軽二輪アドベンチャーモデルの先駆者、KLE250アネーロ

軽二輪アドベンチャーモデルの先駆者、KLE250アネーロ

 1993年に発売されたKLE250アネーロは、ヨーロッパを中心に人気が高まりつつあったデュアルパーパスやアドベンチャーと呼ばれるカテゴリーのバイクである。現在は高い人気を誇るこのカテゴリーだが、KLE250アネーロは日本でその礎を作った1台であったと言えるだろう。

 
文/後藤秀之 Webikeプラス
 

デュアルパーパス、そしてアドベンチャーの誕生

 デュアルパーパスやアドベンチャーと呼ばれるカテゴリーは、オンでもオフでもそれなりのスピードで走れるスポーツバイクである。このカテゴリーはいわゆるラリー車の系統にあり、現代においてはよりロード寄りのモデルが増えている。デュアルパーパスバイクの始祖とも言えるのはBMWのR80G/Sであり、R100GSパリ・ダカールがアドベンチャーバイクの始祖と言える。そして、ホンダのアフリカツインやトランザルプ、ヤマハのテネレ、スズキのDR、そしてカワサキのKLEシリーズなどが続いた。

 デュアルパーパスやアドベンチャーの定義は少し曖昧で、オンオフ兼用がデュアルパーパス、それに大きめのカウルを備えたのがアドベンチャーと基本形と考えているのだが、メーカーやライダーによってさまざまな認識がある。なので、ここでは一応「大きめのカウルやスクリーンを持つオンオフ兼用バイクがアドベンチャー」という認識を持って話を進めていきたい。

 アドベンチャーバイクはヨーロッパでに人気が特に高く、排気量も大きめの車種が1980年代から発売され日本でもある程度ラインナップされた。たが、日本において主戦場であったのは当時の「中型」であり、特に250ccクラスは激戦区であった。その250ccクラスにヤマハはTDR250、ホンダAX-1、そしてカワサキはKLE250アネーロを投入した。この3車種を同一のカテゴリーとするかどうかも色々と意見があるとは思うが、それぞれのメーカーが考えるアドベンチャーバイクであったことは間違いない。

 

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デュアルパーパスモデルというジャンルを切り拓いたのは、1980年に登場したBMW80G/Sと言って良いだろう。「G/S」とは「ゲレンデ・シュポルト」で、「オフロードスポーツ」的な意味だ。

 

 

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R100GSパリ・ダカールはフレームマウントの大型カウルや、大容量の燃料タンクを備えた元祖アドベンチャーモデルだ。

 

 

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ホンダのXRV750アフリカツインは、パリ・ダカールラリー優勝車のNXR750のレプリカと言えるアドベンチャーバイク。アフリカツイン自体もパリ・ダカールラリーのマラソンクラスに参戦し、優勝を飾っている。

 

 

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1986年から続くトランザルプシリーズは600で登場し、650、700とモデルチェンジのたびに少しずつ排気量をアップ・現在は750が発売されている

 

 

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ラリー専用車DR—ZetaのレプリカモデルとなるDR750Sは、スズキお得意の油冷方式を採用した単気筒SOHC4バルブエンジンを搭載して1988年に登場。1990年にはエンジンのストロークをアップし、DR800Sへとモデルチェンジした。

 

 

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250ccながらフロント21ホイールを持つオフロードの基本スタイルに、フレームマウントの大型カウルを持つアネーロはアドベンチャーバイクのデザインそのもの。

 

 

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兄弟車であるKLE500/400に通じるデザインは、まとまりの良いもの。派手目のカラーリングは、90年代のカワサキ車に多く採用されていた。

 

 
 
 

国内向け250ccクラスデュアルパーパスの台頭

 さて、この3車種を比べてみると色々と面白い。TDR250はダブルクレードル型フレームとスポークホイールを組み合わせた車体に、TZR用の2ストロークの並列2気筒エンジンを搭載。馬力もTZRと同じ45PSあったので、とにかく速いアドベンチャーバイクであった。AX-1は新開発の水冷DOHC単気筒エンジンをダイヤモンドフレームに搭載し、キャストホイールが与えられた足周りを採用。オフロードバイクにオンロード寄りの足回りを組み合わせたバイクであり、このエンジンはその後オフロードモデルのXLディグリーへと受け継がれている。KLE250アネーロはZZR250の4ストローク並列2気筒エンジンをダブルクレードル型フレーム+スポークホイールを持つ足回りを持つ車体に搭載、兄弟車に海外仕様のKLE500(国内向けはKLE400)を持つこともあり、アドベンチャーバイクと呼べる仕上がりになっていた。

