世界の空港バスに乗りまくるレポート。今回は中南米だ。ラテン系のバスやらレトロなボンネットバスがたくさん登場。そして、乗客たちもラテンの血が騒ぐ人たちばかり。「アエロプエルト?」(空港の意)に首を縦に振るので乗ったはいいのだが……。
(記事の内容は、2022年3月現在のものです)
文、写真/谷川一巳
※2022年3月発売《バスマガジンvol.112》『エアポートバス 乗ってわかった愉快だけどマジな話』より
■未舗装道を飛びあがるほどの振動で
現在はどうか知らないが、中南米の国では、俗にいうボンネットバスがたくさん走っていた。ボンネットバス=古い車両ではないようで、新車と思えるボンネットバスも数多く見かけた。さすがに空港バスにはヨーロッパ製車両が多かったが、路線バスが空港にも行く路線ではボンネットバスは珍しくなかった。
そういえばアメリカでもスクールバスの多くはボンネットバスだったので、エンジンが前にあるというだけでボンネットバスが古いと決めつけるのは間違っているのかもしれない。
ボンネットバスの空港路線が未舗装の道を、運転手好みの音楽を鳴らしながら、飛びあがるほどの振動で走るのはいかにも中南米の旅を感じさせてくれた。
しかし、路線バスで空港にたどり着けなかったこともある。パナマシティでは、「アエロプエルト」と尋ね、ドライバーも乗客も「行く行く」というような素振りだったので、路線バスに乗ったものの、降ろされたのは空港近くのショッピングセンターのようなところだった。
空港まではまだ距離がありそうだったので結局そこからタクシー利用。でも地元の人はその距離を歩くのかもしれない。
エクアドルの空港は市街地にあったが、到着時はホテルまでタクシーを利用した。しかし、空港周辺で路線バスを多く見かけたので、空港へ行くときは路線バスを利用しようと思っていたのだが、結局空港を通る路線が見つからず、再度タクシーを利用してしまった。
■「乗れなかった」航空会社のチャーターバス
サンパウロのヴィラコッポス空港は、市街からの距離が成田空港より遠いといわれた空港で、私は鉄道と路線バスを乗り継いで飛行機を見るために空港へ向かった。
当時は市街地に近い新空港ができていたので、遠い空港は敬遠され便数が少なく空港バスはなかった。その代わり、乗り入れている航空会社は乗客輸送のためチャーターバスを運行していた。
私は路線バスと鉄道を乗り継ぐ以外にサンパウロ中心街へ行く方法はないものかと、空港の案内所にいたおばさんに尋ねると、前述のチャーターバスを薦められた。ちなみに、当時のこの空港はのどかな田舎空港で、このおばさんとはいろいろ話をしたので、私が空港に飛行機を見に来たことは知っていた。
しかしバス乗場へ行っても、チャーターバスは航空乗客専用なので飛行機の搭乗券半券を提示しないと乗せてくれない。そのことを案内所のおばさんに伝えると、案内所のおばさんは、チャーターバスの運転手に、私が乗せてもらえるよう交渉してくれた。
おばさんは「この人は遠く日本から来た人で、あなたたちの飛行機を見に来てるのよ」といった感じで交渉してくれたが、けっきょくルール通りで、私はそのバスに乗車できなかった。しかし、交渉してくれたおばさんの顔は今も忘れておらず、ブラジル旅行の大きな思い出になったのである。
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