一昔前はほぼ国内ラインアップにはなかったのに、最近急増してきたのが排気量155ccのバイク。250ccと125ccの中間的なポジションに位置し、スクーターからミッション車まで、最近、各メーカーから様々なモデルが発売されています。
では、一体、この155ccのバイクにはどんなモデルが多く、どういった魅力があるのでしょうか? また、車格的には125ccに近いモデルも多いなか、150ccバイクならではのメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
文/平塚直樹
アジアを中心に人気のグローバルモデル
20年ほど前であれば、日本でほぼ見かけなかったのが排気量155ccのバイク。ところが、実はアジア全体で見るとかなりの人気なのです。特に、インドネシアやタイなど、バイクの販売台数が近年著しく伸びている国々では一般的な排気量であるといえ、日本のバイクメーカーもさまざまなモデルを投入しています。
そして、日本でもここ数年、グローバルモデルとしてそれらバイクを市場投入。現在のように、ラインアップも充実してきているのです。
では、具体的にどんなモデルがあるのでしょうか? 現在(2025年8月1日時点)、国内の各メーカーが販売している155ccバイクは以下の通りです。
【ホンダ】
・PCX160(排気量156cc)
・ADV160(排気量156cc)
【ヤマハ】
・NMAX155(排気量155cc)
・Xフォース(排気量155cc)
・トリシティ155(排気量155cc)
・YZF-R15(排気量155cc)
【スズキ】
・ジクサー150(排気量154cc)
ヤマハの「YZF-R15」、スズキの「ジクサー150」の2モデルを除けば、ほとんどがスクーターモデルですね。特に、ヤマハでは、前2輪+後1輪の「トリシティ155」もラインナップするなど、豊富な車種を揃えています。
また、例えば、ホンダのPCX160には「PCX」、ヤマハのNMAX155には「NMAX」といった125ccの兄弟車もあるなどで、シリーズ化していることもポイントのひとつだといえます。
125ccとは運転できる免許が異なる
これら155ccクラスのバイクを運転できる免許は、ミッション車のYZF-R15やジクサー150では普通二輪免許以上が必要ですが、それ以外はスクーターモデルなので、AT限定普通二輪免許でも運転できます。
一方、125ccの原付二種バイクでは、小型限定普通二輪免許、スクーターモデルならAT小型限定普通二輪免許を持っていれば運転が可能。免許取得のハードルでいえば、155ccのバイクは原付二種よりもやや高いといえます。
高速道路を使ったツーリングも可能
でも、実は、155ccクラスには、原付二種にないメリットもたくさんあります。以下に、代表的な例をいくつか紹介しましょう。
まず、155ccのバイクは、法律上、250ccバイクなどと同じ軽二輪に該当するため、高速道路や自動車専用道路も走行できます。比較的短い時間で遠距離移動が可能なため、遠方へのツーリングにも使いやすいというメリットがあります。一方、125ccバイクは原付二種となるため、高速道路などの走行は不可。遠出をする場合も、一般道を使うしかありません。
また、125ccのバイクでは、一般道でも走れない場所があります。例えば、「125cc以下通行禁止」の標識があるバイパスなどの道路です。原付二種のライダーが、こうした規制道路にうっかり入ってしまい、違反キップを切られたというケースもよく耳にします。
その点、155ccのモデルであれば、そんな心配は無用。すべてのバイクが通行できない「二輪車通行禁止」の道路でない限り、大手を振って走ることができるのです。
街乗りでは125cc並みに軽快
モデルにもよりますが、155ccバイクには、125ccのバイクと車格が近いかほぼ同じ機種も多く、そうしたモデルの場合、市街地などでの軽快さは125cc並みだといえます。
例えば、ヤマハ製スクーターモデルの兄弟車、155ccのNMAX155と125ccのNMAX。
ボディサイズはいずれも全長1935mm×全幅740mm×全高1200mm。また、シート高も770mmと同じなので、車格や足つき性はほぼ同等といえるでしょう。
車両重量については、NMAXの132kgに対し、NMAX155は135kgなので3kgほど重くなっています。ただし、この程度の差であれば、ほぼ同じくらいの軽さといってもいいでしょう。
