フジエクスプレスで臨時運転士として乗務する記者のバス運転士日誌は、運転士としての日常を離れてカスハラの話題だ。その契機となったのは各報道機関から流れてきた一つのニュースだ。これについて記者が所属するフジエクスプレスの運行管理者に話を聞いた。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■カスタマーハラスメントに実力手段で対抗?
ニュースとして取り上げられた直接の契機はXでの都営バスに関する投稿だった。内容は『東京ビッグサイトから都バスが運行休止になった。最後に乗り込んだ客が扉を閉められて「見えてただろ。なんで閉めたんだ」と怒鳴ったら運転手が「運転できる精神状態じゃありません」と言って営業所の許可を取って運転見合わせになって次のバスに。お前は運転して帰れるのに変な話』というものが投稿された。
内容については東京都交通局も事実関係を認めているので実際にあった話として取り扱って構わないだろう。これに対するXでの反応については、外野の勝手な意見なので賛否を含めて本稿では論評しないが、いわゆるカスタマーハラスメントの典型的な事例だったことだけは確かだ。
バス事業者や鉄道事業者ではカスタマーハラスメントについての指針を定めているケースが多い。そして交通局が取った「運行中止」の決定は旅客輸送の安全が担保できないと判断した運行管理者の適切な指示であったと記者は評価する。
■今後はこれがスタンダードになるのか?
実際にこのような「実力行使」が行われたケースは見たことも聞いたこともないが、東京都交通局が実行したことで、今後はこれがスタンダードになるかもしれない。記者が臨時運転士として所属するフジエクスプレスでもカスハラに対する指針は定められている。
指針ではカスハラの定義を「お客様やお取引先等からのご意見やご要望、クレーム等のうち、内容が妥当性を欠くものや、要望等を実現するための手段・態様が社会通念上不相当であり、当該手段・態様によって当社従業員の尊厳と就業環境が害されるもの」としている。
想定される具体例も列挙されているが「それに限らない」と、可能性としては定義に当てはまれば無制限にカスハラ行為として対処する旨を表明している。
またカスハラへの対応としては、「当社は、従業員の尊厳や就業環境が害されることを防ぐため、カスタマーハラスメントに該当する要望等については対応をお断りいたします。また、悪質なカスタマーハラスメントに対しては、速やかに警察、弁護士等の外部機関へ相談の上、厳正に対処いたします。」としている。
東京都交通局のようなケースは日常で多くあると思われる。果たして同局のような運行を中止して当該便を運休にする等の実力行使がスタンダードになるのかどうか、それは事業者の考え方次第だが、運転士としてバスを運行する記者にとっても気になるところではある。また旅客となる読者にとっても、一人のカスハラ乗客の行為により運行が中止されると困るだろう。
では今回の東京都交通局のような事例が発生した場合は具体的にどのような対応になるのだろうか。現場を指揮する運行管理者にあくまでも想定ではあるものの聞いてみた。もし記者が乗務中にこのような事例に遭遇しないとも限らないからだ。
ただしこれはあくまでも記者が所属するフジエクスプレスの運行管理者個人の考え方だということは最初にお断りしておく。他社局または運行管理者では異なる考え方あるいは対応になる可能性は排除できないことは誤解のないようにしていただきたい。