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アネーロはGPZ250系統のエンジンとオフロードベースの車体の組み合わせ、アドベンチャースタイルにまとめられている。

 

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当時同系のエンジンを搭載していたのはZZR250とエリミネーター250SE/LX。ZZR250は当時世界最速を誇ったZZR1100のイメージを受け継ぐ、コンパクトスポーツツアラーだ。

 

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AX-1はあきらかにアフリカツインの延長線上にあるデザインを持つ。エンジンは水冷のDOHC単気筒で、キャストホイールを採用していた。

 

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AX-1のエンジンはこのXLディグリーへと受け継がれる。セローのライバルと言えたこのバイクは、オンオフ共に軽快に走れるオフロード寄りのデュアルパーパスと言えた。

 

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TDRは風間深志氏が1987年のファラオラリーで優勝したマシンをベースに開発された、珍しい2ストロークエンジンのアドベンチャーバイクと言える。

 

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大ヒットしたレーサーレプリカ、1KT型TZR250のエンジンは45PSを発生。減速比などは変更されているが、基本的にそのままTDRへと流用されている。

 

本格的250ccクラスアドベンチャーモデルだったアネーロ

 KLE250アネーロのエンジンはGPZ250Rから引き継がれた水冷4ストローク並列2気筒248ccで、スペックは最高出力35PS/11000rpm、最大トルク2.4kg-m/10000rpm。発売が1993年なので、直接のベースは先にも触れた通りZZR250かエリミネーター250SE/LXとなる。この系統のエンジンはGPX250で最高出力45PS/13000rpm。最大トルク2.5kg-m/11000rpmを発揮していたが、ZZR250には最高出力35PS/12000rpm、最大トルク2.2kg-m/9500rpmというチューニングで搭載されていた。アネーロとZZR250のエンジンスペックを比べると、最高出力の発生回転数がアネーロの方が1000rpm低く、最大トルクは1500rpm上で0.2kg-m高い数値を発生する。つまり、スペック上は若干ではあるがアネーロの方が低回転寄りと言えるのだが、エンジンは基本ロードモデル用であったと言えるだろう。

 車体はダブルクレードル型フレームに、フロント21インチ、リア17インチのスポークホイールを組み合わせ、サスペンションはストロークの大きなオフロード寄りのセッティングがされていた。最低地上高は190mmとオフロードバイクと言うには低すぎ、乾燥重量は146kgとオフロードバイクとしては重すぎる。重量がもう少し軽ければ、オフロードでの扱いが良かったであろうことは想像がつくが、ダートから舗装路までマルチに走れたことは間違いなく、アドベンチャーの名に恥じないバイクに仕上げられていた。

 

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オフロード寄りのサスペンションではあるが、オンロードでも軽快な走行性能を見せるアネーロ。オフロードでは少々高回転型のエンジンと車重が気になるが、デュアルパーパスという名に恥じない性能と言える。

 

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ポジションはオフロードバイクそのものと言え、上半身は直立した感じになる。ステップ位置は体の中心に近い位置にあり、スタンディングなどにも向いている。

 

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シート高は805mmとオフローダーとしては低めの設定で、身長165cm、体重50kgのライダーが両足をつくと、かかとが浮くくらいの感じとなる。

 

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この時代のカワサキのデザインの流れを汲むフロントカウルのデザイン。ライトのサイドにはエアダクトが設けられている。

 

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幅が広く、ブレース付きのオフロードバイク用のハンドルを装備。上半身がしっかりと起き、自由度の高いポジションを生む。

 

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メーターは大きめのスピードメーターを中心に、少し小ぶりなタコメーターを組み合わせた2眼タイプ。インジケーターは大きめの物がメーター外に取り付けられている。

 

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K-CASのダクトがカウルの内側を通る。シリンダーヘッド付近に、フレッシュエアを導いている。

 

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燃料タンクは12Lと250ccクラスとしては充分な要領だが、アドベンチャーバイクとしては物足りないかもしれない。

 

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シートはいわゆるオフロードバイクのもので、フラットなデザインでポジションの自由度が高い。リアに「KLE」のロゴが入る。

 

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標準装備されるリアキャリアはアドベンチャーバイクとしての資質を感じさせる部分であり、デザイン的にもまとまりが良い。

 

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GPZ250系の水冷並列2気筒エンジンは35P仕様。車重の重さの一因はこのエンジンだが、オンロードでの快適な走行性能はこのエンジンあってのことである。

 

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マフラーはオフロードバイク的なアップタイプだが、エキゾーストパイプはエンジンの下側を通っているため最低地上高は低めだ。

 

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フロントホイールは21インチのスポークタイプ。ブレーキは2ポットキャリパーと280mm径のディスクローターを組み合わせる。

 

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