バス停標識といえば、誰が見てもバス乗り場だと分かる“定型”があり、大抵はそのタイプが使われている。とはいえ中には、型にハマらないスタイルを貫く、なんとも自由なバス停だってあるようだ。
文・写真:中山修一
(変型バス停の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■変わった形のバス停標識(1):船の舵輪(?)
台形をしたコンクリの土台に背の高いポールを2本埋め込み、ポールとポールの間に、時刻表などの案内表示版を取り付けてあるところまでは普通のバス停標識と一緒。
ところが天辺の部分に目をやると、ちょっと他では見ない存在感を放つようになる。これは横浜市の桜木町駅を起点に、赤レンガ倉庫や山下公園などの観光ベイエリアを巡る路線バス「あかいくつ」向けにデザインされたバス停標識だ。
天辺のバス停名称を記した円盤に、放射状に広がる飾り棒が組み合わせてある。そのデザインが旧来より船舶の出入りが旺盛な港町ヨコハマのイメージとどことなく重なるせいか、やや抽象的ながらも、船の方向を変える舵輪のような形に見えるわけだ。
そう見えてしまった以上、本当に舵輪がモチーフなのかは深く追求しないことにしておこう……「あかいくつ」のバス停には一般的なタイプの標識も使われており、どこに舵輪風のバス停標識が置かれているか、バスに乗りつつ観察してみるのも一興だ。
■変わった形のバス停標識(2):もち米
台形のコンクリが土台になっているのは同じであるが、時刻表等の掲示板と、それを保持するフレームに特徴を持つバス停がコチラ。フレーム部分は楕円形で、天辺の片側だけ凹んでいる。
そういうシルエットから連想できる物といえば「米」だろう。確かに現地で初めて目にした時に「これコメか?」まではすぐ思い浮かんだ。
細かく言えば、コメはコメでも「もち米」をモチーフにしたものらしい。そんなバス停標識が置かれているのは北海道の名寄市内。市内を回るコミュニティバスのバス停がこの形をしている。
名寄市は、もち米の生産量のうち全国の1/10を占めると言われ、日本一の規模なのだそう。名寄市には観光マスコット「なよろう」君がいて、お餅が好きすぎて頭はもち米・体が鏡もちという、「もち米」推しのキャラ像になっている。
バス停標識の天辺にも「なよろう」君の頭が描かれており、フレームの凹んでいる箇所は、ちょうど頭の輪郭に合わせてある。ご当地の特産品をデザインに盛り込んだ、遊び心あふれるバス停だ。
■変わった形のバス停標識(3):サーフボード
1本の太いポールで支えるタイプのバス停標識のうち、バス停名称や時刻表を掲示するプレートの部分を、なんとサーフボード風にデザインしたものが四国にある。
このサーフボード風バス停標識は、道路と鉄のレール両方を走れる「DMV」で運転される阿佐海岸鉄道線と、同エリアを通る徳島バスの一部停留所に用いられている。
見たままサーフボードのようなシルエットを持ち、阿佐海岸鉄道用は淡いブルー、徳島バス用は薄紫色が主体。テールに相当する部分は前者がグリーン、後者はオレンジに塗り分けられている。
阿佐海岸鉄道の通る徳島県の南部は、外海に面しているのもあってマリンスポーツが盛んで、サーフスポットが何ヶ所もある。そういったご当地感の演出に、サーフボード風バス停が一役買っているように思える。
ちなみにDMVの鉄道モード区間のホームに取り付けられている駅名標も同じサーフボード型をしており、道路を走行する区間の標識は縦置きであるが、鉄道区間では横向き設置になっている。
全国に散らばるバス停の数々、他にどんな形の普通じゃないバス停標識が隠れているのか……発見していくのが楽しみだ。
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