■基本は押さえた夜行仕様
今回乗車したのは窓側A席で、車内は独立3列シートだ。各列の間にはカーテンが用意されており、閉めればプライバシー空間を作ることができる。座席は10列でシートピッチは広く足をゆっくりと伸ばすことができる。
夜行バスでは嬉しいフットレストやレッグレストも備わっている。また最近では基本設備だが各座席のコンセント、そしてWi-Fiも設置されている。トイレは車両の中央部にあり、階段を下りた先にある夜行仕様だ。座ってみるとシートはやや固めであるが、疲れを感じさせない、いい触り心地でしっかりと眠ることができそうである。
ヘッドレストは上下可動式で、自分の頭のいい位置に調整することができる。シートの幅もしっかりあって、身体を右や左に向けてもうまくホールドしてくれるのでなかなか使いやすい。しばらく走行すれば徐々に眠りに着くことができた。車両は三菱ふそう製のスーパーハイデッカーであるエアロクイーンだ。
最近は夜行であってもハイデッカー車が標準車両になっているが、スーパーハイデッカーはやはり威厳がある。三重交通のこのデザインは最新のもので、個人的にはエアロクイーンとベストマッチだと思う。
■降車休憩では番号札!
車内は高速道路に上がると消灯され暗くなるのだが、再び明るくなったタイミングで目が覚めた。どうやら降車休憩のようだ。途中の休憩場所は1ヵ所のみで、それが東名高速道路の足柄サービスエリアである。ドア付近の出発時刻を表す札には3時30分とあるので、約10分ほどの休憩だ。
車外へ出ようとすると、ドア付近で乗務員が待っていてカードを手渡してくれた。こちらは休憩で車外に出た時に何人バスの外にいるのか把握するためのカードである。再び乗車時に回収する仕組みで、これでサービスエリアへの積み残しを防ぐというわけである。
この数字からみると今は筆者を含めて9人がバスの外にいるようだ。最近では降車休憩で出発時刻になると乗っていようがいまいが発車することを公言する事業者もあるが、善し悪しは別として、運賃を支払って運送契約をしたのであれば旅客を送り届けるのが筋だとは思う。
間に合わなくて置いて行かれたとしても約款上は問題がないのだろう。しかし、このように乗務員を配置してまでの降車休憩サービスは、乗客に対して多くの安心感を与えることだけは間違いないだろう。
バスに乗る前に外から眺めてみると、周囲には多くの高速バスが停車していた。並んでみるとよく分かるが三重交通のバスはとても大きい(背が高い)。それもそのはずで、こちらはスーパーハイデッカーで座席位置がハイデッカー車よりも高い場所にある。
階段の高さや窓の位置で改めて知ることができるだろう。前述したが、高速バスでのスーパーハイデッカー車はあまり見なくなったが、この路線では三重交通担当であればエアロクイーンに乗車することが可能で、カラーリングは令和元年特別カラーで2019年に導入した従来の三重交通とは随分印象の違うものになっている。
この塗色はこの1台のみなので、機会があればベストマッチングのバスを眺めていただきたい。
■荷物タグ
再び走り出したバスは順調に東名高速道路を走行し、最初の立川駅北口には5時10分頃に到着した。今回はここで下車するため、1人でまだ夜明け前の立川駅北口に降り立った。トランクに預けてあった荷物を受け取りバスを見送った。
このあとバスはバスタ新宿、池袋と回り埼玉を目指す。ちなみに荷物には三重交通オリジナルのタグが取り付けられている。これは荷物の受け取り間違いを防ぐもので、荷物を預ける際に半券を受け取り、降車時にそのタグを渡すことで乗務員が番号を照合し手渡すという仕組みになっている。
ここ近年の夜行バスではあまり見かけなくなったが、乗降場所や手荷物の数が多いことで手荷物の間違いを防ぐため、空港バスでの導入は多い。三重交通では今でもこの方式が取られていて、これも安心感のある伝統的な仕組みだ。