安全第一が信条……納得の安全装備を搭載したバスだと!? 阿蘇山火口行き路線が極レアすぎた!!

安全第一が信条……納得の安全装備を搭載したバスだと!? 阿蘇山火口行き路線が極レアすぎた!!

 熊本県の有名観光地・阿蘇山には、ふもとのJR阿蘇駅から上のほうまでバスで直通できるが、その終点の更に先を目指す風変わりなバスが走っているというのでそれに乗ってみた。

文・写真:中山修一
(阿蘇山火口行きバスとその周辺の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■どうせ来たなら火口まで

阿蘇山の目玉観光スポット・火口。今もグツグツ煮えてます
阿蘇山の目玉観光スポット・火口。今もグツグツ煮えてます

 JR阿蘇駅を発着している阿蘇山方面へのアクセスバス「阿蘇火口線」の終点が、標高およそ1140mの地点にある「阿蘇山上ターミナル」だ。

 ここから110mほど登ると、阿蘇山周辺観光スポットの目玉・火口が現れる。火口周辺は見学用に整備されていて、すぐ近くの駐車場まで自家用車のほかバスを使ってアプローチできる。

 バスは1路線のみで、産交バスが運行を受け持つ「阿蘇山火口シャトル」がそれだ。以前は阿蘇山上〜火口への公共交通機関にロープウェイが用意されていた。

 ところが2016年に阿蘇山が噴火した際、設備が激しく損傷してしまい修理・再開を断念、ロープウェイ休止期間中の代行バスを経て、2020年11月から阿蘇山火口シャトルの運転が始まった。

2021年にオープンした、まだ新しい阿蘇山上ターミナル
2021年にオープンした、まだ新しい阿蘇山上ターミナル

 ロープウェイは廃止となり、2024年現在は遺構もほぼ撤去されている。阿蘇山火口シャトルは鉄道事業法に基づく索道・ロープウェイの代替バスという、他ではあまり聞きなれない役割を担っているわけだ。

■動いている日はラッキー?

 火口シャトルは、火口行きが9:00〜15:45まで予約便1本・通常便9本、山上ターミナルへ戻る便が9:25〜16:15まで10本、合わせて1日20本の設定。

山上ターミナル〜火口を結ぶ阿蘇山火口シャトル
山上ターミナル〜火口を結ぶ阿蘇山火口シャトル

 2024年9月に現地へ訪問した際は天気も良く、山上ターミナルの乗り場が物凄く行列していて、積み残し出るんじゃないの? と思いきや、そこはしっかり2台体制の続行運転で対応していた。

 並んだ後は、普通の路線バスの要領で火口まで行けたので、便利な移動手段があるのね、くらいの第一印象だった。

 ところがこのバス、よくよく素性を探ってみると、前述のロープウェイ代替バスと合わせて、バスとしては中々不思議な要素を隠し持っているようだ。

 まず、公共交通機関では半ば常識となっている「いつも何事もなく乗って行ける」が、このバスには大して通用しない点。

 場所が活火山の真下なだけに、有害な火山ガスが絶え間なく出ているほか、いつ噴火するか分からない状況まで常に付いて回る。

 バスが動くかどうかは、自然のみぞ知る日々の火山活動が握っているわけで、2024年だけでも運休した回数は相当多い。何となく行ってスッと乗れた日のほうが、むしろラッキーかもしれない。

■特殊すぎる運行区間

 次に、阿蘇山火口シャトルが走る区間に注目してみる。山上ターミナル〜火口バス停までは道筋通りに進んで約1.4km、最初から最後まで平均およそ8%の勾配が続く。

それなりの勾配を火口シャトルがグイグイ登る
それなりの勾配を火口シャトルがグイグイ登る

 停留所が置かれている駐車場を除いて平坦区間はほとんどなく、坂道しか走らないバスというあたりに、阿蘇山火口シャトルならではの特色が見えてくる。走行区間がすべて有料道路である点もユニーク。

 停留所の数は2カ所のみ。乗合バスの中でもとりわけ運行距離が短く、なおかつ停留所の数も最低限な、直行タイプであるのも特徴の一つだ。

 運賃は片道700円。全国交通系ICカードは2024年11月16日から使えなくなり、現金もしくはご当地IC系「くまモンのICカード」に対応している。

この先もう道は続かない本当の終点・火口バス停に到着!
この先もう道は続かない本当の終点・火口バス停に到着!

 約1.4kmの距離を5分ほどで結ぶ路線であるが、乗合バスだけれどもタクシーに迫る運賃設定に度肝を抜かれるのは場所柄そういうもの、といった感じか。

 また、終点のバス停名は「火口」。火口と名のつく全国のバス停は、噴火口入口(北海道)、新火口展望台(東京都)、火口(熊本県)の3カ所。

「CRATER」の英語表記がかっこいい
「CRATER」の英語表記がかっこいい

 しかも「火口」と言い切っているのは阿蘇山のここにしかない。一般名詞を用いた停留所名でありながら、オンリーワンなところが極レアだ。

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