誕生から40周年! カワサキを象徴する「Ninja」の原点「GPZ900R Ninja」

誕生から40周年!  カワサキを象徴する「Ninja」の原点「GPZ900R Ninja」

 

取材協力:レッドバロン

 

 カワサキのスポーツバイクを表すペットネームとして定着している「Ninja」は、1984年に発売されたGPZ900Rから始まった。2024年はこの初代「Ninja」の誕生からちょうど40年に当たるのだが、そのアニバーサリーイヤーにもう一度「GPZ900R Ninja」というバイクを振り返ってみたい。

 
文/後藤秀之 Webikeプラス
 

Ninja人気に火をつけた、映画「トップガン」

 「Ninja」というペットネームは「将軍 SHŌGUN」というドラマの影響で、日本文化ブームが来ていたアメリカ向けに付けられたものだ。この「Ninja」というバイクを日本でも一躍有名にしたのが1986年に公開された映画「トップガン」であり、映画の中でトム・クルーズ演じるマーヴェリックが乗り回す赤黒のNinjaは、それまでバイクにまったく興味がなかった人たちに大型バイクの免許を取らせる程の影響力を持ちNinjaブームを巻き起こした。2022年に公開された続編「トップガン マーヴェリック」においても、冒頭でマーヴェリックが飛行場までいい感じにヤレたNinjaをかっ飛ばす姿に、また欲しくなったという人もいるはずだ。

 

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カワサキのスタンダードバイクとして、約20年間製造が続けられたGPZ900R Ninja。その存在が世間に大きく知られるようになったのは、映画「トップガン」で主人公マーヴェリックの愛車として登場したことだろう。ちなみに映画の中のマーヴェリックは、Ninjaを40年近く維持している。

 

 
 
 

カワサキの新たなフラッグシップは、新基軸満載だった

 GPZ900R以前のカワサキのフラッグシップモデルは、1983年に登場した空冷2バルブ並列4気筒DOHCエンジンを搭載するGPz1100であった。1979年に登場した水冷2バルブ並列6気筒DOHCエンジンを搭載したZ1300もあったが、こちらはシャフトドライブを採用したツアラー的要素の強いモデルであり、Z1直系のGPz1100がカワサキのトップスポーツモデルであった。GPz1100は先進的なDFI(デジタルフューエルインジェクション)システムを搭載し、最高出力120PS/8500rpm、最大トルク10.2kg-m/8000rpmというスペックを誇っていた。

 

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カワサキの元祖900ccエンジン搭載車、Z1こと900Super Four。空冷DOHC4気筒エンジンを搭載し発売当時世界最速を誇ったZ1は、誕生から50年を超えた今もかなりの数の個体が実動している名車中の名車だ。

 

 

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カワサキのフラッグシップモデルとしては最後の空冷エンジン搭載車となるGPz1100。最高出力は120PS、最高速度240km/hという性能を誇り、Ninjaへとつながるカウルのデザインは80年代のカワサキ車のアイデンティティとも言えた。

 

 1972年にZ1が登場してから空冷2バルブ並列4気筒DOHCエンジンを熟成してきたカワサキだったが、10年を超えた頃新たなフラッグシップエンジンの開発が始まっていた。この新しいフラッグシップエンジンには様々なエンジン形式を検討したが、最初に試作されたのは空冷2バルブ並列6気筒DOHCエンジンだった。開発コード910としてカワサキファンには知られているこの試作車だったが、スムーズすぎるという理由でお蔵入りとなった。開発陣は原点とも言える並列4気筒での開発に舵を切り、排気量はカワサキのマジックナンバーである900ccと決定された。900ccの排気量で空冷1100ccのGPz1100を超える性能を実現するために選択されたのは、4バルブ化と水冷化であった。より高回転まで回すことになるため大きな振動の発生することとなったが、これを当時はまだ珍しかった2次バランサーを採用することでクリア。そのほかにもサイドカムチェーン方式を採用するなど意欲的な開発が行なわれ、その結果GPZ900Rのエンジンは908ccの排気量ながら最高出力115PS/9500rpm、最大トルク8.7kg-m/8500rpmというスペックで世に送り出された。

 

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エンジンから車体までまったく新しく作られたGPZ900R Ninjaは、Z1の再来と言って良いだろう。900ccの排気量を持つ4バルブの水冷DOHC4気筒エンジンは115PSを発揮し、16インチホイールやダイヤモンドフレームなど当時最新の技術が惜しみなく投入された。

 

 

