ホンダと日産、三菱自動車の三社トップが記者会見を実施。2025年6月をメドに、ホンダと日産が経営統合するか否かに関する結論を出す。会見と質疑応答から「日産が再建しない限り経営統合は実現しない可能性」があり、新会社の経営はホンダが主導するといった詳細がわかった。あくまで「目的は合理化ではない」というが……?
経営統合の「検討」をスタート、実現には日産の経営再建が前提となる
ホンダ、日産、三菱自動車の社長が12月23日午後、都内で記者会見を行い、経営統合に向けた検討に入ると発表した。前週から各種報道で経営統合に関する話は出ていたが、正式な発表はこの日が初となる。
今後は2025年6月に契約書締結、2026年4月に臨時株主総会、2026年8月に共同持株会社による上場を予定。三菱自動車については2025年1月末をめどに参画するかどうかの検討結果を出すことを目指す。
当webでも既報のとおり統合が実現すれば、販売台数で世界3位の自動車グループが誕生する。しかし、誤解なきようにしたいのは、あくまで今回の発表は「統合の検討」をスタートしたということ。つまり、検討次第では統合しない可能性もある。
会見では「日産のターンアラウンドの取り組みが着実に実行されることが経営統合の前提」とホンダ三部社長が強調。“ターンアラウンド”とは、事業構造計画を指し、要は今後の経営再建を意味する。
2026年8月に統合の検討が終わる前から日産は構造改革を行い、その進捗度合いも検討に影響する。会見でも「合理化のための統合ではない」「両社が自立していることが前提」といった趣旨の発言が繰り返され、各社が自立していなければ成就しない可能性がある、とホンダ三部社長が話していた。
新しい共同会社でイニシアチブを握るのはホンダ、二輪への大きな変化はなさそう
経営統合が実現し、ホンダと日産の共同持株会社ができた場合、社内取締役および社外取締役のそれぞれの過半数をホンダが指名する予定。また、共同持株会社の代表取締役社長または代表執行役社長についてもホンダが指名する取締役の中から選定する予定だ。
つまり、社長はホンダから選ばれ、役員の半数もホンダが占める。想像以上に新会社はホンダが主導権を握ることになる。あくまでスタート時においての話でずっとホンダがリードするわけではない、と会見で話すが、これまで統合後の経営体制に関しては不明だったため、この発表は大きい。
ホンダが主導権を握るのであれば、ホンダの稼ぎ頭であるバイク事業に関しても当面、大きな変化はない可能性が高いだろう。なお持株会社が設立された場合、それぞれのブランド名は残るが、ホンダと日産の両社は上場廃止となる見通しだ。
なお台湾のホンハイが日産買収に動いているとの噂もあったが、日産の内田社長は否定。あくまでホンダと日産の二社で経営統合に向けて動いたという。
経営統合後の利益は1.5倍超、影響が本格的に出るのは2030年以降
会見で何度も口にされたのが「シナジー」という言葉だ。ご存じのとおりシナジーとは相互に作用し合い、単体で得られる以上の「相乗効果」を意味する。両者の統合によるシナジーとして「全体で売上高30兆円、営業利益3兆円を超える世界トップレベルのモビリティカンパニーを目指していきます」という。
ホンダの営業利益は1兆3819億円、日産は5687億円(ともに2023年度)。経営統合後は1.5倍超の企業になることを狙う。ちなみに世界1位のトヨタは2023年度に過去最高の営業利益5兆3529億円を記録している。
経営統合には、具体的に以下7つのシナジー効果があるという。
① 車両プラットフォームの共通化によるスケールメリットの獲得
② 研究開発機能の統合による開発力向上とコストシナジーの実現
③ 生産体制・拠点の最適化
④ 購買機能の統合によるサプライチェーン全体での競争力強化
⑤ 業務効率化によるコストシナジーの実現
⑥ 販売金融機能の統合に伴うスケールメリットの獲得
⑦ 知能化・電動化に向けた人財基盤の確立
プラットフォームの共通化による合理化や開発コストの低減といったシナジーを挙げている。ホンダ三部社長によると、シナジーは2030年手前で出始め、本格的には2030年以降だと考えているという。
しかしながら、あくまで経営統合の目的は、合理化や日産の「救済」のためではなく、2030年に向けて競争力を持ち、総合的な価値を上げることが目的であることを強調していた。例え話として「ホンダはハイブリッド車、日産はピックアップトラックを持っている。経営統合でこの両者を組み合わせることができる」と三部社長はコメントしていた。
また現状で両社の販売地域やラインナップが重なっているが、統合後は変更していくという。
「ホンダは会社として動くスピードが早い」所に惚れた!?
質疑応答では記者から「経営統合について従業員にどう説明するのか」との質問も。日産の内田社長は「業績の不振は経営責任。希望をもって日産ブランドを輝けるようにしたい。一旦ターンアラウンドで縮小するが、希望になる」という。ホンダ三部社長は「ステークホルダーを含めて丁寧に説明していく。いろんな議論した上で納得してもらわないと進められない。ある一定の期間が必要ですが、これからやっていく」と話す。
また「シナジーという話は出ても、どこに惚れたか、どうして一緒にやっていきたいと思ったのか、理由がわからない」との質問が。ホンダ三部社長は「難しいな(笑)。日産は名門で尊敬に値する企業。技術の進化やコスト低減、投資削減を単独でやり切るのは非常に難しい状況の中で効率を上げながら、それぞれのホンダらしさ、日産らしさは全く変わらない」と返答。
一方、日産の内田社長は「(ホンダは)将来の危機感が共有できる相手。クルマだけでなく様々な事業で順応するスピードが早い。会社として動くスピードが早い。強いところを持ち寄って2社が一緒にそのスピード感で検討していければ、競合他社に対しても勝っていけるんじゃないかなという気持ちが今回の一番のポイントかなと思っています」と答えた。
現時点では”合理化”以外のシナジーが見られなかったのでは?
―――75分ほどで会見は終了したが、終始3社長の熱量は乏しく、どんな自動車メーカーを目指すのかといったビジョンがなかったのは残念と感じた。具体的な話はまだこれからであり、「今回の経営統合は合理化が目的ではない」と三部社長は言うものの、現時点では合理化以外のシナジーがほぼ提示できなかったのでは? というのが私見だ。
今後もモビリティは大きな変動期を迎え、生き残りを図るために経営統合が実現する可能性は高いと予想される。しかし三部社長が「技術の中身を含めてお客様に喜んでいただける商品。新しい価値を創造する」と話したとおり、経営統合に関わらず、ホンダ、日産ともユーザーがワクワクするようなモノづくりを第一にしてもらいたいと思う。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/bikenews/431804/
ホンダと日産の経営統合は「ナシ」の可能性も? 2030年以降にトップ級メーカーを目指すも、合理化以外の“シナジー”は?【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery2/?gallery_id=431804&slide=1
コメント
コメントの使い方しない方がいいです。ホンダは、ホンダだけでやったほうがいいんです。日産と経営統合しない方がいいです。ホンダらしさがなくなってしまいます。ホンダには、もっと、もっと、最高のエンジンを゙作ってほしいです。