乗り出し600万円に迫る高価格帯&日本では使い勝手が厳しいピックアップながら、最高の滑り出しを決めた新型三菱 トライトン。さっそく市販モデルに試乗したが、そこにはパジェロのノウハウがしっかり生きていた! オフロードのみならず街中走行もチョー快適なその仕上がりはスゴイゾ。
※本稿は2024年3月のものです
文/河村 大、写真/小林岳夫、MITSUBISHI
初出:『ベストカー』2024年4月26日号
■剛性感の高さと7つのドライブモードでライバルたちに差をつける
2023年7月にひと足早くタイで発表されたトライトン。翌月にはFIA公認のアジアクロスカントリーラリーに「チームラリーアート三菱」としてワークス参戦していたが、私は主催者の公式Webレポーターとしてこの競技を取材していた。
その時、ダカールのレジェンド、増岡浩総監督が強調していたのが新型ラダーフレームの性能だ。曲げ剛性で40%、ねじり剛性で60%の強化。サスペンションストロークも増え、先代モデルでは減速しなければならなかった段差も一足飛びに通過できるようになったという。
確かに、コース脇で見る新型トライトンは先代モデルより「暴れ」が少なくどっしりと走り、ガタイも大きく押し出しも強くなったこともあり、その風圧と迫力はライバルのハイラックスをも凌ぐようになっていた。
実際乗ってみると剛性感の高さがハンパじゃない。極悪路を走ってもミシリともキシリとも言わない。そしてディーゼルエンジンや駆動系の振動もほとんど感じられなかった。
四輪の接地限界は高く、路面の凹凸をしなやかにいなしながら、ミューの低い路面にトラクションをしっかりかけ続けることができる。極悪路の走破性はパジェロの最終モデルを超えていると断言できる性能だ。
駆動モードは4つ。パジェロ譲りの「スーパーセレクト4WD-II」を搭載し、燃費に優れる2WDはもちろん、オンロードで使えるフルタイム4WD、悪路で活躍する直結4WDのほか極悪路で頼りになるローレンジの直結4WDを選択できる。
また、センターコンソールのダイヤルを回すことでスノーやロックといった7つのドライブモードが選べるようになっていた。
試乗時は足の浮くモーグル地形でマッドモードを選んでみたが、トラクションコントロールの効きが素晴らしく、ノーマルモードでは難しかったところも何事もなかったかのように前進した。路面も掘り返さないので、自然にも優しい走りだ。
■操縦性、安定性、乗り心地のよさはまるで街乗りSUV!?
オンロードでは「4H」、フルタイム4WDモードで試乗した。出足はいい。ひと昔前のピックアップの、もっさりしてすぐ頭打ちするストレスフルなディーゼルのイメージは皆無。ライバルのハイラックスより鋭い印象だ。
6ATはシフトショックも気にならない。パドルシフトはないのでワインディングを攻めたければセンターコンソールのシフトレバーを左に倒して前後させる必要があるが、走りのよさは本物だ。
フロントのダブルウィッシュボーンサスの味付けはもちろん、板バネのリアサスがカッチリと、そしてしなやかに追従してくれるおかげでトラック感はまったくない。操縦性、安定性、乗り心地のよさも相まって、よく出来たSUVを操っているかのよう。このクルマこそ「パジェロ」と呼びたくなる。
全長が5.35mなので駐車する時は気を使うが、Uターンの半径は意外に短い。これは乗ってて楽しいピックアップだ。
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