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GPZ900R Ninjaのエンジンはサイドカムチェーン方式を採用。このエンジンは30年以上進化を続け、メッキシリンダーやフューエルインジェクションなどを採用し、ZRX1200ダエグに搭載されたものが最終形態となる。

 

 

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フレームはエンジンをストレスメンバーとして使う、ダイヤモンドフレーム。ダウンチューブの無いスチール製のメインフレームにアルミ製のシートチューブを組み合わせている。

 

 このエンジンが搭載されたのはダウンチューブの無いスチール製のダイヤモンドフレームで、サブフレームはアルミ製が採用された。ホイールサイズはフロント16インチ、リア18インチで、リアサスペンションはユニトラックサスペンションが採用されていた。フロントサスペンションにはこの頃各メーカーが力を入れて開発していたアンチノーズダイブシステムである、「AVDS(オートマチック バリアブル ダンピング システム)」が採用されていた。ボディデザインはGPz1100の延長線上にあったが、空力性能の開発に力を入れてカワサキ初のフルカウルが採用された。このフルカウルは効果絶大で、当時としては公道車世界最速となる250km/hという最高速度を実現している。

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ポジションは軽く前傾した感じで、ステップ位置も適切で意外なほどコンパクトに感じる。アップハンドルに交換された個体が多いが、まずはノーマルのポジションを知るべきだ。

 

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シート高は780mmで、身長170cm、体重60kgという体型であれば両足がかかとまでしっかり接地する。

 

 

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今となっては古さを感じさせるフロント16インチだが、ハンドリングは素直で乗りやすいという印象。フロントの1ポットブレーキキャリパーを使用したダブルディスクは、現在のレベルから考えるとプアな装備だが思っているよりもしっかりと利く。

 

GPZ900Rとして、独自の進化を遂げていく

 カワサキの新しいスポーツバイクのスタンダードを目指して開発されたGPZ900Rだが、2年後の1986年には新しいデザインのフレームに997ccまで排気量アップされたGPZ1000RXが登場する。このGPZ1000RXは1988年にZX-10に、そして1990年にはZZ-R1100へとフルモデルチェンジしていくのだが、GPZ900Rはそれらのモデルと併売が続けられた。つまりそのまま年次改良を重ねてGPZ900Rとして進化していくラインと、カワサキのフラッグシップとしてフルモデルチェンジするラインというふたつのラインに分かれたのである。ちなみに国内向けにリリースされたスケールダウン版のGPZ750Rは、1984年から1986年の間だけ販売されてラインナップから消えている。

 ベーシックなスポーツモデルという立ち場で小変更を重ねていったGPZ900R。撮影車は1988年式のA5で、オリジナルデザインを残したフロント16インチモデルだ。19年という長い間生産が続けられたGPZ900R Ninjaは中古車の個体も多いが、カスタムのベースとしても高い人気を誇った。そのため完全なノーマルは意外とタマが少なく、特にアンダーカウルは取り外された個体が多い。

 

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シャープなエアロデザインを感じさせるリアビュー。外されてしまうことの多いアンダーカウルだが、250km/hという最高速度はこのアンダーカウルを装備したことで実現されている。

 

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水冷並列4気筒DOHC4バルブ908ccエンジンは発売当初115PSを発生していたが、このA5では110PSへと変更されている。

 

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エンジン左サイドはカムチェーンがあるため、右側よりもボリュームがあるデザイン。シリンダーヘッドの「DOHC 16-VALVE」ロゴが高性能エンジンを主張。

 

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NInjaのアイデンティティのひとつが、このアッパーカウルのデザインだ。エッジの効いたエアロデザインは、最終型まで変更されることはなかった。

 

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ハンドルバーはセパレートタイプだが、トップブリッジ上にセットされ、セットバックされているため前傾はそれほどキツくない。

 

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メーターはスピード、タコ、燃料、水温の4連アナログタイプで、スピードは260km/hまで刻まれる。「VOLT/TACHO」のボタンを押すと電圧がチェックできる。

 

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燃料タンクの容量は22Lを確保し、ロングツーリングでも安心。現代のバイクと比べるとタンク全長が長く感じる。

 

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前後一体型のシートは段差も少なくタンデムも楽にできる。2つあるキーシリンダーはシートロックとヘルメットホルダー用で、収納式の荷掛けフックも装備。

 

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フロントブレーキは280mmのディスクと1ポットキャリパーの組み合わせ。フロントフォークにはアンチノーズダイブシステム「AVDS」が組み込まれている。

 

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リアブレーキはフロントと同じ1ポットキャリパーを使用したシングルディスクで、実用レベルであれば利きは現代でも充分なレベルにある。

 

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