赤ちゃんが夜泣きやギャン泣きしているとき、クルマに乗せると泣き止むというのは有名なお話。でも本当にそうなのか? と試してみると、やはり赤ちゃんは泣き止む。クルマは赤ちゃんに何をして泣き止ませているのだろうか。現在、子育て最中の筆者が、クルマの不思議な効果について、解説していこう。
文:佐々木 亘/写真:Adobe Stock(トップ画像=Kirill Gorlov@Adobe Stock)
■だれもがこの経験ありませんか?
クルマが走っている最中、赤ちゃんの泣き声を聞くことは珍しい。乗り込む前にどんなに不機嫌でも、チャイルドシートの居心地が悪くて泣いていても、ひとたびクルマが走り出せば、泣きはおさまってしまうのだ。
こうした経験は、多くの人がしていることだろう。赤ちゃんが泣き止む要因を、小児科の先生に聞いてみた。すると、そのカギは振動と音が握っているという。
話を伺った先生曰く、エンジンの奏でる音と、動作時の振動が、赤ちゃんを心地よい眠りに誘ってくれるという。この話に概ね同意したものの、一つ気になることが。
赤ちゃんを乗せているときに思うのは、信号待ちなどの停車中には泣き出すことが多く、クルマが動き出すと泣き止むことが多いということ。単にエンジン音やエンジンの振動が泣き止む要因なら、アイドリング中も泣き止んで良さそうなものなのだが。
実際にどのようなシチュエーションだと泣き止むのか、生まれたばかりの我が子をクルマに乗せて、実験してみた。
■振動は道路由来の方が効く?
乗車中に受ける振動には、様々な種類がある。前述のエンジンによる振動、走行中の路面状況に合わせたタイヤやサスペンションの振動などだ。
このうち、クルマが停車中に発生しないのは、路面の凹凸による振動だ。エンジンの振動だけが、泣き止む要因ならエンジンをかけて駐車場に止まっているときも、泣き止まなければ話がややこしくなる。
また、HEVやEVのように、そもそもエンジンが動かなくても走るクルマでは、走行中も泣き続けることになってしまう。
筆者の息子の場合、エンジンの振動というよりも、路面の影響を受けてタイヤやサスペンションから伝わる振動の方が、泣き止ませるのには効果があった。クルマが動いているときの方が、泣き止む確率は高くなる。
また、同じ走行中でもエンジンが動作しないHEVで、エンジンをかけて走行する場合と、EVモードで走行する場合に分けて実験してみたが、その差はほとんど出なかった。つまり、振動に関しては、路面の凹凸や素材の変化による、微細な振動が、赤ちゃんに心地よさを提供しているということだ。
そうとわかれば、とにかく走りだそう。最低限のお世話グッズを持ちながら、ぐずり泣きに備えておきたい。きっと車内は、癒しのオアシスになるはずだ。
■エンジン音は胎内音?
エンジン音は、赤ちゃんはお母さんのお腹の中で聞いていた音に似ているという。自動車メーカーでは、既に胎内音にエンジン音が近いという研究が進み、泣き止みグッズも登場してきている。
では、音に関してはどれだけ影響があるのかを検証していきたい。通常のガソリン車とPHEVを用意し、どちらも同じ時間、同じタイミングで鳴いている赤ちゃんを乗せることにした。
すると、エンジンOFF状態よりも、アイドリングでもエンジンが付いている方が、泣きにくくなっている。特に、重低音系の野太い完走した音が、赤ちゃんの好みのようだ。ちなみにEVが起こすモーター音でも、ある程度のいい影響はあった。
「うちのクルマはエンジンが無いから」とあきらめることなかれ。走り出し、走行音さえしていれば、赤ちゃんが泣き止む可能性は高い。カーオーディオでオルゴールもいいが、純粋にクルマの音を楽しんでもらうと、赤ちゃんの機嫌は良くなるはず。
これを踏まえて、チャイルドシートの取付位置は、マフラー側の後部座席にしておくと、泣き止む確率は高くなりそうだ。
泣き止ませるコツは、低速でもいいから、クルマを動かし続けること。そしてクルマの音を純粋に楽しむようになると、赤ちゃんも笑顔になるし、末は自動車関連の仕事に就きそうな大人へ育っていきそうだ。
高齢化にともにない、先細りしている世の中だが、クルマという場所を気に入ってもらうことで、もっとコアなファンになってもらえるだろう。
この方法は、新生児期からでも十分に通用する。クルマ好きを気に入ってもらえるように、0歳からの英才教育は既に始まっているのだ。
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