路線バスは市街地の道路を走り、私たちの生活にもっとも身近な存在の公共交通機関と言える。そえゆえ、車体には大なり小なり広告が掲示されていることが多い。
文・写真:橋爪智之
■ラッピングが広げた表現の幅
その広告は様々で、小さなパネル式の物もあれば、車体に直接ペイントしているものもある。屋根の上に掲げている会社もあった。
ただ、ここ数年はラッピングの車両が増えてきた。車体に直接、高粘着性の薄いフィルムを張るもので、バスのみならず鉄道車両など、他の交通機関でも使用されている。
近年は広告のみならず、車体の塗装そのものをラッピングにしている会社もある。車体に塗料を吹き付けるのと異なり、印刷されたフィルムを張るだけなので、これまで難しかったグラデーションのような複雑なデザインを取り入れることも可能となった。
■ラッピング広告の貼り方は様々
さて車体広告だが、実際に観察してみると色々な貼り方がある。一番インパクトが強いのは、車体全面にラッピングを施した全面広告車だ。
車体全体で、広告ブランドのコーポレートカラーを印象付けることができる。屋根の上までが広告スペースのようなものだが、さすがにそこまでラッピングをしている会社はなさそうで、車体側面の上端までのラッピングが多いようだ。
部分的に掲出している例も見られる。例えば車体側面だけに一面広告を張り付けるものや、後部にだけ張っているものもある。面積では車体側面が一番広く、広告を出しやすいのは当然と言える。
広告料の関係、もしくはバス会社側の都合からか、側面でも車体の下半分、腰の部分にだけ広告を掲出しているものも多く見かける。
逆に、窓ガラスの部分も含めて、上下方向一杯に使って張り付けているパターンもある。窓ガラスにまで及ばないパターンと、窓にも張り付けるパターンの2種類がある。
窓に張ってしまったら、車内から外が見えないのではないかと思うかもしれないが、窓部分には網目状に細かい穴の開いた、透過性のあるラッピングが使われているため、全く外が見えないということはないし、車内が薄暗くなるということもない。
とはいえ、窓に張っていることには違いがないため、やはり少し窓の外が見にくい。
車体後部だけのラッピングというのも見たことがあるが、これは誰に向けた広告なのだろうか…? 見かけたのが高速路線バスだったので、もしかしたら高速道路を走るドライバーへ向けた広告なのかもしれないが、運転中に広告を凝視していたら事故を起こしそうだ…。
■外国のラッピング広告事情
では外国はどうなのだろう。台湾の台北市内で見かけた路線バスは、日本と同様のラッピング広告車両が運行されていた。
ただ、たまたま見かけた巨大な商品箱のラッピング広告に、最初はタバコか何かの広告だろうと思っていたら、なんと避妊具の広告で驚いた。この辺は、お国柄の違いというのも見られて面白い。
ヨーロッパはどうか。写真を探してみたが、これが意外と見つからない。大都市の場合、広告条例のようなもので、ある程度は規制されている可能性もあるのと、都市によっては低床+多ドア車両のため、広告スペースがほとんどないというのも理由かもしれない。
筆者の地元であるチェコのプラハ市で見かけたのは、ドライバー募集という自社広告と、トロリーバス90周年のような記念ラッピングのみだ。ドイツではたまに見かけたが、それほど多くはない印象だ。
2階建て車両で有名な、英国のロンドンバスは、ラッピングバスは見かけない代わりに、日本で見られるような広告枠に掲出する。
ただ、この枠がとてもユニークで、1階と2階の間の細長いスペースと、上下階を結ぶ階段部分の縦長のスペースを組み合わせた、T字型のスペースになっている。
この縦長部分がミソで、横長部分に文字を入れ、縦長部分に写真やイラストを大きく掲出する、といったことができる。この辺のデザインについては、各広告主のセンスが問われそうだ。
ロンドンで唯一見掛けたラッピングは広告ではなく、空港連絡のスーパーループと呼ばれる路線の専用車両だけだった。
ラッピングは、車体を使った広告や、車体の塗装デザインそのものの自由度を格段に高めたが、一方で経年劣化による剥がれや、剥がした後の車体の汚れ、また剥がした際に発生するゴミといった課題もある。
実際、車体の大きい鉄道では採用を止めた会社もある。経年劣化しにくい素材の開発や、使用後もリサイクル可能な方法の確立が、今後の課題と言えるのだろうか。
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