■神事のスタート
空のお社は社務所から本殿の神職のもとに運ばれるようで、記者は伝票と勧請証書をもって本殿に入る。多くの参拝者が後ろでお賽銭を投げる中で、伝票と勧請証書を神職に手渡す。すると御神体の入ったお社が本殿の高いところに据えられて神事が始まる。
修祓(お祓い)のあと、稲荷大神がお社に鎮まる勧請の祝詞が奏上され、玉串を捧げて本殿での神事は終了する。直会(なおらい)のお神酒をいただいて、今度は神楽殿に移る。
神楽殿では巫女が待ち構えており、同時に本殿から神職がうやうやしく預けたお社を神楽殿まで持ってくる。この間、神職が通る道は警備員と神職により神様の前を観光客が横切らないように完全に封鎖される。
それを巫女が受け取り神楽殿に据える。神楽奉納中の神楽殿は撮影禁止だが、観光客が自由に巫女舞や雅楽を鑑賞することはできるので、衆人環視の中で勧請された稲荷大神のために舞が奉納される。
神楽奉納が終了すると、巫女が記者の頭上で鈴を振ってお祓いをしてくれる。それですべての神事は終了である。その場で神様が鎮まったお社を受け取り、その足で神具店に戻る。
神具店では同時に購入した神具数点とともにお社を梱包してくれるので、それを東京まで「輸送」しなければならない。ちなみに、お社がなくても御神体だけで勧請してもらうことは可能だが、いずれにしても最終的にはお社に自分で入れないといけないので、どうせならばお社ごと御祈祷をしてもらった方がよい。
■どうやって東京までお迎えする?
さて、ここからどのようにして東京までお迎えするのかが問題になる。時刻は昼下がりの時間なので、京都駅から新幹線に乗ればその日のうちに戻れる。しかし荷物置きである網棚に乗せておくわけにもいかないし、足元に置くなど言語道断だ。テーブルに据えておくのは問題なさそうだが、席を立つのに躊躇する。航空機でも同じで、まさか手荷物として預けてコンテナ行きにするわけにもいかない。高速バスでもトランクに預けるわけにはいかないし結局は抱えるしかない。
そこで考えたのが大阪駅からサンライズ瀬戸・出雲に乗って、個室で東京に戻るという方法だ。サンライズの個室には小さいながらもテーブルがあり、そこに安置するのが最も良さそうな気がした。後で神職に聞くと要は「そういう心がけが大切なのであって、大切に扱う気持ちがあれば神様もおよろこびになるのではないか」とのことだった。
■とにかくお祭りをしまくる!
稲荷大神(ウカノミタマノミコトを中心とした5柱)は賑やかなことがお好きだそうで、神社と同じなので何もお祭り(神事)がないと御威光も御神徳も循環しない。せめて毎朝の祝詞奏上や事あるごとに御祈祷をして神様の御威光をあげることに努めている。
ちなみに伏見稲荷大社では現在は制度として廃止されている神階である「正一位」の位を付けて勧請してくれ、神号や社号は勧請した方が自由に付けても良いとなっているので、記者が勧請したお稲荷様の神号と社号は名の1文字を取り「正一位智稲荷大神」とした。
■嘘か誠か御神徳が4日連続?
「信じる者は救われる」ではないが、小さな御神徳を年末に感じたので偽りなく書いておく。伏見稲荷大社に行く前日に松阪市で行われていたスタンプラリーの賞品が当せんして、忘れたころに松阪市役所から1000円分の特産品が届いた。
翌日に取材で行ったVtuberイベントのビンゴゲームで1点物のサイン入りポスターが当たった。さらに翌日、10年で1回しか当たったことのない飲料自動販売機の数字が並ぶくじで当たりが出てコーヒーをもう1本もらった。
最後は連続4日目にコンビニで会計を済ませると引換券が出ているので、すぐに引き換えて持って帰るかと聞かれたので、そうするとこたえると「無料引換券が2枚出てますのでお好きなペットボトルを2本そうぞ」となり、ペットボトル飲料を2本もらうことができた。
そこで宝くじを買うという暴挙には出なかったが、4日間連続で何らかの「当たり」を引くのは単純に引きが強いのか、御神徳なのか。それはわからないが、日本の神様の御神徳はお金が空から降ってくることでも、努力もせず合格通知が届くことでもなく、「運を添う」ことなので、これら4連続当たりは、たまたまかもしれないし御神徳かもしれない。
「いわしの頭も信心から」の例えではないが、自宅がパワースポットになれば益々の繁栄を祈願して世知辛い現代の世の中を精一杯生き抜くパワーを与えてくれるのかもしれない。