全国に25,000以上あると言われるバス路線。その中でも、県境を跨いで走る高速バス以外の一般路線バスの数は極端に少ない。そんな県境越えバスの実態がどうなっているか、様子を見に行くシリーズの第14弾目である今回、注目するのは徳島バス「引田線」!!
文・写真:中山修一
(徳島バス引田線の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■徳島〜香川を繋ぐ二つの「引田線」
徳島バス引田線は、うずしおで有名な徳島県鳴門市と、お隣・香川県の東かがわ市 引田(ひけた)との間およそ25kmを結ぶ一般路線バスだ。
徳島県側の始発・終点はJR鳴門線の鳴門駅前で、対する香川県側はJR高徳線の引田駅前を経由して、1kmほど進んだ先の翼山温泉が始発・終点(朝の1便を除く)になっている。
引田駅近くのバス停には、高松から直通してくる大川バスの路線の始発・終点でもあり、大川バスのほうも「引田線」の路線名が付けられている。
大川バスと徳島バス、二つの引田線を乗り継げば、路線バスだけで高松〜鳴門間を無理なく移動できるところが大きな魅力だ。
乗り換えポイントである引田駅のバス停名は、大川バスが「引田」であるのに対して、徳島バスのほうは「引田駅前」。
とはいえ香川→徳島へ向かう場合、バス停名は異なるものの停留所が置かれている場所はほぼ同じ。徳島→香川方面では徳島バスの停留所のみ、70mほどオフセットしたJR引田駅前にある。
■果たしてキレイに繋がるの?
徳島バス引田線は上下1日12本ずつ、日中なら大体1〜1.5時間に1本のペースでバスが出ている。気になる大川バス引田線との接続具合はどうかと言えば、これが5分の時もあれば1時間以上開く時もあり、便によってまちまち。
現地へ様子を見に行った当日は、高松から大川バスで引田まで出て、徳島バスに乗り継いで鳴門へ抜けるのが日程の都合上ちょうど良かったので、そのルートを選んだ。
12:10に引田へ到着するバスに乗ってくると、次の徳島バス引田線が来るのは12:45。バス待ち35分といったところ。空いた時間は周辺を散策して潰した。引田バス停には自販機の置かれた待合所もあるので、併せて利用すると便利。
■引田線で県境を越えてみる
翼山温泉からやってきた徳島バス引田線は中型路線車・2016年式日野レインボーでの運転だった。始発の段階で既に5人ほどお客さんが乗っていた。車内に入ると窓のロールカーテンが殆ど降りていて、ローカル路線バス然とした風合いを感じる。
他の県境越え系路線バスと同様、徳島バスとしてはアウェー側に相当する香川県内の走行区間は短く、総距離で25kmあるうちの5.5kmほど。時間にすれば香川県内を走るのは10分ないくらいだ。
引田を出て少し進むと峠に差し掛かり、トンネルを抜け頂上を過ぎ、道が下り坂に変わったすぐ先に県境が引かれている。県境に最も近い停留所は徳島県側にあり、名称も「北灘県境」と地理的性質がよく出たネーミングだ。
■このバス、景色がオイシイぞ!?
鳴門の市街地に近づくまで、バスは国道11号線をメインルートに進んでいく。特筆すべきはこの国道が敷かれている場所で、海岸線にほぼピッタリ沿っているのがポイント。
そうなると自動的に車窓から見える景色は「海」になるワケで、降りたロールカーテンを巻き上げ、進行方向左側を流れる車窓に目をやれば、なかなかどうして良い感じのオーシャンビューが続く。
東海バス「A51系統」や、三重交通13系統「熊野新宮線」のような、海の近くを走る県境越え系バスは幾つかあれど、無心で景色を眺めていられるくらい、ジックリと海沿いをトレースするものは新鮮な気がする。実はこの引田線、隠れた名路線なのかも!?