バス運転士不足問題で、最近は「条件緩和」というワードが目立つようになってきた。地方事業者のニュースとして配信する中で目立ってきた。徐々に地方に浸透しているので全国レベルで目立つということなのだろう。この条件緩和について考察してみた。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
(写真はすべてイメージで本文とは関係ありません)
■何の条件を緩和するのか?
一概に採用の条件を緩和すると言っても、それは千差万別で一定の定義はない。しかしどの事業社でも一致しているのは「応募条件」の緩和である点だ。
バス運転士になるためには最低限、大型二種免許が必要だ。もちろん、すでに持っている人はありがたいはずだし、経験のある方はなおありがたい。そして大型二種免許を取得するための条件として年齢や普通免許を取得してからの年数もある。最近は制度改正で一定の講習を受講すれば、これらの条件は緩和される。
事業者としても賃金が少しでも安く、長く働ける若い方の応募を期待しているのだろうが、そのための条件緩和のための講習費用や免許取得のための教習費用は全額負担するのが今のデフォルトだ。しかし若い方ほがわんさか応募しているという話は聞かない。
■上にシフトする年齢条件
であれば、この際年齢はいいので、上限の年齢条件を緩和するという動きに出ている。しかし、それでも応募は芳しくない印象だ。もう時間がない。右を見ても左を見ても2024年問題ですでに減便や運休を決定している事業者ばかりだ。
そんな条件を緩和してバス運転士なりたい人が集まるのであれば苦労はしない。記者は事業者ごとの事情をある程度は分かっているので、ネット上で流布されるひどい労働環境ばかりではないことは知っている。すべてがそうだとは言わない。しかし割合でいえば確かに世間のイメージ通りの事業者があるのも事実だが、そうなりたくて、なっているわけではもちろんない。
■問題は待遇だと誰もがわかっている!
そうはいっても、事業者も運転士も行政も全方位の立場の人たちが「問題はそこではない」ことは分かっているはずだ。仮にネット上で流布されている労働環境であっても、それだけの対価が支払われるのであれば喜んで働く人はいる。
高度経済成長時代はそうだった。今の若い方は働き方やライフワークバランスの方が重要なので無理かもしれないが、まだまだ現役で働ける昭和後期の人たちは言い方は悪いがブラックであろうが休日出勤であろうが企業戦士であろうが、働きに見合う賃金が支払われるのであれば、なり手はいくらでもいるはずだ。
しかし悲しいことに、悪手であってもそれを満足させる賃金を支払う原資がないのである。バス業界が踏んできた歴史を言い出せばきりがないので、犯人捜しは置いておくとしても、誰かがその原資を負担しなければならない。