日頃の足にも旅行にも路線バスは役立つ移動手段ではあるが、乗りこなすには相応の慣れと予備知識が必要。日本でもそうなのだから、ことに海外となると上がるハードルの高さも半端じゃない!?
文・写真:橋爪智之
構成:中山修一
(写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBをご覧ください)
■古代遺跡が残るイタリアの街
イタリア北部ヴェネト州の町、ヴェローナ。古代ローマ時代に建造されたアレーナ(闘技場)が中心に建つ同市は、周辺地域を含めると人口約26万人の中規模都市で、東西方向と南北方向の鉄道路線が交差する交通の要衝でもある。
イタリア随一の商業都市ミラノと、人気の観光都市ヴェネツィアの中間に位置することから、移動途中に途中下車をして観光をする旅行客も多い。
そのヴェローナの玄関口となるのが、鉄道のヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ駅だが、駅は市街地から離れている。これには長い歴史を誇るイタリアならではの事情がある。
19世紀に鉄道が建設された当時、町のシンボルともなっている前述のアレーナなどの古代遺跡が紀元前から鎮座しており、すでに市街地中心部に鉄道施設を作る余地が残されていなかったわけだ。
■市街地へ行くならバスがイイ…のだけど
そこで、駅から町の中心までお世話になる乗り物といえば路線バスだ。離れているとは言っても、距離にして1.5キロといったところだから、歩いてもせいぜい20分くらい。
健脚な人であれば、普通に徒歩で町の中心まで行けるが、効率よく観光を済ませたいならバスを使った方が、早く町の中心部まで行くことができるし、荷物を持っているなら尚更だ。
イタリアの市内を走る一般的な路線バスでは、現金での乗車はできずチケットを買う必要がある。ところが実際に駅前のバスターミナルへ行ってみると、チケット売り場は長蛇の列だ。
■乗る前からひと苦労!?
窓口は1か所のみで、そこにスーツケースなど大きな荷物を抱えた人たちがずらりと並んでいる。ふと乗り場の方へ目をやると、自動券売機もあるではないか……ということで券売機に行ってみたら見事に故障している。どうりでこちらには並んでいないわけだ…。
別の場所にもう1台の券売機を発見。こちらは稼働中にもかかわらずそれほど並んでいないので、早く買えるかと思いきや、今度は使い方が分からない人が券売機の前でまごついている。ようやくチケットが買えたのは、到着してから20分近く経ってからのことであった。
とまあ、こんなことはイタリアでは日常茶飯事だが、もし小銭を持っているのであれば、駅構内や街角にある新聞屋や商店、バール(喫茶店)でも買うことができる。
一旦町中に出てしまうと、バスの券売機もチケット売り場もなく、バスの車内でチケットを買うこともできない状況と隣り合わせ。こういったお店を利用するしかバスに乗る方法がなくなる。
この商習慣を知らないと、営業運転のバスがちゃんと走っていても見送ることしかできないという、初訪問の旅行者にはなかなかハードルが高い公共交通機関でもある。
しかも、現地の商店の多くは英語が通じないうえ、クレジットカードも使えない。おまけに夜になると、チケットを売っている商店は何事もなかったかのように店じまいする。
イタリアでバスに乗ろうと思った時、慣れないうちは駅に着いたらクレジットカードが使える券売機もしくはチケット売り場で、あらかじめ往復分(もしくは利用予定の回数分)を買っておくのが安心だ。