つまり、155ccのバイクでも、125ccの原付二種バイクと同じくらい通勤・通学や買い物などの日常使いに便利だといえます。また、駐車場や狭い路地などでの取り回しも楽で、幅広い体格のライダーが扱いやすいバイクであることは間違いありません。
そう考えると、155ccバイクは、市街地で125ccのバイクとほぼ同じ感覚で乗ることができる車体を持つといえるでしょう。
パワーはやや上で燃費性能も負けない
エンジンのパワー的には、155ccモデルの方が若干ながら余裕ある傾向だといえます。例えば、やはりヤマハのNMAX155とNMAXを比較すると以下の通りです。
【NMAX155のエンジン】
・155cc・水冷4ストローク単気筒
・最高出力11kW(15PS)/8000rpm
・最大トルク14N・m(1.4kgf・m)/6500rpm
【NMAXのエンジン】
・124cc・水冷4ストローク単気筒
・最高出力9.0kW(12PS)/8000rpm
・最大トルク11N・m(1.1kgf・m)/6000rpm
これら2モデルの場合でいえば、スペック上の数値にさほど差はありません。でも、多少ですが最高出力、最大トルクともにNMAX155の方が上。これらにより、信号待ちからの発進などでは、より交通の流れに乗りやすいことがうかがえます。
ちなみに、燃費性能もほぼ互角。この点も、ヤマハのNMAX155とNMAXを例に比較すると、以下の通りになります。
・NMAX155の燃費性能:WMTCモード値46.4km/L
・NMAXの燃費性能:WMTCモード値49.1km/L
カタログ数値的には、125ccのNMAXの方が多少いいですが、この程度の差であれば、実燃費の差も少ないはずです。燃料タンク容量も、両モデルともに7.1Lを確保しているため、同じ市街地などを走るのであれば、1回の満タンで走行できる航続距離にも差は出にくいと思われます。
250ccモデルよりも価格が安い
155ccバイクは、同じ軽二輪の250ccバイクよりも、本体価格がかなり安いことも魅力です。
例えば、ホンダのモデルで価格(税込)を比較すると、250ccスクーター「フォルツァ」が78万1000円なのに対し、PCX160は46万2000円で、31.9万円も安い設定となっています。
ちなみに、125ccの原付二種モデルであるPCXの価格(税込)は37万9500円。PCX160との価格差は8.25万円です。
安さの点でいえば、やはり原付二種バイクの方に軍配が上がりますが、同じ軽二輪であれば、250ccバイクよりも断然安く買えるのが155ccバイク。価格帯的には、比較的125ccクラスに近い予算で購入することができるカテゴリーといえるでしょう。
車検がなく税金も比較的安い
維持費の面でも、155ccのバイクは、原付二種と比べて、やや高い傾向こそありますが、さほど大きな差はないといえるでしょう。
まず、車検。155ccバイクは軽二輪ですが、125ccの原付二種と同様で、車検を受ける必要はありません。この点は、バイクを維持するための費用が安くすむという意味で、かなり大きなメリットだといえるでしょう。
一方、税金の面ではどうでしょう。
まず、毎年支払う軽自動車税(種別割) は、以下の通りです。
・155cc(軽二輪):3600円/年
・125cc(原付二種):2400円/年
155ccバイクは、原付二種より1200円/年ほど高くなっていますが、250ccを超える小型二輪の6000円/年に比べれば約半分。かなりリーズナブルな方だといえます。
また、自動車重量税 については、以下の通りです。
・155cc(軽二輪):4900円(初回登録時のみ)
・125cc(原付二種):なし
155ccバイクは、初回登録時にのみ4900円が必要で、125ccバイクは課税なし。
ただし、この点も、車検がある250cc超の小型二輪に比べると、維持費の面ではかなりリーズナブルです。小型二輪では、車検毎に自動車重量税が課税され、初回登録時から最初の3年間が5700円、以後2年毎に3800円(初年度登録から13年未満の場合)となります。そう考えると、車検のない155ccバイクは、初回のみの支払いで済む点もメリットのひとつだといえます。
保険料は原付二種の方が安くなる
次に保険。まず、自賠責保険 の料金は、以下の通りです。
・155cc(軽二輪):7100円/1年
・125cc(原付二種):6910円/1年
*いずれも離島以外の地域(沖縄県を除く)
















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