■運転手さんについ言ってしまったこと
このバスは、前述の通り70km以上の距離を走る。ドバッと乗るのは河口湖駅前だけで、途中でちょっとずつ降りていくというパターンもあり得るので、そちらに淡い期待を抱いてみたが、肩透かしもいいところ。
ほどよく空いてくると、また途中の停留所でインバウンドさんが再度ドバー。インバウンドさん特盛追加2回挟みつつ、2時間以上・最後の最後までギッチギチな状態が続いた。
バスの運行自体はスムーズな様子で、渋滞に巻き込まれたり徐行運転したりした様子はほとんど感じなかったものの、新富士駅には18分遅れて到着。
足の踏み場に困るほどのカオス化した車内、バス停に停まっても中扉の開閉センサーの前にずっと居座っていたり、5人に1人くらい万券取り出していたりしたら、自然とロスが積み重なって盛大な遅れに発展しても不自然ではなく、お客を起因とする典型的なダイヤ乱れの例かもしれない。
新富士駅で降車する際、始発から苦労が伺えた運転手さんに「ありがとうございました」と伝えようとしたところ、図らずも「お疲れ様でした」と言ってしまった。
これも無意識のうちにオーバーツーリズムが精神的負担へと変化していた現れと言うか……それにしても路線バス旅がこんなにハードコアだと感じたのは初めてだ。なお乗車当日にトイレ休憩はなかった(あっても席立てなかったろうけど)。
■バス像自体はなかなかユニーク
実際の利用中の印象はともかくとして、S4系統 新富士線のバス像自体を見ると、富士山の麓に敷かれた国道139号をメインルートに、富士山駅〜新富士駅間71.4kmの距離を、河口湖、精進湖、本栖湖などを経由して結んでいる。山と海寄りを繋いでいるため、経路に1,000m以上の高低差が生じるのも特徴の一つ。
一般路線バスとしての距離の長さに物珍しさを感じつつも、富士山駅は山梨県、新富士駅は静岡県にあるということで、このバスが県境越えの要素を持っているとわかる。富士急山梨バスが運行しており、この場合は静岡県がアウェー側に相当する。
県境越え系バスは、アウェー側にはほんの少ししか入らないのが一般的。ところがS4系統の場合、山梨県側が約32km、静岡県側が約39kmと、アウェー側の走行距離のほうが長いのだ。
富士急バスは静岡県/山梨県でバスを走らせているとはいえ、営業所やグループ会社の管轄の関係もあって、本来別のエリアを担当しているバスが、ここまで深い場所まで入ってくるのはなかなか珍しいケースに思える。
【バス路線の基本データ】
富士急バス S4系統 新富士線(富士山駅〜新富士駅)
・跨ぐ県:山梨県 → 静岡県
・移動距離:71.4km
・所要時間:2時間25分
・全区間の運賃:2,890円
・停留所の総数:74
・静岡県内の区間距離:およそ39km
・静岡県内の停留所の数:21













