がある。高性能車が手ごろな価格で購入できるようになって若者が購入することで事故が増える→保険料が高くなる、という悪循環をしていたのが1990年代くらいだった。
しかし、すでに絶版になっているスポーツ&高性能車も車両保険以外は法外に料率が高くなっているわけではない。若者のクルマ離れは保険にも影響を及ぼしているのか!?
車両保険についていえば、車対車に限定して支払われるなどの制約を付けることによって保険料を安くできるエコノミー保険などもある。自分で壊した時は腹をくくる、という考えで車両保険抜きの任意保険に入るなどすれば、スポーツ&高性能車といえども保険の負担はかなり小さくなる。
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