MC22型「CBR250RR」は、ホンダが持てる技術を詰め込んだ4ストローク250ccレプリカの完成形だ

MC22型「CBR250RR」は、ホンダが持てる技術を詰め込んだ4ストローク250ccレプリカの完成形だ

 250cc4気筒エンジンを搭載したレーサーレプリカは、1980年代の熱狂的なバイクブームの中で生み出され、各メーカーが最新の技術を投入した。約8年も製造が続けられたMC22型「CBR250RR」は、ホンダの4ストローク250ccレプリカの完成形と言えるだろう。

 
文/後藤秀之
 

ホンダの4ストローク250cc4気筒「CBR」シリーズ

 1980年台に巻き起こったバイクブームによって、250〜400ccのバイクを中心に飛躍的な進化を遂げた。このクラスが異常と言えるまでに進化したのは免許制度の関係であり、いわゆる当時の「中型免許」で運転できたからである。特に車検の無い250ccクラスには2ストローク、4ストローク共に各メーカーがその威信をかけて毎年のように新型車を投入するというある種の戦争状態にあった。

 4ストローク4気筒エンジンが最初に250ccクラスに投入されたのは、1983年に登場した「GS250FW」である。GS250FWが搭載していたのは水冷DOHC2バルブ4気筒エンジンで、最高出力は36PSであった。1985年に登場したヤマハの「FZ250フェーザー」は水冷DOHC4バルブ4気筒エンジンを搭載し、このエンジンは45PS/14500rpmという最高出力を発生。

 衝撃とも言えたフェーザーが登場した翌年の1986年に、ホンダは水冷DOHC4バルブ4気筒エンジンを搭載したMC14型「CBR250Four」をデビューさせる。搭載されたMC14E型エンジンのスペックは最高出力45PS/14500rpm、最大トルク2.5kgm/10500rpmとフェーザーとほぼ同等ながら、カムギアトレーン方式を採用するなど当時の最先端技術が投入されていた。車体においてはスチールフレームのフェーザーに対してアルミニウム製のツインチューブダイヤモンド式を採用、ホイールサイズも当時さ異様し始められたばかりであった17インチを採用するなどしており、新車価格54万9000円とフェーザーよりも5万円高価だった。

 

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初代モデルとなるMC14型「CBR250Four」は、45PSを発揮するカムギアトレーンを採用したDOHC4バルブ直列4気筒エンジンをアルミフレームに搭載した。

 

 このCBRの登場に対してヤマハは、1986年12月にデュアルヘッドライトやフルカウル、17インチホイールなどを装備した「FZR250」を投入。ホンダは1987年に当時ホンダがCBR系に用いていたエアロデザインを纏った、ハリケーンのペットネームを持つMC17型「CBR250R」をデビューさせた。フレームやエンジンなどは基本的に「CBR250Four」のものであったが、キャブレターの大径化や大容量のステンレス製エキゾーストシステム、リアブレーキのディスク化などの変更によって戦闘力を高めた。

 

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MC14型をベースにエアロデザインのフルカウルを装備したMC17型「CBR250R」には、「ハリケーン」というペットネームが与えられた。

 

 しかし、この「CBR250Rハリケーン」も、翌1988年にはMC19型「CBR250R」へとフルモデルチェンジする。エンジンはMC14E型をベースとしつつ、ライバルFZRと同じデュアルヘッドライトを採用し、ボディのデザインはいわゆるレーサーレプリカスタイルへと大きく改められた。フレームも異形5画目の字断面アルミツインチューブとなり、フロントブレーキディスクの大径化やリアタイヤの幅広化などの変更も行なわれた。

 

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MC19型「CBR250R」は新型フレームを採用し、兄弟車であるCBR400RRに倣ったデュアルヘッドライトのレーサーレプリカスタイルとなる。

 

 1989年にはヤマハからアルミフレームを採用した「FZR250R」が、スズキからも「GSX-R250R」、カワサキからも「ZXR250」が発売されて4ストローク250ccレーサーレプリカブームは最高潮を迎える。そして、1990年にホンダはMC19型をフルモデルチェンジし、MC22型「CBR250RR」を発売した。

 

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MC22型「CBR250RR」はよりマスを集中させた新型フレームを採用し、フロントブレーキをダブルディスクにするなどフルスペックレプリカとして進化。

 

 

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アルミフレームにアルミスイングアームを組み合わせ、フルカウルを纏った車体はコスト度外視と言っても良いだろう。

 

 
 
 

MC14型系エンジンを、完全新設計の車体に搭載したMC22型「CBR250RR

 MC14型エンジン搭載モデルとしたは4代目となるMC22型「CBR250RR」は、運転時の人間とマシンの一体感を高めることで操縦する楽しさを追求した「高次元ヒューマン・フィッティング」を開発のキーワードとして車体関係は全て新設計されている。

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車体はコンパクトで軽く、ハンドル位置もNSRなどよりは高めの設定でレーサーレプリカとしては楽なポジション。

