ホンダを世界一にした、世界初の直列4気筒エンジンを搭載した量産バイク「ドリームCB750FOUR」

ホンダを世界一にした、世界初の直列4気筒エンジンを搭載した量産バイク「ドリームCB750FOUR」

取材協力:バイク王つくば絶版車館

 1969年にホンダから登場した「ドリームCB750FOUR」は、量産バイクとして初めてのSOHC直列4気筒エンジンを搭載し、最高速度200km/h、ゼロヨンタイム12.4秒で世界最速の座を手に入れた。

文/後藤秀之

 
 
 

時代を変えた世界最速の4気筒バイク

 「CB」という社名がホンダの歴史に刻まれたのは、1959年に発売された125ccの「ベンリイCB92スーパースポーツ」である。その後「ドリームCB72スーパースポーツ」や「ドリームCB450」というドリームシリーズによってスポーツバイクの名称として定着、そのドリームシリーズのフラッグシップとして1969年に発売されたのが4ストロークSOHC4気筒エンジンを搭載した「ドリームCB750FOUR」が発売された。

 「ドリームCB750FOUR」の新車価格は38万5000円と、今のバイク価格から考えると安く思えてしまう。しかし、大卒の初任給が3万円前後の時代なので、現在の貨幣価値で考えると350万円前後になる超高級バイクであった。

 「ドリームCB750FOUR」登場以前「速いバイク」は海外製であったが、国産では1968年に発表された2ストロークの3気筒エンジンを搭載したマッハIIIことカワサキの500SSが最高速度200km/h、ゼロヨンタイム12.4秒で世界最速を名乗った。今はもう廃れてしまったが、大型バイクを表す「ナナハン」という言葉の語源となったのが「ドリームCB750FOUR」であり、その性能によって世界中でヒットし、それまで最速と言われた英国車に引導を渡したのである。

 

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1968年に発表されたカワサキの「500SS」は、2ストロークエンジンの強烈なパワーで世界最速となったが、いわゆる「直線番長」であった。

 

 

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1969年に登場した「ドリームCB750FOUR」は、67PSのSOHC直列4気筒エンジンやディスクブレーキを備えた車体で名実共に世界最速となった。

 

 

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4本出しのエキゾーストシステムは迫力のあるエキゾーストノートを奏でる。当時としては大きいと言われた車体も、今見ればごく普通と言える。

 

 「ドリームCB750FOUR」の性能は最高速度200km/h、ゼロヨンタイム12.4秒と、500SSと同じであったが、より安定した車体や二輪車としては世界初となる油圧ディスクブレーキを備えるなど完成度においては500SSの上を行っていた。カワサキは世界最速の座を取り戻すべく、1971年に500SSのボア・ストロークを拡大した750ccエンジンを積むH2こと「750SS」を発表した。「750SS」は最高速度203km/h、ゼロヨンタイム12秒フラットで世界最速の称号を取り戻すことに成功した。

 

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「ドリームCB750FOUR」に対抗してカワサキは排気量を750ccにアップした「750SS」を投入。最速の座を取り戻すも、環境問題などによって短命に終わる。

 

 そして、1972年にDOHC4気筒の900ccエンジンを搭載したZ1こと「900Super4」を発表。その最高速度 209km/h、ゼロヨンタイム12秒で、同じ4ストローク4気筒エンジンを積む「ドリームCB750Four」を完璧に打ち倒した。しかし、1973年に日本国内で販売できるバイクの排気量が750ccまでという自主規制が始まったためZ1はそのまま国内販売をすることができず、ボア・ストロークを変更して750ccとしたZ2こと「750RS」が国内で発売されることになった。

 

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満を持してカワサキが投入した900ccのDOHC4気筒エンジンを搭載したZ1こと「900Super4」だが、自主規制によって国内ではスケールダウンした「750RS」として発売された。

 

 「ドリームCB750FOUR」はコムスター・ホイールを装備した「CB750FOUR-II」や、オートマチックトランスミッションを装備した「EARA」といったバリエーションを加えつつ1978年のK8まで生産され、1979年に後継モデルとなるDOHCエンジンを搭載した「CB750F」が登場した。

 

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レースで使われていたコムスター・ホイールや、よりモダンなデザインを与えられた「CB750FOUR-II」は、1975年に発売された。

 

 

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2輪車で初のホンダマチック(ホンダ独自の機構を持った自社製のオートマチックミッション)機構を備えた「EARA」も、1975年に発売された。

 

 
 
 

全身に先進技術を詰め込んだホンダの意欲作

 1960年代後半までバイクのエンジンは単気筒か2気筒であり、バルブ方式もOHVが主流であった。トライアンフはエドワード・ターナーの手による1968年に3気筒750ccの「トライデント」を、BSAも同じエンジンを搭載した「ロケット3」を発表していた。しかし、その翌年に発売された「ドリームCB750FOUR」は量産バイクとして世界初となるSOHCの4気筒750ccエンジンを搭載し、世界最速の座を英国車から奪い取った。

