使用頻度が少ないのに優先するのは……ある種の割り切りが重要
そしてミニバンの考え方として、すでに述べた、2列目席が特等席というパッケージングから、3列目席はラゲッジルーム拡大のための格納前提となる、具体的には子供や秘書、付き人、そしてペット専用席的な座席なのである。
だから見た目も、アームレストを含む装備も簡素であって当然ということだろう。豪華なキャプテンシートを格納することなど不可能だ。
また、開発におけるミニバン最大の敵(苦心すべき点)は重心、重量と言われている。仮に3列目席に豪華なシートを奢るとしたら、どんどんクルマは重くなり、めったに使われないであろう(日本の乗用車の平均乗車人数は1・5人)3列目席が走行面、乗り心地などで足を引っ張ることになってしまう。
そしてもちろん、車両価格もさらにUPしてしまうため、商品として成立しにくいことになる。まぁ、全席ファーストクラスの通常運行航空機がないのと同じことだろうか。
一転アルファードは3列目が一番快適!? 振動も座り心地も文句ナシのデキ
が、アルファードの、2列目キャプテンシートに対してショボく見える3列目席のかけ心地を侮ってはいけない。たしかにオットマンもなければアームレストも細いものがある程度なのだが、実はシート振動という点では、エグゼクティブラウンジシート、エグゼクティブパワーシートより上だったりするのだ。
具体的には、上級パワーシートは重く、重心が高く、加えてロングスライド機構を備えている。そのため、シート本体に振動吸収のためのダンパーが”こっそり”入っているため振動は抑えられているものの、蓋付のアームレストに関しては、路面によってブルブルとして微振動が発生しやすい。
かつて、仕事でアルファード(現行初期型)を運転し、東京~大阪間を、後部座席にスタッフ2名を乗せて走ったことがある。後部座席のスタッフは仕事熱心で、移動中もノートパソコンを開き、仕事をしていたのだが、気づくと2列目キャプテンシートに座っていたはずのスタッフとの会話が遠い・・・。
そう、いつの間にか2人とも、2列目席と比べフツーのシートになる3列目席に移動していたのだった。あとで理由を聞くと、やはり、2列目席だと微振動によって仕事がしにくかったとのこと(あくまでひじ掛けに肘を乗せた状態/最新モデルは改善されている)。3列目席はシート自体が軽く、重心も低く、”ロングな”スライド機構を持たないため、シート振動面では有利になるということだ。
【アルファード後席比較】3列目の座り心地は微振動の少なさで快適性◎
ここでアルファードの2/3列目席のシートサイズを紹介すると、グランエースにも採用されるアルファードのエグゼクティブパワーシートはシート座面長525mm、座面幅505mm、シートバック高645mm。対して全グレード共通の3列目席はシート座面長460mm、座面幅560mm×2、シートバック高600mm。それだけを見ると、座面長、シートバック高は比較にならないと思いがちだ。
見方を変えて、着座感、着座性、立ち上がり性にかかわる、フロアからシート前端までの高さ=ヒール段差では、エグゼクティブパワーシート350mm、3列目席330mmと大きく違わないことが分かる。
微振動のなさとそのおかげで、3列目席もなかなかかけ心地がよいと感じさせてくれる理由だ。アルファードともなれば、見た目はともかく、3列目席のかけ心地にも、格納性とのせめぎあいの中で意外なほどしっかりと造られていて、快適に座っていられるということもまた事実なのである。
実際、わが家の自称自動車評論犬!?であるラブラドールレトリーバーのマリアとジャックラッセルのララは、乗り心地が悪いクルマだと、ドライブに連れて行ってもいつまでも落ち着かず、起きているのだが、アルファードの3列目席に乗せると(大型犬はキャプテンシートに乗せられないため)、空調を含め快適なのか、途端に寝てしまうのだ……。
【画像ギャラリー】2列目までは超快適なのに…アルファードですら3列目がイマイチなワケ(15枚)画像ギャラリー
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