 

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身長171cm、体重65kgのライダーが跨った状態。両足がしっかりかかとまど着き、車体の軽さもあった取り回し性にも優れる。

 

 MC22型のデザインはデュアルタイプのヘッドライトを備え、シートはシングルシート風に仕立てられたレーサーレプリカ然としたものだが、ユーティリティの面での進化も見逃せない。リアシートはヒンジ式で開くようになっており、その下に5.5Lのユーティリティスペースを持ち、荷掛けフック兼用の収納式ピリオンステップなど日常的な使い勝手にも気が使われている。

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耐久レーサーをイメージさせるデュアルヘッドライトを採用し、スポーティに仕立てられたフェイスデザイン。

 

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メーターは20000rpmまで刻まれたタコメーターをセンターに配した三眼タイプで、スポンジマウントすることでレーシーな雰囲気を持つ。

 

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必要なスイッチ類がコンパクトにまとめられた左のスイッチボックス。クラッチはケーブル式となっている。

 

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右側はスイッチボックスとスロットルホルダーが別体になっており、レーシーなイメージを醸し出す。

 

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ニーグリップ部をえぐり、レーサーレプリカらしいデザインを採用したフューエルタンク。容量は13Lと十分だ

 

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シートはレーサーレプリカらしい薄くコンパクトなデザインで、タンデムシートとの間には大きな段差がある。

 

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タンデムシートはヒンジで開くことができ、シート下にはユーティリティスペースが設けられる。丸型の二灯式テールライトも特徴的だ。

 

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ステップ周りはアルミが主に使用されているが、ヒールプレートは樹脂製とすることでよりレーシーな演出がされている。

 

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シートカウルのサイドには「PUSH」と書かれたレバーが取り付けられている。

 

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このレバーを操作することで、内部に折りたたまれているピリオンステップが出てくる。

 

 エンジンはMC14E型をベースとしつつ、エアクリーナーからキャブレター、燃焼室に至るまでの吸気通路をほぼ一直線状に配し、新設計されたポート形状と合わせて高い充填効率を実現。コンロッドやクランク周りの剛性アップなど各部の見直しを行なうことで、中・低速域でのレスポンスを向上させている。また、フロントカウル前面から外気を直接導入するダイレクト・エアインテークを採用し、燃焼のための新気導入を促進、効率化している。このエンジンは当初最高出力45PS/15000rpm、最大トルク2.5kgm/12000rpmを発揮していたが、1994年のモデルチェンジで自主規制に合わせた40PS/14500rpm、最大トルク2.4kgm/11500rpmへと変更されている。このMC14E型系のエンジンは、ネイキッドモデルの「ジェイド」や「ホーネット」にも使われ、2007年まで製造されている。

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アンダーカウルの下に収められるエンジンは、初代モデルからリファインを重ねつつ使用されているMC14E型。最高出力は45PS/15000rpmとなる。

 

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エキゾーストシステムは別体式のサイレンサーを備えたレーシーなデザインで、甲高いエキゾーストノートを奏でる。

 

 フレームは重心を低く設定し、慣性マスの集中を徹底追求した新設計のアルミ製LCG(LOW CENTER OF GRAVITY=低重心)ツインチューブ・フレームタイプとし、スイングアームには高い剛性を確保しながら排気管を効率よくレイアウトできる新形状のガルアームを採用している。ホイールはバネした重量の軽減を図るために軽量な6本スポークタイプアルミホイールとされ、フロント11/70-17、リア140/60-17という幅広のラジアルタイヤが組み合わされる。また、ブレーキはフロントをダブルディスクとすることで、ストッピングパワーも強化されている。

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高い強度を持つフロントフォークと、軽量な6スポークタイプのアルミキャストホイールが与えられる。

 

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ブレーキはダブルディスクタイプとされ、高いコントーロール性とストッピングパワーを併せ持つ。

 

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スイングアームは軽量かつ高剛性のアルミ製で、右側は大きく湾曲してエキゾーストシステムの自由度を上げたガルアームとなる。

 

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リアブレーキはシングルポッドキャリパーを備えたシングルディスクタイプ。ホイールはフロント同様の6スポークアルミキャストだ。

 

 MC14型から毎年フルモデルチェンジを繰り返してきたが、このMC22型はマイナーチェンジのみで2000年まで製造が続けられた。これはネイキッドブームによってレーサーレプリカの開発がそれまでのように進められなくなったものの、一定のニーズはあったと考えるべきだろう。約10年という長い間製造が続けられたMC22型CBR250RRは、ホンダの4ストローク技術が詰め込まれた歴史に残る1台と言えるだろう。このMC22型の生産中止後、250ccクラスからCBRの名前は長く消えていたが、2011年には単気筒エンジンを搭載したMC41型「CBR250R」が、2017年には「二ダボ」の愛称で人気を博す2気筒エンジンを搭載したMC51型「CBR250RR」が登場し、「CBR」の名は、再び250ccクラスをリードする存在となっている。

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