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ハンドルはかなり高く、上半身はほぼ直立したような状態になる。ステップ位置は体軸よりも少し前にあり、膝の曲がりは楽な設定。

 

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身長171cm、体重65kgのライダーが跨った状態。シートにかなり厚みがあり、両足を着くとかかとはかなり浮く感じになる。

 

 「ドリームCB750FOUR」の開発が始まったのは1967年であり、そのSOHCの4気筒750ccエンジンは、4キャブレター、4本マフラーを装備し、軽量で剛性の高い独特のダウンチューブ式ヘッド構造のダブルクレードル型フレームに搭載した。67PS/8000rpmという当時としては高回転・高出力なエンジンのクランクシャフト軸受は高い精度が要求されたため、剛性が高く精度の一体構造のクランクシャフトとF1の技術を用いた5点支持の高速プレーンベアリングを採用することで高い耐久性と静粛性を実現した。また、1969〜1970年に製造された初期型「K0」の最初期モデルでは、クランクケースなとが砂型鋳造で造られていた。

 

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量産二輪車として初めて採用されたSOHC直列4気筒エンジンは、736ccの排気量から67PS/8000rpmという当時としては非常に高い最高出力を発生した。

 

 

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K0の最初期モデルはクランクケースなどが砂型鋳造で製造されていたが、すぐに金型鋳造へと変更された。

 

 その他にも、エンジン本体のコンパクト・軽量化し、常に適正粘度のオイルを各軸受や運動部分に潤滑させるために、オイルの潤滑方式には冷却効果のよいドライサンプを採用。バイクとしては初となる無接点励磁式交流発電機や、プライマリーキックスターター方式と併用のセルフスターター、ホンダ独自のセンタードライブ方式のプライマリーチェーンなど当時として考えうるあらゆる技術が投入されていたと言って良いだろう。

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シリンダーヘッドから突き出した4本のエキゾーストパイプはメッキ仕上げとされ、美しいエンジン周りを生み出す。

 

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オイルの循環方式はドライサンプとなっており、右側のサイドカバーにはオイルのフィラーキャップが取り付けられる。

 

 車体は先にも触れたダウンチューブ式ヘッド構造のダブルクレードル型フレームを中心に、テレスコピックタイプのフロントフォークと角断面タイプのスイングアーム+ツインショックのサスペンションを組み合わせる。ホイールサイズはフロント19インチ、リア17インチの組み合わせで、フロントにはバイクとして世界初となる油圧式のディスクブレーキも装備された。

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ヘッドライトケースとステーはタンクと同色にペイントされ、高級感のある仕上がりになっている。

 

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メーターはスピードとタコの二眼タイプで、インジケーターランプはメーター内に収められる。8000rpmからレッドゾーンの始まるタコメーターは、高性能の証とも言えた。

 

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左側のスイッチボックスにはウインカーとホーンのスイッチが取り付けられ、現代のバイクと比べるとシンプルなデザイン。

 

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右側にはキルスイッチとヘッドライトのオンオフと切り替えを行なうスイッチ、ディスクブレーキのマスターシリンダーなどが装着される。

 

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19Lの容量を持つフューエルタンクには、ストライプとエンブレムバッチが取り付けられる。

 

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しっかりとした厚みがあり、快適な乗り心地を生むシートを装備し、タンデムや長距離ライディングにも対応。

 

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メッキ仕立てのリアフェンダーに、ナンバーホルダーと一体になったテールライトが取り付けられる。

 

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4本出しのマフラーは「ナナハン」を象徴するパーツと言えるだろう。その中でもK0とK1に装備された「HM300」マフラーは特に貴重となる。

 

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フロントはテレスコピックタイプのフロントフォークに、19インチのスポークホイールを組み合わせる。

 

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フロントブレーキは1ポットキャリパー+ソリッドディスクの油圧式ディスクブレーキを、量産二輪車として初めて装着した

 

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リアホイールサイズは17インチで、サスペンションは角断面タイプのスイングアームとツインショックを装備する。

 

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リアブレーキはドラムタイプを採用。1969年当時、CB以外のバイクは前後ドラムブレーキであった。

 

 発売当時「大きすぎる」と言われた車体も現代においてはコンバクトに感じ、67PSという最高出力もごく普通の値でしかない。しかし、この「ドリームCB750FOUR」こそが日本製のバイクを世界一にした最初の1台であり、その後に続く日本製バイクの世界制覇の礎となったのである。

 
 

ドリームCB750FOUR主要諸元(1969)

・全長×全幅×全高:2160×885×1120mm

・ホイールベース:1455mm
・車両重量:237kg

・エンジン:空冷4ストロークSOHC2バルブ直列4気筒736cc

・最高出力:67PS/8000rpm

・最大トルク:6.1kgm/7000rpm
・変速機:5段リターン

・燃料タンク容量:19L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム

・タイヤ:F=2.76-19、R=3.25-17
・価格:38万5000円(当時価格)

撮影協力:バイク王つくば絶版車館

 

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