運輸業界で問題になっているカスハラに対して日本民営鉄道協会が基本方針を作成した。ところがバス業界ではこういった具体的な話は聞かない。ただし共通な部分は多いはずで、電鉄系バス事業者も多いことからこれに準じた対応になるものと考えられる。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージで本文とは関係ありません)
■これまでの経緯
日本民営鉄道協会では、これまで鉄道業界における第三者暴力行為災害防止への取り組みを実施してきた。直接暴力を伴わない、必要以上の大声でのクレーム、威嚇や脅迫、人格を否定するような発言等の、いあゆるカスタマーハラスメントに該当する顧客からの著しい迷惑行為が増加している。
これを受けて「民営鉄道業界におけるカスタマーハラスメントに対する基本方針」を定めた。鉄道事業におけるカスタマーハラスメントの特徴として、直接顧客と接する機会の多い、駅係員や乗務員、お客さまセンター係員において、顧客(カスタマー)の迷惑行為による被害等が発生している。
「民営鉄道業界におけるカスタマーハラスメントに対する基本方針」を定め、業界全体で一体となり、カスタマーハラスメントに対する取組みを推進することで、カスタマーハラスメント撲滅に取り組みたい考えだ。
■カスタマーハラスメントに対する基本方針
カスタマーハラスメントを「顧客からのクレーム・言動のうち、内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、従業員の就業環境が害されるもの」と定義した。
具体的な行為として、身体的な攻撃(暴行・傷害)、精神的な攻撃(脅迫・中傷・名誉毀損・侮辱・暴言)、威圧的な言動、継続的・執拗な言動や要求、拘束的な行動、性的な言動、SNS等による同意ない音声・映像の公開、従業員個人への攻撃・要求等を例示している。
■カスタマーハラスメントへの対応
これらカスハラへの対応として、事業者での基本方針や姿勢の明確化し、従業員への周知と啓発を行い、従業員のための相談体制を整備することを定めている。さらに対応方法や手順を策定し、従業員への配慮措置等を講ずるように求めている。
実際に事業者側がカスハラ行為を行う乗客に対して実力行使を伴う対応は不可能だ。昔であれば国鉄には司法警察権を持った鉄道公安職員がいたし、駅長や列車長(車掌長)にも司法警察権が付与されていたが、現在では等しく民間会社なので、そのような権限も根拠もない。
よって消極的な対応しか取れないのも事実だが、対応を策定したことを外部に発信することにより、組織全体でことに当たる姿勢を見せることができる。